1. HOME
  2. ブログ
  3. 『GAFAM』崩壊のカウントダウンが始まった?~米国マーケットの終焉か~(IISIA研究員レポート Vol.74)

『GAFAM』崩壊のカウントダウンが始まった?~米国マーケットの終焉か~(IISIA研究員レポート Vol.74)

去る2019年に新型コロナウィルスの蔓延が報じられてから、各国勢の中央政府は異例の金融緩和を実施した。我が国においても10万円の給付金は記憶に新しいのではないだろうか。しかし、新型コロナウィルスの蔓延が加速させた金融緩和も転換期を迎えている。米国勢では連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを前倒しして、早ければ来る3月には利上げを開始する。そして、当初3回とされていた利上げも先月(1月)の消費者物価指数(CPI)の数字を受け、7回は実施されるのではないかとも米投資銀行のゴールドマン・サックス社は報じている(参考)。

(図表:上院委員会で証言するパウエルFRB議長)

(出典:Bloomberg

 少し時を遡ると、実はリーマン・ショック時のマーケット状況とトレンドがよく似ている。当時は、ITバブルの崩壊やイラク戦争の勃発などにより、コロナ禍と同じく異例の金融緩和からの急激な利上げへの転換が成され米国株全体の下落へとつながった(参考)。

 このことから今回の利上げも同じような展開が予想され、グロース株の代表格であり、ビック・テック企業として知られる「GAFAM(Google/Apple/Facebook/Amazon/Microsoft)」の下落が予想されている。そしてその兆しとも捉えられる指標が、先月(1月)最終週から立て続けに発表されたこれら企業の決算ではないだろうか。その内、旧Facebook(以下、メタ社と記す)においては業績が期待外れの結果となった。メタ社によると去る(2022年)2月2日に発表した2021年10~12月期決算は、売上高が前年同期比20パーセント増である一方、純利益が同8パーセント減の102億8500万ドルで10四半期ぶりの減益を受け、時間外取引で株価は一時、同日終値より23パーセント下落を見せた(参考)。

(図表:「2020年2月10日」を“100”として指数化した過去2年間の株価成長率推移)

(出典:「Yahoo! Finance」より筆者作成)

 上記の決算発表を受けて、各紙ではすでに「GAFAM」の“F”の先行きにつき悲観的に報じられている(参考)。果たしてこのまま利上げがメタ社の業績を押し下げるのか、今後の可能性につき幣研究所が会員制サーヴィス「原田武夫ゲマインシャフト」会員様限定で展開している定量分析「プレミアム・サーヴィス第3弾」(参考)を用いて検証したい。

同分析では、興味深いことにメタ社の株価が示す今後の「上昇期待確率(Poisson値)」が大きく下がるのは利上げ後ではなく、その先の来る6月頃になるとの兆しがみえている。むしろメタ社に関しては下落の調整が遅れている一方で、先にMicrosoftやGoogle(Alphabet)などのPoisson値が4月に入り下がる傾向が示されている。今後のメタ社が控えるイヴェントとしては、今後発表を控える人工知能(AI)を使った「メタヴァース」の新技術となるため、他のビック・テック企業と比してどう株価が推移するか、広告収入への依存脱却となるか試金石となるか注目ではなかろうか(参考)。

そして、上記「プレミアム・サーヴィス第3弾」の傾向から「GAFAM」の勃興と没落が交錯する局面に入ることが想定される中、これまで米国マーケットを始め世界のマーケットを牽引してきたことから、「GAFAM」の「ゲーム・チェンジ」が示唆するものは米国企業のみならず、世界中の国々の企業にとって大きな意味があり日本企業も例外ではない。

例えばFacebook CEOのザッカーバーグが「メタヴァース」企業を目指すと公言したことで、一気に言葉の知名度を高めた「メタヴァース」業界だが、我が国ではソニーグループや任天堂がマーケットにおけるシェア拡大を目指している。マイクロソフト社はすでに今後のメタヴァース・マーケットの拡大を見据えて大型M&Aを進めていることからメタヴァース・マーケットが「GAFAM」の勃興と没落を示す1つの主戦場となることが予見される。

(図表:近年の大型M&A実例)

(出典:日本経済新聞

(図表:「2020年2月10日」を“100”として指数化した過去2年間の株価成長率推移)

(出典:「Yahoo! Finance」より筆者作成)

 一方、ソニーグループは先月(1月)発表した約4100億円に及ぶゲーム開発会社買収も「メタヴァース」を視野に入れた戦略として注目を集めており、グラフで示している通り株価成長率もライバルとなるマイクロソフトやメタ社と比して上昇を見せている(参考)。また、我が国の代表的なグローバル・プレーヤーとしては任天堂もメタヴァース(仮想空間)を舞台とした新たな競争に突入する(参考)。とりわけ、ソニーグループに関しては、「プレミアム・サーヴィス第3弾」の株価上昇期待確率がこの先4か月において上昇を見せていることから、我が国企業の動向にも注目である。

「GAFAM」にとって今後のカギは大きく3つあり、「成長の壁」・「規制の壁」・「期待の壁」であるとされている(参考)。すなわち、規模が大きい分だけ成長率の鈍化が進む「成長の壁」と、米連邦取引委員会(FTC)による買収への「規制の壁」、市場が織り込む高い期待を結果で裏づける必要がある「期待の壁」である。今回はメタヴァース・マーケットに絞って論じたが、「GAFAM」の先行きに影を落とす今だからこそ、「GAFAM」の利上げに対する感受性(ヴォラティリティー)と次の「GAFAM」となり得る企業はどこになるのか、日米双方のマーケットの今後に注視すべき展開である。

グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー
岩崎 州吾 記す

前回のコラム:原油先物価格の高騰は全て“演出”?~電気代高騰はどこまで続くのか~ (IISIA研究員レポート Vol.73)