汝、「伊勢の赤き旗」を掲げよ。(原田武夫の”Future Predicts.” Vol. 84)
「本当の伊勢では本気で商売する時に必ず”赤い旗”を掲げるならわしがある」と聞いた。初耳だったが、その理由を聞いて納得した。沖合にいる船から見て、陸地で赤い旗が掲げられると認識がしやすかったからだという。そしてそのことからかの「平家」の象徴は”赤い旗”であり、対する「源氏」は”白い旗”であるとも聞いた。幕末、来日したかのペリー提督はこのことを実は知っていて、幕府に対してしきりに「白旗」を掲げることを勧めたのだという。つまり「お前たちは本当のところ、この国(註:我が国)を”統べるべき者”ではないだろう」というわけなのだ。伊勢といえば言わずと知れた伊勢神道の本拠地であり、我が国の”本当の権力の中心”の始祖の地とされるところである。「平家」とはその末裔であり、結果として”赤い旗”を辿って「スメラギ」へとこの物語は辿り着くことになる。そして、この余りにも重大なならわしを筆者に教えて下さった伊勢のリーダーシップである御仁はこうつぶやかれた。
「2033年には伊勢神宮の遷宮が執り行われる。そこから”インフレ”が”デフレ”へとなるわけだから、しっかりと用意しないと」
今、我が国は引き続き「大混乱」の中にある。確かに、株価はというと異様なほど(そう「異様なほど」に、だ)高騰しており、他方で高市早苗政権はというと「支持率が下がった」とはいえ、新聞各社共に(嘘を書いていないという前提に立つと)60%台後半の支持率をマークしている。それもそのはず、各国が手を焼いている米国勢のトランプ大統領との関係性の維持に(少なくとも表向きは)成功しているかの様に見えるからだ。確かに街角景気はというと悪いの一言に尽きる。巷の飲食店がそのバロメーターになるわけだが、どの店も「かつての大繁盛が嘘の様なくらい」に回転率の悪さに苦しんでいる。都心の一等地にある有名店であっても「21:30でラスト・オーダー」などというのはもはや当たり前であり、21時を過ぎるとマネジャーたちが従業員管理でそわそわし始めるのが分かる。ただ、そうした流れをよそに、いわゆる「富裕層」(最近は純金融資産を3億円以上持ち合わせている方々を言うことにしたようだ)は年齢を問わず、昼間からシャンパンを開け、高級ワインを空けてはタワマン高層階でホームパーティに明け暮れているのだとも聞く。何ともいびつな世界ではあるが、これが我が国の今この瞬間のスナップショットだ。「現実」なのである。
翻って考えるに我が国の「経済的繁栄」はどこから来ているのかというと、戦中の「総動員体制」を引き継いだ「親方日の丸」の経済優先の政治体制を成功裡に構築したことから来ている。いわゆる「開発主義国家体制(developmental state)」である。80年代に至り、遂には”Japan as Number One”と称されるに至った我が国の経済・社会的な発展を主に米国勢の研究者たちは盛んにその研究テーマとして取り上げた。そこでついに割り出したのが「MITI」あるいは「MOF」、すなわち我が国の経済官庁により経済指導と、それに整然と付き従い行動する、「護送船団」としての産業界の動きなのであった。そこでは「親方日の丸=政府(その内実は東京大学法学部卒のエリート官僚たち)」に従う限りは補助金にありつけ、どんなに景気が悪くても延命することを約束されたのである。あたかも「軍隊」であるかの様に黙々と国内外のマーケットへと”進軍”するその姿を見て、海外勢は米国勢を筆頭に我が国のことをこう揶揄した:“Economic animal”.
話は変わって件の伊勢の御仁からはこんな話を聞いた。伊勢の隣にある四日市には我が国を代表するメーカーが居並んできたことで知られている。しかしそれらはいずれも現在、「大変なこと」になっているのだという。つまりモノ作りに励んでも全くもって売れず、続々と現地採用の工員たちを解雇しており、結果として現地のハローワークはというと、時に駐車場が満杯となり、隣の「名古屋」から職員の応援を依頼するくらいの”繁盛ぶり”なのだという。
「それがね、原田さん。不思議なのがそういったあの工場の親玉の企業と言えば、今、どういうわけか史上空前の株高だっていうのですよ。おかしいですよね、全くもっておかしいことだ」
そう、何かがおかしいのである。しかしそんな現場における「違和感」を後目に、「自動車が中国では売れず、米国からも締め出されるというのであれば、次に産業波及効果の強い”防衛産業”で我が国は食っていくべきだ」と”親方日の丸”は今、舵を切り始めている。国内では折しも景気が悪い(前述のとおりだ)。そうした現状を就職活動を通じて肌に感じた学生たちは今、東京において中央省庁に就職を続々と希望しているのだという。しかも女性の割合が日増しに高まっているというのだから隔世の感を禁じ得ない。そんな中とりわけ「食い扶持にあぶれないだろう」と人気を集めているのが防衛省である様に見受けられる。事実、某経済紙では連日の様に「イケメン」二世議員である防衛大臣Kの顔を見ないことはなく、さらにその口からは連日の様に「ドローンこそ、我が国の未来」といった言葉吐かれていることが効かれる。「(軍需産業あらため)防衛産業こそ、我が国経済復活の起爆剤」と言いたいのだろう、Kの鼻息は(その見栄えもあって)閣内の誰よりも荒い様に感じるのは筆者だけだろうか。
だがしかし、そうしたKを筆頭とした我が国「政体」勢力のやること・為すこと・語ることはいずれも、結局のところ「これまでうまくやってこれたはずのやり方」としての「開発主義国家」の手法を、形を変えて使おうとしているに過ぎないのである。つまり”親方日の丸”が訓導する中、それに産業界が粛々と従うことで牧童とそれに従う羊よろしく、やがては餌場にありつける、という「経路依存性(path depenency)」がそこでは見え隠れしている。かつての「通産省(MITI)」に代わって今度は「防衛省(MOD)」である。そしてそれに対して「政治主導」の中、予算をつけることで増税も合わせ技で目論見、もってプライマリーバランスの均衡を実現しようと必死に努力を続ける「財務省(MOF)」の姿が見える。他方、メディアといえば「国家情報局」の影に今後はおびえながら報道をすることとなり、かつての「大本営発表」以上に”親方日の丸”が吐いた言葉しかリフレインしない様になる。「我らにはまたソーシャル・メディアがあるではないか」というかもしれないが、それは甘い。「青少年保護」を理由にいつ何時シャットダウン(ban)されるか分からないというのが先進国における現実になる中、もはや体制にとっては「完封ゲーム」なのであって、軍靴が鳴り響くことに対して嘆息をそっと独り言の様にネット上で記すことすら、今後は許されなくなるはず、なのである。
しかし、である。「歴史の皮肉(Ironie der Geschihte)」という言葉がある。かつて「東洋の奇跡」とまで言われた我が国の高度経済成長を実現した時のあのやり方=「開発主義国家(developmental state)」には唯一、条件があるのだ。それは”親方日の丸”がそのコア中のコアとして機能するためには、それを支えるだけの潤沢な資金が無ければならないということである。「カネならば要するに赤字国債を湯水の様に発行すれば良い」と御用エコノミストの面々はうそぶくに違いない、そう言われると。だが、今回の企てが明らかに「あの時と同じこと」を繰り返すためだと分かった時、そして”親方日の丸”によるこの企てから外資勢が一切裨益出来ないかもしれないと気付いた時、彼等は一斉に我が国から反目し、「市場の声」を使って封じ込めにかかって来ることは間違いないのである。そう、「赤字国債でも国家財政が大丈夫」な時の理由はただ一つある。それは「市場がそれに同意する限りにおいて」ということである。そうではなくなった際、我が国において金利が急騰し、ある時からさしもの「富裕層」も気づくのである。「これはまずい、本当にまずい」、と。その後に待ち受けているのは・・・デフォルト(国家債務不履行)に他ならない。
1973年という「高度経済成長」の”あの時”と、今=2026年の”今”とで決定的に違うのは何か。それは我が国国民統合の「象徴」である御方が私たち国民に対して述べられる”お言葉”である。いや、後者については「これから語られる御言葉」というべきなのかもしれない。したがって筆者は今だからこそ強く想うのである。
「汝、”伊勢の赤き旗”を掲げよ」と。
「政体」勢力がこのことに思い当たることを切に願っている。なぜならば、結局のところ、全てはその”御心(みこころ)”次第なのであるから。
2026年5月31日 東京の寓居にて
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 ファウンダー/代表取締役CEO/グローバルAIストラテジスト
原田 武夫記す