あなたは、知らない。(原田武夫の”Future Predicts.” Vol. 78)
情報が山の様に積り重なり、洪水の様に日々流れていく現代。そうした中であたかも「全て」が把握できる様に見えるが実はそんなことはない、というのが現実でもあったりする。丸山眞男ではないが、今この瞬間はあえて「後衛の位置」から我が国を、そして世界を見つめている筆者の立場からすると、実はそんなことがここに来てまざまざと明らかであったりする。
この4月にめでたく「学習院大学」の非常勤講師を拝命した。今年(2026年)で4年目になり、最初は学習院「女子」大学からご依頼頂いたわけであるが、その続きということになる。何でも改組の都合上、その段階で契約関係にあった教員は引き続き教員であり続けないと何かと関係各位にとっては不都合らしい。筆者はといえば、本来の生業ではないものの、社会改良のためには「次世代(next Gen)」に”情報リテラシー(information literacy)”をじっくりと教えていくことが我が国、そしてグローバル社会において不可欠と考えているので、喜んでお引き受けしている。そして再び今年(2026年)も来週から講義日程が始まる。
筆者が拝命しているのは「外交官」そして「国際儀礼」という2つの科目だ。考えてみると実に不可思議な科目設定なのだが、いずれも筆者自身の実務経験から語れない内容ではないので、御引き受けすることにした経緯がある。前者は「外交官」であって「外交」あるいは「国際政治」ではない。聞くところによると「日米同盟」、あるいは「国際協力」についてゼミを受け持つ高名な正教授の皆さんがいらっしゃる大学であるので(旧女子大時代も)、そもそも筆者の出番はないのであるが、しかしあえて宜しくと御願いを頂いたのでお引き受けすることにした。何でも「とある高いところからの指示」であったらしい(詳らかにはしないが)。そしてもう一つの「国際儀礼」とは、international protocolを指す。これも実は女性教員で別途、ビジネス・マナーや「お作法」をきっちりと女子学生たちに教え込む立派な先生方がいらっしゃるので(しばしば講師室で御見かけするが、その度にこちらの方が居住まいを正さなければと思うくらい、きっちりした先生方である)それであれば出番はおよそないのであるが、「国際儀礼」となるとこれはもう外交官の実務の世界であるのでお引き受けすることとした。
なぜこんなことを「イラン戦争」で騒然とする中、やおら書き出しているのかというと、”そうした視点”で見ると、世情流されている大量の「情報の洪水」も選別することが出来ると感じているからだ。外交当局はといえば、総理大臣あるいは外務大臣以下の各位が現状について日々、プレス対応を行い、それをマスメディアたちが一斉に報じている。そしてこれに対して一方では学識経験者(有名大学の教授の皆さん。中には「修士号」しか筆者同様持っていないが、ほぼ連日テレビ出演されている”猛者”教授もいらっしゃる。その点はあえて目をつぶっておこう。エンタメ、と見れば良いのであるから)、他方でマーケット・アナリストたちが入れ代わり立ち代わり出て来ては、あーでもない、こーでもないと語り続けている。さらにYouTubeではOB大使のお歴々が「俺にも話させろ」とばかりに語り続けており、さらには我が国屈指の週刊誌までもがここに来て「ONLINE」と自称し、好評を博しているというのだから、事態は百家争鳴に他ならないのである。そうした中で海の向こう側ではトランプ米大統領が連日の様に「吠え続け」、それに世界中が動揺し、日々「退避行動」を続けている。それが毎日、そう、私たちの毎日なのである。
「外交官」「国際儀礼」を学生たちに講じる中で常々思い、口にしてきたことが一つある。それは「世界は表層において揺れ動いているが、その内奥においては固められたルールがあり、それをあえて破るというのであれば地殻変動であり、それこそ大事になる」ということだ。国際儀礼(international protocol)が正にそうであり、これは我が国では古来、「有職故実」と言い、宮内庁では現在、式部職が担当している。「不文律」がその実態であり、その世界に入らない限り、本当の意味で体得することは出来ない。しかし、その世界、に入ると実に整然と、それどおりに世界中の人々が上から下まで全員、そのルールに則って動いている。当然、少しそこからずれることも許されてはいるが、それは「あえて」なのであって、そこでは「原点に戻ること」が前提にもされている。したがって最終的には「その世界」でなければ知り得ないことが数々あるのであって、いくら札束を積まれてもそのことは全く変わらないのだ。
「グローバル金融資本主義の時代にもはやそんなことは全くもって時代遅れなのでは?」
そう、御感じになられる読者も多数いらっしゃるのではないかと思う。確かにRoyal Familiesのお歴々が着飾った衣装で登場し、「晩餐会」等とされているのを見ると少々違和感を覚えないこともない。しかし「そうであること」には人類の叡智が詰まっているのであって、それをあえて破るということはこれまでの人類史を否定することにもつながり、それこそ「大事(おおごと)」なのである。個別の外交案件について不協和音が生じるよりも遥かに重大事となることは必定なのであって、それは何人も、そう「なんびと」も成し得ないことなのである。
その意味で筆者は今、来る27日から実施されるチャールズ英国王による米国への国賓訪問に大いに注目している(そのことは昨日(10日)にリリースした音声レポートにおいても詳述しているとおりだ。今週号も幸い、大変売れているようだ)。なぜならば「政体」のレヴェルでは米英勢の狭間で不協和音は広がるばかりであり、ましてや米国勢は北大西洋条約機構(NATO)から脱退するとまで言い出しているからである。それがこの「国際儀礼」のレヴェルにまで影響の及ぶ事態だとすればそれこそ「一大事」になる。そしてそのことは、我が国の総理大臣が病身を押して対岸まで出かけ、5分以上も遅刻しつつ、出会い頭に「抱きつき攻撃」をしてまでしてもランチすら提供されなかったという状況の中、果たして今回、トランプ米大統領が英国王をどの様に接遇するのかで如実に示されることになるというわけなのである。
そう、このレヴェルの世界を「あなたは知らない」。知らない方が良いこと、というのも世の中にはたくさんある。もう一つ知らなくて良いこと、といえば今朝早くに「光の紳士集団」からinvitationが届いていた。さて、どうするか。しばしこの後衛の位置からしばし沈思しながら前に進みたいと思う。いよいよ、桜の園(桜は散ってしまったが!)での新学期が始まる。
2026年4月11日 東京の寓居にて
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 ファウンダー/代表取締役CEO/グローバルAIストラテジスト
原田 武夫記す
(*弊研究所では引き続き、こうした「次の次」の時代を共に創造するメンバーを募集しています。こちらとこちらの記事をご覧頂き、是非ご関心のある方は「Pax Japonicaに対するご自身の想い」を400~600字以内でまとめた上でメール(recruit●haradatakeo.com(●は@です))までご連絡下さい。皆様のご応募をお待ちしております。)