終身雇用から個人が主体的にキャリアを構築する時代(「IISIA採用人事ブログ」Vol. 19)
個人のキャリア形成について様々な課題がある中、終身雇用の概念は薄れ個人が主体的にキャリアを築く時代が到来しています。こうした変化の中、企業にとって採用・定着を成功させるカギとなっているのが、「キャリア自律支援」です。リクルートが実施した大規模調査によれば、20〜30代の若手社員が離職する背景には、「キャリア形成への不安」が色濃く影響していることがわかりました。若者たちは、自らの成長に手応えを感じられない職場に長くとどまることはありません。逆に、主体的にキャリアを描ける環境には強く惹かれる傾向があるのです。
調査では、20〜30代の離職経験者の約55%が、「この職場では充分なキャリア構築ができないと感じた」ことを退職理由に挙げています。また、育成方針を明確に開示している企業ほど、求職者の選考参加意欲が高まるという結果も出ています。このことは、採用段階からキャリア支援の姿勢を示すことが、優秀な若手を惹きつけるために重要であることを示唆しています。
しかし、単に「自律してください」と個人に責任を押し付けるだけでは、キャリア自律は実現しません。企業側からの積極的な「共律支援」が求められています。たとえば、職場の心理的安全性を高めること(安全道路)、チャレンジを阻害する要因を取り除くこと(後方支援)、仕事の意味付けを支援すること(貢献実感)、成長を実感できる目標設定を支援すること(前進駆動)、未来のキャリアに繋がる視点を持たせること(未来展望)──こうした5つのポイントが、キャリア自律意識を高めるカギだと指摘されています。
また、先進企業の事例からも重要な示唆が得られます。アルティウスリンク株式会社では、障がい者雇用部門において「わたしのトリセツ」という自己理解シートを活用し、メンバー同士が支え合う文化を醸成。チューター制度を導入することで、主体的な成長支援に成功しています。株式会社丸井グループでは、キャリアの自己申告制度に加え、異動実現率の公表やキャリアデザインフォーラムの開催を通じて、個人のキャリア形成を後押し。社員の職種変更率は86%、異動後の成長実感も86%に達しています。
これらの取り組みに共通するのは、「押し付けではなく、本人の納得感と理解を醸成する」という姿勢です。キャリアについての対話を重ね、信頼関係を築きながら、個人が自ら成長への一歩を踏み出せるよう支援すること。これこそが、これからの時代のキャリア支援のあり方ではないでしょうか。
IISIAではプロジェクトへの参画やジョブローテーションを通じて企業と個人が双方向で対話を重ね、信頼関係の中で未来を切り拓いていくプロセスを進めています。所員にとって、「ここなら自分の未来を描ける」と思える職場をつくるために──私たちも、引き続き真摯な取り組みを続けてまいります。
2025年5月1日
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 代表取締役COO
長野 修拝
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弊研究所は企業成長という観点から「どういった段階に立っているのか」そして「求めている人財はどういった方々なのか」について「IISIA採用人事ブログ」Vol. 1 にて掲載いたしております。是非ご覧ください。
我が研究所が今、求めている人財とは。(「IISIA採用人事ブログ」Vol. 1) – IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 – haradatakeo.com
【過去のブログはこちら】
・制度が届かない現場を変える──人事と現場の温度差を超えて(「IISIA採用人事ブログ」Vol. 18)
・IISIAが考える「インターンシップ」(「IISIA採用人事ブログ」Vol. 17)
・『会社はあなたを育ててくれない』(「IISIA採用人事ブログ」Vol. 16)