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我、何故に南海路に行きしか。愛しき時への追憶が語るもの(原田武夫の”Future Predicts”. Vol. 6)

このコラムを執筆し始める直前のつい先ほど、5日ほど費やした瀬戸内と南海路の旅を終えて東京に戻ってきた。かねてよりこれらの地域へと引き寄せられる自分自身を感じていたわけだが、まとめてその時がやって来た感じがする。あくまでも直感でしか語り得ないものではあるが、それでも現地にいくと中高年の方々を中心に多くの皆様がやはり同じ様に訪れているのを垣間見ることが出来た。何かが私たちをこの地域へと引き寄せているのだろうとあらためて強く感じた。

水曜日の夕刻。慌ただしく羽田から飛び立ち、広島空港に降り立つ。そのまままずは広島の市街地へと向かい、その夜の宿舎に落ち着き次第、まずは一人で腹ごしらえをする。馴染の店は確かにそこにあったが、店舗の名前とオーナーが変わっていたようだ。それでも味は全く同じであり、少しだけ安心した。そして翌日、東広島へ。聞くと30年ほど前に「広島大学」の大部分がこの地域へと移転したとのこと。「大学しかない町」というのは東日本ではつくばがそうであるが、同じくかつては「文理科大学」であったこの大学は山を切り開かれたその地にあった。この大学では客員教員として命を受け、「スポーツ経営学」のタイトルでアントレプレナーシップを教えている。2か月間の集中講義であり、受ける方の学生諸君も実に大変であろうが、思いの他、しっかりとついてきてくれた。確かに「身体感覚」で語ると共鳴する部分の多い体育会系の学生たちの方が、ありきたりな頭でっかちの議論を聞く機会の多い東京の学生よりも、自然と筆者の語ることを吸収する能力が高いのかもしれない。2コマ3時間の講義をアッと言う前に終えて、今度はそのまま岡山経由で高知へと向かった。

目指すは四万十市である。弊研究所は2年ほど前より足摺岬の手前にあるこの市で見つかった「七星剣」の年代特定事業に対し、ふるさと納税のスキームを用いた寄付を行ってきている。七星剣は我が国において極めて希少なものであり、それは古代において「統べる者」の象徴であった経緯がある。よってこの四万十市の剣についてもその年代特定如何によっては、我が国の本当の”権力の中心”の歴史そのものを揺さぶる発見になるべきものなのだ。市職員の皆様からの説明を受け、我が国の碩学たちを集めた研究チームが着実に作業を進められていることを知った。早ければ今年(2024年)11月になるとその最初の成果が公表される可能性が出てきている。現地は久方ぶりの快晴であり、「四万十ブルー」を満喫することが出来た。

「折角だから、いつもの様に足摺岬ではなく、大月の柏島に行ってみようか」

同行してくれた下僚をそう促して、中村から80分ほど宿毛を経由したルートを通りながら柏島へと向かった。かなりの山道を切り開いたトンネルを複数くぐると、ようやくエメラルド・ブルーの景色が私たちを出迎えてくれた。景観に圧倒される、とは正にこのことであろうか。私も、同行してくれた下僚も共にその美しさにしばし絶句した。噂には聞いていたが、余りにも海は澄み、そうでありながら人々が殺到しているということが全くないのである。かといって人気(ひとけ)が無いわけではない。どういうわけか二人組で男女で語り合いながらゆっくりと散策し、海を眺めている、様々な世代の方々がいた。そしてそうした皆さんの姿を見ながら、そしてまた同様に私たちを出迎えてくれたイルカのつがいを見ながら、私はふと、思ったのである。

「国破れて、山河あり」

ついに我が国の基幹産業の中でも筆頭格である自動車産業において「検査不正」が組織的に行われていたことが明らかとなった。1945年8月15日に「敗戦」となった瞬間から、昭和の大帝とその側近たちが死に物狂いで企画立案し、粛々と執行することで築き上げてきた「経済大国ニッポン」が音を立てて崩れ始めている。グローバル社会は実に冷ややかであり、我が国が「アベノミクス」の号砲として始めた「財政ファイナンス」としての円安路線を逆手にとって、「日本売り」を一斉に続けている。ある分析によれば、この10年で我が国の物価は諸国勢から見ると実に半分にまで下落してしまっているのだという。そうした中で我が国政府はというと国民に対して均しく「夢」を思い描かせることが出来ず、立ち往生している。そしてとどのつまり、10兆円もの国費を投入して、これまたいつものとおり米西海岸のスタートアップ・スパルタ塾に対して丸投げしながら、我が国における「スタートアップ元年」を喧伝してまわっているのだ。だが、考えても見て頂きたい。あのトヨタ自動車ですら「検査不正」でコスト削減を実現していたというのに、そうした絶望すべき状況の中にあって「未来に対して期待を抱け」等といたいけな若者たちに大の大人たちは本当にけしかけることが許されるのであろうか。現に東京など一部の大都市では出生率が0.99にまで落ち込んだという。2人で世帯を持ったとしても、子供はもはや1人「未満」になってしまっているのである。

モノづくりでこうした悲劇的な状況で生じる山の様な損失(ロス)を贖うため、我が国当局はというと、今度は「観光立国ニッポン」を振りかざすようになって久しい。確かに「大特価」となった我が国は、かつて先進国でありながら同じく「激安国家」となったレンテンマルクの国・ヴァイマール共和制当時のドイツと同じく、外国人たちにとって魅力の地でしかない。その結果、あらゆる交通機関が主要観光地で満杯となってしまい、地域住民による安寧な生活すら脅かされる様になっている始末だ。しかも今この瞬間は中国大陸からの客人たちというと、比較的富裕な「新華僑」と呼ばれる者たちしかいないのであって、つい数年前のインバウンド早かかりしころとは未だ異なっているのである。仮に何等かの理由で後者まで押し寄せるとなれば我が国は一体どうなってしまうのか。有名校であっても教育費が劇的に安いと彼らならば考える我が国へと続々と中国人子弟とその親たちが押し寄せている。その結果、「何かがおかしくなっている」と考える同胞たちが着実に増え始めているように感じるのは筆者だけだろうか。

弊研究所が様々なところで最新の見解として述べているとおり、グローバル・リーダーシップらが考え、地球全体の指導原理としている「ミッション(mission)」が明らかに変わり始めているのであって、その担い手となる者たちへは人知れず資金分配が着実に進められているのが現状だ。この点について直接体験を踏まえて申し述べるならば、去る3月の段階で各人への「割り当て」 についての所有権が確認され、今月(6月)にいよいよその最初のトランシュ(tranche)に関する移送が実行に移されることとなる。最終的にはまずもって来年(2025年)2月から3月頃にかけて第1期(stream 1)のトランシュ(tranche)全体が我が国への移送を終えることとなる中、「新たな救世」のためのストラクチャーが稼働し始める目算だ。我が国のみならず、グローバル社会全体において今、全てが崩落し、崩壊している様に見えるのはそのためなのである。無論、一つ一つの作業は慎重に行われなければならず、またグローバル・リーダーシップから「次の時代における担い手」として選ばれていたとしても、何等かの理由で落伍することが全く無いわけではないのである。だが同時に、一たびこの流れが現象へと潜象より導き出されることとなれば、「ミッション(mission)」の転換もまたいよいよ現実となり、次のフェーズへと我が国、グローバル社会、そして人類全体が進み始めることになる。

「国破れて、山河あり」

逆説的ではあるが、我が国はいよいよ「落ちるところ」まで落ちなければならない。政治、経済、社会、文化などありとあらゆる側面でそれは生じなければならず、その結果、二つのsecurity=「国家安全保障(national security)」と「社会保障(social security)」が音を立てて崩れることとなる。もはや絶対絶命となる中において、その瞬間を見定めたかの様に天変地異が生じ、もはや全員がバラバラと言う在り方ではもはや我が国はおろか、世界全体が救われないことが誰の目にも明らかとなる。

そうした「どん底」から我が国を、そしてグローバル社会全体を救い出すことが出来るのは、これまで文明史が明らかにしてきたとおり、イノヴェーションなのであり、先端科学技術の社会実装による刷新でしかないのである。そしてそこで我が国発で打ち出されるべき先端科学技術は地球全体に対するブレイクスルーであるのと同時に、人類全体に対して希望と未来を与える(giving all the people hope and future)ものでなければならないのである。もはや既存の政策、金融・産業政策、そして社会政策では現在の閉塞した状況を打破することは全く不可能だ。弊研究所はこうした技術革新に向けた研究開発を全面的にサポートしつつ、他方ではそうした先端科学技術上の「福音」がグローバル・リーダーシップ全体へと聞こえる様、国連の場での発言権を確保する作業を大車輪で進めていく。25日17時(日本時間)に国連大学マカオ研究所と共同で弊研究所が実施する「生成AIと外交(Generative AI & Diplomacy)」に関する国際ウェビナーは正にキックオフなのであって、今後まずは2年間にわたりこうした発言の場を確かなものとしつつ、声高にこの方向での成果を語ることが出来る様、粉骨砕身していく。

されど、こうした私たち日本人、そして人類全体の営みなど、あのエメラルド・ブルーの柏島で見た美しい自然(じねん)からすれば大したことではないのかもしれない。その意味での己の卑小さを常々思い知りながら、そしてまた南海路で見かけた多くの皆様のそこはかとない幸せそうな微笑に対して心からの追憶を抱きつつ、さらに前へ進んで行きたいと思う。なぜならば、私たちは「そうでしかありえない」のであるから。

2024年6月9日 東京・丸の内にて

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 ファウンダー/代表取締役CEO/グローバルAIストラテジスト

原田 武夫記す

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*弊研究所代表・原田武夫書き下ろしによる「原田武夫の”Future Predicts”.」。いかがでしたでしょうか?この話の「続き」を知りたい方、とにかく”もっと知りたい”と思われる皆様のために、「2024年夏・IISIAセミナー」を来る7月20日(土)に東京・有楽町の国際フォーラムにて開催いたします。第2部はこれまで弊研究所のセミナーにお出で下さったことの無い方々を対象とした無料セミナーです。詳細とお申込みは今すぐコチラよりどうぞ(クリックすると該当サイトにジャンプします)。