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再考「騙すアメリカ 騙される日本」。円高ドル安転換で全てが奪われる前に。(原田武夫の‟Future Predicts”. Vol. 37)

赤沢亮正経済再生担当大臣による日米「関税」”肩透かし”会談が終わった。「私の様な格下の者を歓待して下さるとは、トランプ米大統領のお人柄が示されているわけで・・・」といった素っ頓狂な趣旨の発言をした同大臣は笑止以外の何物でもなかったわけであるが、マーケットでは今、こうした厚遇をトランプがとりあえず今回はした背景において、我が国の側から「中国が仮に今後、米国債を大量に売るといった動きに出た場合、それを我が国が肩代わりして購入する」旨の極秘提案をしたのではないかと囁かれ始めている。これが真実である場合、米国の側からすれば、「日本は脅せばカネを支払う便利なATMである」という認識をさらに深めたことになるであろう。「戦わずして勝つのが最善の兵法」とかつてより言われているわけだが、前回の石破トランプ”肩透かし”会談に続けて、今回の協議もまた、これには全く当てはまらないと筆者は考えている。なぜならば、我が国の側は米国がしてくる恐喝をいちいち真に受け、それに対して虎の子を次々に差し出してしまっているからである。すなわち「戦わずして勝」っているのではなく、「戦う素振りを見せられるとすぐさま自らの血肉を切りとって渡し、降参してしまっている」に過ぎないのである。何とも情けない話だ。

しかも本日(20日)付「日本経済新聞」の1面記事には実に驚いた。「米国側からの要求を好機として、我が国は必要な改革を進めるべきだ」などと東京大学教授の御仁が堂々とそこで論じているではないか。「強盗が押し入って来て銃を突きつけられた。すると被害者であるはずの私に対して、かけつけた警察官が「あなたの方にこそ、強盗に襲われてしまうに足りる理由があったのだから、深く反省し、強盗に謝り、自分の身を正しなさい」と叱責してきた」ようなものだ、これは。朝から実に笑止であった。そして同時に、米国はあたかも先般実施したJFK文書の公開を契機に、我が国に対する米中央情報局(CIA)による工作を止めたかの様に見せかけているが、我が国の大手メディアに今こそ、こうした「知識人」を装う第五列を通じた世論操作活動を行なっているのだと強く感じた。つまり、先の大戦とは形を変えた戦争、つまり「日米経済戦争」があらためて火ぶたを切っているのである、しかも私たち日本人の目の前で、公然と。

筆者がなぜここまで断言できるのかというとそれには理由がある。2006年、すなわち今から19年前のことになるが、ちくま新書より『騙すアメリカ 騙される日本』を上梓し、米国による対日経済・金融要求の歴史について詳細に論じたことがあるからである。その後、どういうわけか我が国に対して面と向かってこうした要求を大統領レヴェルで米国はしなくなったかの様であった。しかし何のことはない、その間に着実に一方では「金融」「インターネット」という目の見えない世界のツールを使って我が国の「国富」を徹底的に収奪し始めるのと同時に、私たち日本勢のこの問題についての「無意識化」を狙って、徹底的に「悪いのは日本。アメリカこそ全てのお手本。」というメッセージをあらゆる手段を用いて刷り込み、成功を収めてきただけのことなのだ。ここに来て、なぜか持ち上げられている「大谷翔平選手」がその典型だということに、私たち日本人の中で一体何人が気づいているであろうか(GHQによる対日贖罪意識刷り込み計画(War Guilty Plan)と同時並行で進められた3S政策を思い出してもらいたい。)。

どういうわけか、米国は「温かく我が国を迎えてくれた」ことに今回の日米「関税」交渉第1ラウンドの結果、なってしまった。その結果、我が国が一方的に「宿題を解いていかなければならない生徒」の立場に置かれたのであって、今しばらくしてからその答えを提示しなければならない。正直、こうしたモルモットの様な立場に置かれた我が国の立ち位置振る舞いについて他の諸国の目は冷ややかであり、冷笑すら聞こえて来る様だ。しかも、石破茂総理大臣には我が国政府全体を統率するリーダーシップがないことを米側は見抜いており、それが証拠に経済産業省がどうしても出て来る「関税」の問題と、財務省が先行して語るべき「為替」の問題を協議の場としても切り離し、我が国がone voice(一つの声)で語り、反撃することを最初から封じ込めてしまった。来る24日(米東部時間)はその意味で、米国にとって第二次世界大戦以来の「勝利の日」になることであろう。なぜならばこの日をもって一方ではウクライナとの資源協定への調印が行われ、米国に多額の富が流れ込む仕組みが確定するからであり、他方で「円高ドル安」を旨とする日米為替合意が決まり、同様に莫大な量の「国富」の移転がいよいよ轟然と米国へと我が国より始まることになるからである。

「日本人は何でもため込んでしまって、国際社会のためにその富の一部で還元しようとしないからね。それが本当の問題だと日本人はほぼ誰も気づいていない。そのことこそ重大な問題なのに、永遠に気付こうとしない日本人は実に哀れな存在だ。」

そう、米国を歴史的に仕切ってきたAmerican Sephardic Eliteの係累からかつて聞いたことがある。米国を陰で脈々と仕切ってきたセファラディのリーダーシップからのこの言葉は筆者の胸の中で爾来、鈍い音を響かせ続けている。「高度経済成長」「戦後復興」は何も、私たち日本勢の努力と才能によって成し遂げられた奇跡ではなかったのだ。「皇(すめらぎ)」のリーダーシップの下、機を見て敏とばかりに巧みに動いた我らが先達たちが、まずは我が国の果たすべき役割の前提としての富を世界中から集めることを許されただけなのである。だがしかし、その後、我が国は「世界史を廻す」ためにため込んだ「国富」を用いることを全くしてこなかった。だからこそ、いわば懲罰的に「国富」の全面的な収奪にまずは「平成バブル崩壊」直後より見舞われ、そして今これから強烈な「円高ドル安転換」の中でそれこそ焼野原に近い状況になるまで、根こそぎ奪われることになってしまうのである。

かくなる上は何をすべきなのか・・・。真に「憂国の念」を覚えるのは筆者だけなのであろうか。そうではないこと、を心から願いつつ、思案と共に筆を置くことにしたい。

2025年4月20日 東京の寓居にて

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 代表取締役会長・CEO/ファウンダー/グローバルAIストラテジスト

原田 武夫記す