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日米同盟と「経路依存性」。(原田武夫の”Future Predicts.” Vol. 101)

かねてより今月(10月)は学務もあるので本邦に滞在することにしている。お蔭様でこの7年、さらには10年越しの様々な出来事を「整理整頓」出来ている。そして季節は早いもので着実に秋、しかも深まる秋を迎えつつある。かつて、北の大地に暮らす我が師に言われたとおりだ。「人の世はどう移ろおうとも、自然(じねん)は着実に移り変わっていく。そのことを忘れずに、そして、そのことをあくまでも基本に生きよ」と。

今月(10月)はそういうわけで本邦、とりわけ東京の地にあって「整理整頓」を進めているわけだが、来月(11月)はというと、これまたかねてより、今年(2026年)最後の、グローバル社会全体を文字通り「飛び回る」1か月にするつもりだ。現状、ワシントンDC、そして香港・マカオ、さらにはシンガポールと廻って来るつもりだ。いずれも国際会議に出席するためであるが、さらにいずれも、現状ではなく、「グローバル社会のこれから」を語り合う専門家、さらには経営リーダーたちの集まりに出るための出張だ。新しい息吹を感じるであろうし、さらには新しい出会いもあることであろう。今から胸躍っている。

そうした中で筆者が一つ、胸に止め、「研究テーマ」にしていることがある。それは「日米同盟こそ、経路依存性に陥っていないか」ということである。こう言われると、我が国の側においては政官財学の全てが今や「日米同盟が大前提」とすっかり刷り込まれているのであって、それ以外はあり得ないというのがメイン・ストリームの言論である中、それを逸脱する議論は全くもって見えないというが現実である以上、それを「経路依存(path dependant)」だと言わずして、何と言うか?と読者の皆さんには言われてしまいそうだ。そう、確かにそうなのであって、我が国は至るところでこの意味での「経路依存」以外、何ものでもない事態が横行しているのである。時の総理が米大統領のファースト・ネームを連呼し、「抱きつき」までしているのであるから、そこに疑う余地など全くないと言わざるを得ないであろう。

いや、筆者が関心を持っているのはこうしたある意味、「救いようのない状況」に陥り、自らの意思では事態を変えることが出来ない我が国の側ではないのである。「同盟(alliance)」には相手方が必要なのであって、米国においてはどうなのか、が筆者にとっては気になって仕方がないのである。来月(11月)、ワシントンDCに久方ぶりに向かうのはそのためなのであって(さもなければ全くもって個人的に関心の無い場所だ。なぜならば「世界史の淵源」はそこではなく、もっと別の、内奥にあるからだ)、アポ取りをしていると、「そのタイミングでは都合が悪いから」と、事前に現段階からvirtualなmeetingをしてくれる御仁たちが現れてきているので、謹んでお申し出を受けることとしている。

そして、気付いたのだ。「何のことはない、米国勢こそ、こと日米同盟については経路依存(path dependant)なのではないか」ということについて、である。

つまりこういうことである。―――2010年頃より突然、姿を現し、事ある毎に我が国に対して「支え」を提供して来る様になっているのが英国勢だ。実はこのことについては我が国を代表するメディア人たちから、筆者自身が外務省を自主退職する2005年頃より、しばしば耳にしていたことでもある。曰く、「米国勢はもはやモデルではない、むしろ我が国が目座すべきは英国勢だ」と。そして在る時から、英国勢は公然と(「相互防衛義務」を盛り込んだ二国間条約が無いにも拘らず=だからこそ、国際法でいう「同盟(alliance)」ではないにも拘わらず)「日英同盟(Japan-UK alliance)」と語り始めたのである。我が国の側はというと、戦前の「日英同盟」の記憶もこれあり、また英国勢の側が我が国をうまく持ち上げることから、「同盟」という言葉に率直に言うと違和感を覚えないではないが、そうしたオファーをしてくる英国勢を受け入れ、やがては「そのこと」を前提に動くように政府以下、なり始めている。

他方で米国勢はというと、こうした英国勢の動きに対して余りにも「無防備」である様に見える。今回行ったmeetingにおいても、日米同盟というと今や「時の人」である海の向こうの御仁より、「防衛装備品について言うならば、イラン戦争もこれあり、米国勢の生産能力も下がっているのだから、これを補うべく、日本に対して英国勢がこれを提供するという流れは米国勢としても基本的に歓迎だ」との趣旨の言葉まで飛び出してきたので驚いた。しかも曰く、「さりならば、英国勢は他の欧州勢と共に厳しい財政難に見舞われているので、”日英同盟”を創り上げようとしても、そのためのカネがないというのが率直なところであろう」とのことであった。「日米同盟」のフロンティアにあって活躍しているはずの御仁まで(大変恐縮ながら)「このレヴェルの認識」であるのだから、これはもう、近々「大変なこと」が起きるや否や、泡を噴くのは我が国だけではなく、米国勢もまた右に倣えだ、と直感的に思った。

この関連で我が国では今、どういうわけか、「安保三文書の改定」を控え、原子力潜水艦を導入すべきかどうかが「論点化」している。実にこれまた不可思議なのであるが、確かに米国勢にとっては「第二防衛線」まで我が国が守ってくれるとなると財政負担が減るので、これまた好都合であり、そのために原潜の建造を我が国に許すというのは道理にかなっている様にも見えるのである。他方で、我が国ではこれを実現するためには、一つの方途として米英豪の同種のプロジェクトであるAUKUSに入るべきだという議論があるとも聞いている。しかし、実のところ、豪州の側においてはこのAUKUSそのものがカネのかかる代物であり、果たして本当に自らの安全保障に有効なのかという議論続けられているとも聞くのである。こうした状況を踏まえると、どうしても最後に残る1つの当事者である英国勢の企図が気になって仕方がないのである。一体、彼等は東アジア勢で、そして我が国において何をしたいというのか。

「歴史を振り返らぬ者は未来に対しても盲目である」

かつて第二次世界大戦が始まる時、対日最後通牒を米国勢が出す際、実のところ、ほぼ同じタイミングで英国勢に対しても同種の「最後通牒」を突きつけようとしていたことは、我が国においてもはや広く人口に膾炙していない様に見受けられる。しかし事実はそうなのであって、米国勢はとりわけ中南米勢に対して浸食をあらためてしようとしていた英国勢を激しく牽制しようとしていたのである。もっとも結果としては、我が国が先に圧搾(squeeze)されることになったわけであるが。

しかし第二次世界大戦も末期、そして戦後秩序の構築となると米英勢の”角逐”はあらためて激しくなってくる。その一つの典型的な戦線(front)がと東南アジア勢におけるプランテーション、しかも「麻薬栽培」であったわけであり、これを米国勢は根こそぎやめさせようとし、世界保健機関(WHO)を中心とした国連の秩序をその意味で打ち立て、「麻薬撲滅」という名目で英国勢、そしてオランダ勢らの「麻薬利権」を徹底的に潰したのである。我が国では先の大戦中、「鬼畜米英」(あるいは米英蘭)などと無邪気に語られていたが、実のところ、「米英蘭」は一枚岩などでは決してなかったのである。そう、何を隠そう、我が国が第二次世界大戦で猛威を一直振るうことが出来た「零式艦上戦闘機(ゼロ戦)」の基礎技術は他ならぬ英国勢から供与されていたのである。そのことからも、「歴史のフラクタル」でこれから我が国、そして東アジア勢で何が起きるのかというのは誰の目にも明らかな様に思えてならない。

現在、世上、我が国では「国家としてのインテリジェンス能力の向上」がしばしば語られる。そして例によって国内では関係機関同士の小競り合いが行われているとも耳にするのであるが、本当に眼を向けるべきなのは、この「米英勢の角逐」から如何にして最大限の裨益をするか、そのための戦略思考なのだと筆者としては考えている。そして何よりも、徹頭徹尾今後は貶められていく米国勢こそ「経路依存(path depandant)」であることが明らかになる中、どの様にして消えゆく「日米同盟」を処していくのか、それこそ、官民を挙げて、10年、20年、いや100年単位で考えるべき時が来ているのである。

来月(11月)はそうした想いを込めつつ、再びglobal trotterになる覚悟を決めている。そこでの成果は、再びここに記していくことにしたい。

2026年10月17日 東京の寓居にて

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 ファウンダー/代表取締役CEO/グローバルAIストラテジスト

原田 武夫記す

 

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