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【緊急コラム】石油タンカー2隻への攻撃 ~攻撃主体は誰か?~

*本稿は去る4月に入社しました、防衛省・自衛隊幹部を務めあげた島村修司が、専門家でないと分かりにくい軍事事情について、現場の視点を織り交ぜながら分かり易く伝える不定期コラムです

*ホルムズ海峡において日本籍を含むタンカー船が攻撃を受けた旨、報道されました。
これを受けて「IISIA Defense Brief」の号外を発出させて頂きました。今回、その一部を特別に
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はじめに ~軍事分析~

被攻撃場所、被攻撃方向、攻撃可能範囲を数理分析するとイラン沿岸付近陸上又は水上のプラットフォームからの攻撃の可能性は考え得るが、攻撃手段についてはリンペット・マイン(磁気吸着型遠隔操作機雷)に関する情報も伝えられていることから特定できない。また攻撃の専門性は認められるが誰しもが容易に入手できる自動船舶識別装置(AIS)の情報や汎用ICT製品及び簡易爆弾(IED)等を組み合わせれば攻撃主体は正規の軍事組織ではなくとも可能である。よって米軍による現場海域付近の調査や近傍の港にえい航された後に船舶保険会社が行うタンカーの被害調査の結果が出たとしても、可能性として攻撃主体へのイランの関与に一定の言及が成される程度に留まるものと考える。

 

政治情勢

特にポンペオ米国務長官やボルトン大統領首席補佐官(安全保障担当)は、当局情報、使用された武器、高度な攻撃を行い得る専門性、計画性からイランの関与を強く示唆しているものの、イラン外務省は不可解な事件として関与を否定している。また一部には特定国の支援を受けるイラン南部のアラブ系反政府組織による犯行との指摘もあり、イラン政府自体が調査に乗り出す可能性もある。また、国連安保理の場での議論も始動するであろうが、「証拠がない」点に対する言及は既に各国各レベルから出ているため短期での議論収束は困難と考える。

仮に、イラン(イスラム革命防衛隊・イラン軍)の関与があったとしても、イスラエル、イラク、サウジアラビアに対する攻撃がそうであるように、直接的な軍事行動を表面化させることなく武装組織への支援を通して実行しているため、今次攻撃主体も決定的な証拠が提示されない限りイラン政府・軍と特定されるには至らないものと考える。また仮に米国が今次事態をもって軍事行動に出ることはイラン側に戦争の大義を与えることとなるため引き続き双方の睨み合いが続くものと考える。

 

おわりに ~予測~

米国/イラン双方の非難の応酬は強まるであろうが、今次事案における「確たる証拠」の提示を成し得るかがカギ。提示できない場合、事態は一段階緊迫するものの、イランが核合意の一部離脱を示唆する60日間の期限(7月7日頃)までの間は膠着状態が継続する。

WTI原油先物取引において、事件が報じられた直後には約4パーセント上昇したがその後約2-3パーセント内に留まっており、新たな被攻撃事件等が生じなければ、今次攻撃主体に係る結論に達するまでの間、様子見の状態が継続するものと予測する

(終わり)

 

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島村修司(しまむら・しゅうじ)

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所グローバル・インテリジェンス・ユニット ゲスト・ リサーチャー。1981年防衛大学校電気工学科卒業。1981年より2015年まで防衛省・海上自衛隊に勤務。同期間中、英国陸軍教育機関、英国海軍参謀大学、ロンドン王立大学(安全保障修士)留学。米国海軍大学連絡官、同戦略部研究員、米国海軍戦闘開発コマンド交換士官、日米防衛当局間協議等に従事。2017年衆議院議員公設第一秘書。2019年4月より現職。

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