Prometheusの構造をまずは可視化する(「IISIA技術ブログ」Vol. I) - IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 - haradatakeo.com
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Prometheusの構造をまずは可視化する(「IISIA技術ブログ」Vol. I)

今回から新しいブログを綴っていくことにしたいと思う。名付けて「IISIA技術ブログ」である。

弊研究所は昨年(2022年)からAI事業に正式参入している。そうした中で事業拡大を図るべく先般、採用面接を行ったのだがその場で候補者にこう質問された。

「AIセクターへ参入されて、事業も安定的に展開されているとのことですが。技術ブログみたいなものは公開されていないのですか?」

そう言われてみればそうだ。モノづくりの世界だと当然なのかもしれないが、「社会科学」寄りの独立系シンクタンクであるのでその成果物(outcome)として調査分析の一端を示すコラムはこの公式ブログで展開してきたものの、AI事業についてはプロダクトのPRこそすれ、それ以上の手立ては打ってこなかったのである。

だが、採用される皆さんの側からすればまずもって「そこにいって何を得られるか(take away)」が一番問題なのだろうから、この点についてしっかりと書いていきたいとあらためて想ったところだ。そこでコラムのシリーズ・タイトルを「技術ブログ」とし、グローバルAIストラテジストとして自ら活動している私(原田武夫)の卑見を交えつつ、研究所としてのAI開発の状況について軽いタッチで描いていきたいと思う。

もっとも、私(原田武夫)はいわゆるGEEKではない。ゴリゴリのAIエンジニアの様に「C言語では・・・」といった感じでの議論を展開したいわけではないのだ。そもそも我が国で初めての独立研究科としての人工知能科学研究科を設立した立教大学の学科としては2期生である私が修士号を取得するに際して受講してきたコースは「プランナー・コース」なのである。これはWEBの世界でいうならばSEに相当する。すなわちAIと実社会の間に立って、相互に翻訳し、次のステージに向かう流れを創り出すのがその役割である。したがって弊研究所でのAI事業も(今のところ)そうした「プランナー目線」で展開しているし、この「技術ブログ」についてもそうした視点から執筆することにするのであらかじめご了解願いたいと思う。

こうした「AIの社会実装」こそが我が国では実のところ本当の課題なのである。政府は「AI人財が不足している」と嘆く。だが、AIスタートアップがほとんど存在しないのかというと、ごまんとあるのである。だが、全くもってfly=企業成長しない、というのが実態なのだ。なぜならば技術こそそこそこかもしれないが、若いファウンダーたちの多くが実社会との接点を持たないまま創業しており、「売ること」が出来ないからだ。それではそうしたAIスタートアップが生み出すAIの果実をうなるほどカネを持っている大企業がM&Aすればよいのではないかと想うかもしれないが、これがまた非常に時間のかかるプロセスなのである。そしてそうこうしている間にそこでの技術・製品そのもんが時代遅れのものとなってしまい、当該スタートアップは自滅・雲散霧消してしまうのである。余りにももったいない実態だ。

これに対して私たちIISIAのAI事業は全く違うことをハイライトすることから「技術ブログ」は始めたいと思う。会員制サーヴィス「原田武夫ゲマインシャフト」の会員様=約1500名(2023年8月現在)という強固な顧客基盤があり、そうした会員様のニーズ/ウォンツに突き刺さる形でAIプロダクトをリリースし、結果として年間1.5億円以上の収益を既に獲得するに至っているのである(AI事業だけで)。こうした「最初からの成功体験」こそがAi事業にとって極めて重要であることは言うまでもない。

・・・と書いてきたところで本来ならばそのAIプロダクトであるPrometheus I/IIの説明へと移りたいところなのであるが、今回は初回ということでここまでということにさせて頂く。ただし「技術ブログ」であることを示すため、Prometheusで用いているアルゴリズム(深層学習)の構造はpythonコードを回した結果から抜粋して示しておこうと思う。

以上で示したとおり、Prometheusは畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とLSTMの組み合わせによっている。「ChatGPTの世の中になったのになぜそんなold-fashonedなアルゴリズムを?」と想うかもしれない。無論、そうしていることには理由がある。一般の技術ブログであれば数値的な検証をmetricsを次々に掲げて行い、その優劣だけで議論をすることであろう。だがその瞬間に、AIスタートアップは罠にはまってしまうのである。端的に言うならば「売れないAIプロダクト」を創り出すという最悪な道に嵌りこむことになる。

なぜなのか?・・・次回(第2回)は以上の点について、ChatGPTの淵源であるtransformerについても触れながら、「過学習」と「汎化性」、そして「時系列分析」特有の癖を巡る問題について研究と開発の一端を書かせて頂ければと想う。

 

2023年8月6日 東京・丸の内にて

代表取締役・CEO/グローバルAIストラテジスト

原田 武夫記す