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Global Peter Drucker Forumを前に。ピーター・ドラッカーの経営学は現代日本への処方箋であるか?(クスノキ・プロジェクトへの招待 VoL.9)

インターン生の髙橋こころです。

 

いよいよ来週(11月6日・7日)は、弊研究所のインターン生先輩の神野と板倉が弊研究所代表・原田武夫と大坪と一緒にオーストリア・ウィーンで開催されるGlobal Peter Drucker Forum(以下、ドラッカー・フォーラム)参加のため海外に出張します!ドラッカー・フォーラムの参加に際して、今回のブログでは、ドラッカー・フォーラムの概説に加え、実はドラッカー氏が晩年、非営利組織における経営学を重視していたことを踏まえ、そこから現代日本が学ぶべきことは何か?というテーマでお話していきたいと思います。

まず初めに、ピーター・ドラッカー氏と、ドラッカー・フォーラムの創設者であるリチャード・ストラウブ氏について簡単にご紹介していきます。

 

 

Peter Ferdinand Drucker (ピーター・ファーディナンド・ドラッカー)氏

(出典:CALISPHERE University of California

1909年11月19日、オーストリア・ウィーン生まれ。フランクフルト大学卒業後、経済記者、論説委員を務める。1933年、ナチス・ドイツの不興を買うことを承知の論文を発表して、ロンドンへ移住。マーチャンバンクでアナリストを務めたのち、1937年渡米。ニューヨーク大学教授などを経て、1971年、ロサンゼルス近郊のクレアモント大学院大学教授に就任、以降この地で執筆と教育、コンサルティング活動を続けた。

(参照:ドラッカー公式サイト

ドラッカー氏の生涯を通じた最大の関心事は、「社会的存在としての人間の自由と平等」であり、そのために社会、組織、企業はどうであるべきか、一人ひとりの人間は何をなすべきかを問い続けました。その思想は、モダン(近代合理主義)を超えて、21世紀を支配するポストモダンの旗手であります。同氏はあらゆる分野において、自分で学ぶ文化を動機づけることを説いてきました。組織の最大の資産は人材であり、その人材の成長を促すための最大の武器は知識ということです。強い組織(=社会)とは「教え合い、学び合う組織」であると同氏は言い残しています。

 

続いて、Global Peter Drucker Forumの創設者であるリチャード・ストラウブ氏と、会議の成り立ちについてお話します。

 

Richard Straub(リチャード・ストラウブ)氏

(出典:Executive Excellence)

2018年に10周年を迎えたピーター・ドラッカー・ソサエティ・ヨーロッパとグローバル・ピーター・ドラッカー・フォーラムの創設者兼会長。また、経営教育と開発の質と有効性を向上させるという使命を持ち、ビジネススクールと企業のネットワークであるEFMDのアソシエイト・ディレクターでもある。IBMで32年間、PCヨーロッパ担当副部長、グローバル・チーフ・ラーニング・オフィサーなどを歴任。2005年にIBMを退職した後も、グローバル教育産業のシニアアドバイザーとしてIBMとの関係が続いている。(参照:World Marketing Summi)

 

ドラッカー・フォーラムは、創設者兼プレジデントのリチャード・ストラウブ氏が、2009年に経営学者のピーター・ドラッカー氏の業績を記念して立ち上げた国際会議であり、「マネジメントのダボス会議」と称されています。2019年には、本フォーラムの功績が認められ、オーストリアの国家栄養制度における最高位の勲章、オーストリアの名誉大勲章を受章しました。

 

ちなみに、弊研究所が初めてドラッカー・フォーラムへ参加したのは2015年の第七回大会でした。覚えている読者様はいらっしゃいますでしょうか。
(参考:弊研究所代表・原田武夫がドラッカー・フォーラム参加後に書き記したブログ

 

昨年2024年の第十六回大会は「The Next Knowledge Work -Managing for New Levels of Value Creation and Innovation-(次世代の知識産業:新たな次元での価値創造とイノベーションをもたらすマネジメント)」をテーマとし、弊研究所の研究員が出席しました。そこでは、「AIが普及してきた時代だからこそ、人間である我々がフォーカスすべきは何か」といったことが語られていました。(参考:「マネジメントのダボス会議」に出席して (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.16)) – IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 – haradatakeo.com

 

そして、続く本年度の第十七回ドラッカー・フォーラムのテーマは「Next Era Leadership All Hands on Deck: All hands on Deck(全員参加、総力結集)」です。個人的には、世界が強烈なリーダーシップによって混乱に見舞われる時代に、未だかつてない全く新しいリーダーシップによる秩序を構築するという意味が込められているように感じます。リーダーシップとは、個人に備わる稀有な資質ではなく、集団の構成員全体によって共有されるべき創造的な活力のことであるとする見方への転換というメッセージが今回のテーマの核であると言えるでしょう。

 

ところで、今回ピーター・ドラッカー氏についてリサーチを進める中で、「NGO」というキーワードが浮かび上がりました。読者の皆様はこれまでNGOの活動に参加された御経験はあるでしょうか?NGO(Non-Governmental Organization = 非政府組織)とは、言わずもがな、市民が主体となり、営利を目的とせずに開発、貧困、平和、人道、環境等の地球規模の問題に自発的に取り組む団体です。

実は、NGOは晩年にドラッカー氏が重視した組織の在り方の一つなのです。1990年、ドラッカー氏が80歳の時、『非営利組織の経営』という非営利組織の経営に関する世界で最初の本格的な著作を出版しました。非営利組織はNGOのことだけ指す言葉ではありませんが、ここでは非営利組織の代表例であるNGOを挙げさせていただきました。

ここで、お金を生み出さない非営利組織に着目して意味があるのか?という意見を持たれる方もいるかもしれません。

ドラッカー氏が非営利組織を重視するようになったのは、非営利組織こそが、ドラッカー氏の思想の原点と言われている「一人ひとりが位置と役割を持つ自由な社会」を実現させるための新たなコミュニティの「場」である、との認識に至ったためでした。社会貢献の思いに基づき、ひとり一人の自発的な働きかけにより、社会課題が設定され、リーダーシップのもとに組織が形作られていくことにドラッカー氏は注目しました。

 

しかし、日本のNGOの実態に目を向けてみると問題が浮き彫りになるのではないでしょうか。下のグラフが示すように、日本のNGOは、1970年代から設立が増加し、1990年代がもっとも多く設立されて以降、新規の団体設立は減少の一途をたどっています。ドラッカー氏の説いた通り、NGOこそが「一人ひとりが位置と役割を持つ自由な社会」を実現する場であるならば、その絶対数の減少は、個々人の自己実現欲求が十分に満たされていない状況であると捉えられのではないでしょうか。近年では特に、多くの若者が夢を抱けなくなった、将来何をしたいのかわからないという苦難に直面しているといった言説が語られますが、この状況はまさにNGOの減少に符合します。

(出典:外務省「数字で見る日本のNGO」12頁)

 

ここで『非営利組織の経営』に戻ると、ドラッカー氏は「非営利組織にとってマーケティングの戦略こそ基本である。非営利組織はマーケットを知らなければならない。(中略)すなわち顧客を中心におかなければならない。顧客にとって大事なことは何か、彼らの心をとらえるにはどうしたらよいかを考えなければならない。」(『非営利組織の経営』61頁)論じています。つまり、非営利組織は、単に「個々人の思いが結集する」だけでは不十分であり、高度なマーケティング力が求められるものなのです。

社会課題の山積する我が国では、個々が内的に動機づけられ、草の根レベルの活動を行うことが求められています。そうした時代において、ドラッカー氏の非営利組織に対する経営学から学ぶべきことは多いのではないでしょうか。

弊研究所は去る9月に社会貢献事業である「クスノキ・プロジェクト」の初回ワークショップを実施いたしましたが、この冬、第十七回ドラッカー・フォーラムへの参加を通じて、世界の経営学者、マーケターが今、この瞬間、何を考えて動き出しているのかを学び、さらに活動をアップデートしていく所存です。

 

 

来年3月に開催する、ゴールド会員様限定のクスノキ・プロジェクトのイヴェントは、1月31日(土)に開催する「2026年・年頭記念講演会」から募集開始します。是非、御申し込み下さい。

詳細とお申込みは今すぐこちらからどうぞ!(HPにジャンプします)

 

 

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※当ブログの記述内容は弊研究所の公式見解ではなく、執筆者の個人的見解です。

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所・インターン生 髙橋こころ拝