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北京からのメッセージ。(原田武夫の”Future Predicts”. Vol. 64)

「中国共産党(CCP)などというものは存在しない。あるのは、あえて言うと”中国党”だけだ」

外務省に勤務していた時代から付き合いのある、とあるジャーナリストの方の言葉だ。この方は表に出ることは皆無だが、その実、彼の国から我が国へと帰化し、我が国有数のメディアの舞台裏において活躍されている。この言葉を聞いたのは早いもので20年も前のことだが、今になってこの言葉の重みをひしと受け止めている自分がいる。

毎週土曜日はBSテレ東で日本経済新聞社系の番組を楽しみに見ている。無論、そこで新規の何かを知るということはほとんどない(職業柄、だ)。そうではなくて楽しみにしているのは、そこで”流布される方向性”を巡って、その背後において実質的な勢力は何者であるのかということを考えると、番組を見る中、とても楽しくなってくるのだ。本日(13日)もそうだった。有名コメンテーター氏が「中国人民解放軍による異常な動き」を次々に語り、ついには「中国は今、戦後秩序を否定しにかかっている。もっといえば、第二次世界大戦の戦勝国であらためて秩序を決めるべきだと主張している」とまで言い出しているのを目の当たりにした。非常に興味深い番組であった。

筆者の場合、我が国をあくまでも視座の起点としつつも、基本的に物の見方は「グローバル」である。つまり特定の国民国家、さらには民族・宗教・結社の類には一切とらわれることなく世界情勢を日々見ている。「国民国家(nation state)」という17世紀半ば以来の古典的なスキームで見ると、確かにこのコメンテーターのお歴々のおっしゃるとおりなのかもしれない。番組においては、国防力において圧倒的に劣っている我が国装備品の実態について、グラフで分かりやすく示されていた。「要するにそういうこと」なのだ、とあらためて悟った。

「高市台湾有事発言」によって火がついたかの様に見えるが、その実、今年(2025年)は12月になってから一気に情勢が緊迫することは、あらかじめ弊研究所からは数か月前から述べていたとおりなのである。このことは集合意識の現れであるグローバル金融市場の各種指数について、時系列分析を適切な前処理と共に最新AIアルゴリズムで行えば誰でも行うことが出来ることではある。しかし重要なのは、そこで日々看取されるトレンドの中にいかなる「期待(expectation)」が含意されているのかなのであって、この部分の言説(narrative)の解釈こそ、実は「AIと金融」が交錯する領域においては最新の研究課題なのだ、と敬愛する碩学から最近も聞いたことがある。いずれにせよ、弊研究所では独自開発した時系列分析のためのCNN+LSTMアルゴリズム(Prom,etheusシリーズ)を駆使してこのトレンドを割り出し、他方においては公開情報分析(OSINT)を日々行うことでそこに秘められた意味を読み取り、未来へと照射(projection)しているのである。そうした中で先述のとおり、「動くのは12月」と割り出していた。そうした見立てに現実がようやく追随してきたというのが率直な印象だろうか。

もっとも動乱の時を迎え、全ての視座が狂い始めたかの様に見える時、最も参考にすべきは非公開情報、すなわちクローズドな人間関係の中で極力、物事の「中核」にいる人物から端的に「どうなのか」という問いへの答えをもらうことである。東京・北京間でヒートアップが表向き喧伝される中、筆者もまた中南海隣に居を構えるカウンターパートにメッセージを投げ入れてみた。するとこともなげに御仁から返信を頂いたのである。

無論、細かくここでお伝えすることは出来ないが、端的に言うと”Everything is alright”.というわけなのである。たとえ短信であってもこのことは極めて重大な意味合いを持っている。何せ、彼の御仁の兄上・姉上は毎週の様に「赤い中国」の”皇帝”と寿司を食べているというのであるから。このメッセージが持つ意味合いは推して知るべしということなのであろう。騒ぎ立て、火をつけることによって得をしようとしている人物がどこにいるのか、自ずからこれで明らかになったと思うのは筆者だけであろうか(こういう時には「だんまり」を決め込んでいる御仁が一番怪しい)。

そうこうしている間に、ヘルシンキから別のメッセージが届いた。「地経学(geoeconomics)」の国際学会からの報せであるが、ヘルシンキに本拠がある学会だ。その主はスウェーデン人なのであるが、この方とは先日、ZOOMで意見交換を1時間ほどさせて頂いた。その時、こう言われたのである。

「ニッポンの学者さんたち、特に経済安全保障(economic securty)の専門化として知られる有名学者の皆さんと先日意見交換したのだが、どうにもこうにもそりが合わなかった。なぜならば、彼らが異口同音に語っているのはどう見ても米国一辺倒といった議論であり、またそれに由来する情報に基づく分析だったからだ。また妙に国家論を語るのも違和感を覚えた。むしろ地経学において主体は民間企業であり、民間のエンティティ(entity)であるはずだ。またニッポンがその中で大きな役割を果たすことも自明だ。以上の感想に基づき、是非、貴研究所とは関係を深めていきたいと考えている」

どうやらこの学会では欧州、しかも北欧勢が中心になる形でありつつ、他方で米国勢の東海岸勢を巻き込みながら、「民間企業・組織にとっての地経学的行動規範」をドラフティングすることになっているようだ。そしてこのネットワークに参加するためには、まずは来年(2026年)1~3月までの間に知的な貢献を目に見える形で同学会にする必要があり、そこから「専門家パネル」へと入り、徐々にグローバル社会全体にとっての「行動規範」を決める輪へと入ることになるようだ。

目の前で起きていることだけに視線を奪われてはならない。「鉄火場」の様に見えるからこそ、本当は「次、そしてまたその次」に向けて秩序形成は今こそ始まっている。そしてそれは「民主主義」ではなく、まずもって知性の連帯」とでも言うべきところから始まるのであり、それに向けての呼び声(call for)は現実にここ東京にも届いているのである。あとは、些事にかまけることなく、その機会をとらえるかどうか、だ。

いよいよ始まった新時代。着実に前へ、前へと進んで行きたいと思う。それこそがPax Japonicaへと連なる道であると信じて。

2025年12月13日 東京の寓居にて

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 ファウンダー/代表取締役CEO/グローバルAIストラテジスト

原田 武夫記す