ウィーン出張報告 – 外を整える日本と、内を見つめるヨーロッパ。(クスノキ・プロジェクトへの招待 VoL.10)
インターン生の板倉瑠香です。
秋去冬来の折、このたび11月6日(木)7(金)の二日間にわたり、オーストリア・ウィーンで開催された「第17回グローバル・ピーター・ドラッカー・フォーラム」に参加して参りました。世界中から経営者、研究者等が集い、「Next Era Leadership All Hands on Deck( 全員参加、総力結集 )」をテーマに議論が行われました。本フォーラムへの参加は、次世代の人材育成を目的とするインターン生主導クスノキ・プロジェクトの一環として実現し、「グローバル・リーダーシップとは何か」をテーマに、私たちインターン生も貴重な学びの機会を頂きました。会議の詳細については、本年11月26日(水) 14:00にゴールド会員の皆さまに向けた出張報告会を通じて還元させていただきます。
今回のブログでは、現地で感じた熱気と、世界の経営者たちが共に悩み、考えている空気感をお伝えしたいと思います。また、ドラッカー・フォーラムに関する背景や、マネジメントの父として知られている本フォーラムのピーター・ドラッカー氏については、インターン生・髙橋さんがブログにて詳しく紹介しています。まだお読みでない方は、ぜひそちらも併せてご覧ください。
先ず、フォーラム全体の構成とスポンサーについてご紹介いたします。今年度「Next Era Leadership All Hands on Deck( 全員参加、総力結集 )」というテーマのもとに、Microsoft、Bosch、McKinsey & Companyといったグローバル企業の経営者、さらにForbesやBloombergなど世界的メディア関係者、また米欧の思想をリードするハーバード、オックスフォード、ケンブリッジなどの有名大学教授が登壇いたしました。
またスポンサーについては、昨年度に続き SHRM や McKinsey & Companyといったコンサルティングカンパニー、また日本からはFujitsu などが協賛する一方、今年は Bayer や Virginia Mason Institute、Robert Bosch Stiftungなど医療・ヘルスケア分野の企業が新たに加わりました。他方で、Steelcase、Higher Ed for Good、Hult International Business Schoolなど「教育」業界に関連するスポンサーは姿を消しています。こうした変化はセッションのテーマ設定にも反映されていました。
さて、少し話を変えますが、いま日本では、企業経営に関連して見過ごせない課題が浮かび上がりつつあるのをご存じでしょうか。去る6日、ロイター通信は「日本企業の現預金が過去最高の役80兆円に達した」というニュースを報じました。財務省の法人企業統計によれば、2007年度に約30兆円だった大企業の現預金は、2014年度に50兆円を超え、2020年以降はおよそ80兆円前後で高止まりしているそうです。確かに世界的に見ても近年はパンデミックや地政学リスク、自然災害等、企業にとって不確実性の高い出来事が相次ぎました。こうした環境下で、企業が慎重な姿勢を取るのは当然の流れとも言えます。しかし、その反面、慎重さが長引くほど経済全体の循環を鈍らせてしまう恐れもあるのです。
そこで金融庁が現預金の有効活用を促すために三つの柱の一つとして打ち出したのが、「研究開発」「設備投資」と並んで「人的資本」への投資です。これらはいずれも企業の持続的成長に欠かせない要素ですが、組織を動かすエネルギーは最終的には人の力にほかなりません。( 参考: マクロスコープ:大企業に眠る「現預金」80兆円、国がメス 賃上げ後押しか )
そして、同じく “人” に焦点を当てた議論を世界規模で交わされたのが今回のドラッカー・フォーラムでした。皆さまは「人的投資」と聞いて、先ず何を思い浮かべられるでしょうか。今回の会議への参加を通じ、日本とグローバルにおける「人」を巡る議論の焦点の違いが見て取れました。
例えば日本では、女性活躍や働き方改革、ダイバーシティ推進など、主に人が働きやすい外的環境を整えることが人的投資の中心として語られることが多いです。しかし、今年度のドラッカー・フォーラムにおいて語られていたのは、人が社会の中でどのように存在意義を見出せるか――つまり、人の内面に焦点が当たっていました。人の外側に目を向けるか、内側に向けるかで経営の在り方は大きく変わってくると思います。今回のピーター・ドラッカー・フォーラムは、まさにその “人の内面への投資” を軸に据えたものでした。人の心に存在意義を与えることが、組織を変革へ導く力になるという共通認識が、各セッションを通じて一貫して語られていました。
オープニング直後に行われた「Opening Salvo: The New Leadership Our Times Demand(時代が求めるリーダーシップ)」というセッションの中では、「多くの従業員は既に会社に貢献する力を持っているが、その意欲を企業がどう生かすか」、「次世代のリーダーは日々の仕事に意味を求めており、上層部がその意味づけをどう行うかが問題である」といった、非常に示唆に富む議題が取り上げられていました。セッション終盤、登壇者の一人が印象的な言葉を残しました。
「Most people already have changemaking skills, It’s just a question of do we nurture them, do we support them to use them, and do we create environments where they can actually flourish?――ほとんどすべての人が既に変化を起こす力を持っている。問題は、それを育て、使えるように支え、花開く環境をつくれるかどうかだ」
つまり、グローバル・リーダーシップたちは、人的資本への投資を通じて “環境を整える” よりも “心を支える” 事に重点を置いているのです。社員一人一人が組織の中で自らの価値観を実感し、”この” 会社で働く意味があると感じられる文化そのものを育てる。これからの日本が成長していく上でのヒントになると感じました。
また、「The AI Miracle in Learning(学習におけるAIのミラクル)」というセッションでは、AIを通じて学び方そのものを変えていく取り組みが紹介されていました。「AIに“全社員が共通して持つべき思考のフレームワーク”を学習させ、社員はこのAIとの対話を通じて業務を遂行することで、基本原理を社内で徹底させることができる」といったもので、AIを用いて知識を組織全体的に伝播させるという視点が示されており、これはまさに、AIにより知識の継承を行うという、弊研究所が進めてきたクスノキ・プロジェクトの方向性とも通ずるものでした。今後は、グローバルな場でのAIとの向き合い方や学びの再構築に関する議論を踏まえ、次回のクスノキ・プロジェクト・ワークショップの内容をさらに発展、アップグレードして参ります。
以上のように、多くの“気づき”があるウィーン出張でしたが、本年11月26日(水)14:00にゴールド会員の皆さまに向けて実施する出張報告会では、フォーラムで実際に議論された内容をもとに、今後のビジネスにおいて何が必要で、どのような視点が重要なのかを皆さまと一緒に考えていきたいと思っています。
皆さまのご参加を心よりお待ちしています。
来年3月に開催する、ゴールド会員様限定のクスノキ・プロジェクトのイヴェントは、1月31日(土)に開催する「2026年・年頭記念講演会」から募集開始します。是非、御申し込み下さい。
詳細とお申込みは今すぐこちらからどうぞ!(HPにジャンプします)
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※当ブログの記述内容は弊研究所の公式見解ではなく、執筆者の個人的見解です。
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所・インターン生 板倉瑠香拝