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「米国一強」というユーフォリアとDOGEコイン。(原田武夫の”Future Predicts”. Vol. 21)

「DOGEコイン、注視していますか?これから起きることはあなたが想像しているよりも、はるかにすごいことです。まぁ、見ていて下さい。」

仮想通貨=暗号資産というと、こちらより頼んでもいないのにある時から”海の向こう”より筆者に対して連絡をよこす某紳士より、3日ほど前に今度はこんな連絡があった。DOGEコインに注視せよ、と彼は繰り返し述べてきている。無論、この手の御仁は大勢いるのであって、それらが「為にするトーク」、すなわち自己の資産ポジションに有利な方向へと導くためのメッセージであるというのが通例なのではあるが、しかしこの某紳士に限っては違うのである。特に仮想通貨=暗号資産について、弊研究所では最新AIアルゴリズム「Prometheus I/II」をもって時系列分析をしてきているが、そこで研究所としての当座の見立てとして都度アップデートする見解とほぼ同じタイミング、同じ内容でこうした「問わず語り」を伝えて来る。今回もそうなのであって、「これは一体何を意味しているのか」と思いつつ、同時に今回も彼は外さないのではないかとふと思ったところである。海の向こう=米国においては我が国の資金決済法による厳格な規制といった規制が仮想通貨=暗号資産には一切かけられていない。それだけに緩い言論が蔓延っているわけだが、しかし同時にその市場操作性というのも、ある程度の影響力を持っている向きならば可能なのではないかと推察している。この可愛い絵柄のミームコインが果たしてどれほどの驚きをもたらすことになるのか。注視しているところではある。

しかし、この様に言われても多くの読者の皆さんにとっては「おそろしく縁遠い話」の様に聞こえ、なおかつ、「あえて飛び込むには値しない、リスクの高い話」の様に聞こえるかもしれない。なぜならば今や世界は「安倍一強」ならぬ、「米国一強」と言う議論一色だからだ。

「トランプ・トレード」という最初のユーフォリアはさすがに色あせた感がしないでもない。マーケットにおいてはトランプ米次期大統領の「当選」が決まるや否や、様々な分野で激しい動き、しかも多くの場合は「急上昇」と言う変動が生じた。そして総じていうと、それはトランプ米次期大統領がかねてから言っているとおり「米国を再び強大な国家にする(Make America Great Again)」そのものに直結すると誰しもが今後の流れについて思ったからこそ生じた現象なのであって、その傍らで他の諸国勢の経済は一斉に停滞し始めている。欧州勢においてはフランスが真っ先に財政問題をあらわにし、ドイツ勢がこれに続いている。すなわちユーロ圏は低迷に一途を辿っているわけだが、その元凶とされているのが中国勢なのである。知王経済の落ち込みを筆頭に、何とか「ゾンビ経済」になるギリギリのところで食い止めているそこでの流れに巻き込まれる形で、我が国においても上場企業の今期中間決算は自動車産業を中心に暗くなる一方のものばかりが目立った。そして我が国において株価、とりわけ日経平均株価が裁定取引によるボックス圏での推移に終始する中、「まぁこういう状況ならば、とりあえず米国勢に投資をしておけばよく、あとは果報は寝て待てだ。ニッポンのマーケットなど見ているだけ時間の無駄だろうといった厭戦気分?とでもいうべき雰囲気が個人投資家たちを中心に、我が国社会全体でまん延し続けている感が拭えない。

「トランプ政権の経済政策」として想定されているのは、概略次のようなものだ。―――米国勢においてバイデン現政権の下で最大の問題となったのが物価の上昇であり、それによる一般市民の生活に対する圧迫だった。トランプ米次期大統領の当選はこうした「お茶の間レヴェル」での反発から生じたものなのであり、同次期大統領としてはまずもってこれに応える必要がある。そこでまずは雇用の確保を国内でするのだと叫びながら、高関税を友好国・同盟国に対しても一斉に課す。当然、輸入物価が上がるわけでまずはインフレが加速する。このこと自体は上記の様な「一般ピープル」レヴェルでの反発を当然呼ぶので、その次の一手を打つ。それが「シェールオイル・ガスの大量採掘許可」だ。エネルギー価格がこれによって米国内では一気に下がり始める中、インフレも当然収まって来る。米連邦準備制度理事会(FRB)に対してはそれまでの間、一切手を打つなと命じておき、いよいよインフレが収まってきた段階で「利下げ」の圧力をかける。元来、時期は定まっていないものの、基本的には利下げをしたいと考えているFRBは「これ幸い」と利下げに走る。その結果、米経済には再びガソリンが入れられることになり、うまく行けば程よい感じで上昇基調を維持しながら走り続ける・・・というわけだ。

だがしかし、「果たして本当にそんな単純な流れになるのか」と、今だからこそあらかじめ考える必要があるのだというのが筆者の見解だ。まず、細かなことを言うまでに指摘しておきたいのが、グローバル・マクロ(国際的な資金循環)を見るにあたって重要なのが「出と入りの論理」、すなわちルシャトリエの原理(Le Chatelier’s principle)であるという点だ。「他の諸国勢において株価指数が冴えない中、米国株だけが上昇を続けている」という「米国一強」の現状は明らかにこの意味で”怪しい”。すなわち「上げ」は「下げ」のためであることを考えると、むしろ米国勢についてはショートで臨むべきなのである。ところがアナリストたちは決してそこまでは踏み込んでは言わない。せいぜいのところセルサイドにおいて語られることはと言えば、「トランプ米次期政権になったらば局所的に円高進行になる可能性があるので、日本株については大型株ではなく、グロース株に注目しておくべきですよ」といった迂遠な分析が関の山なのである。

この点について仔細に見ると、ある意味単純だが、当のトランプ米次期政権の関係者(to beも含め)こそ、「これから起きることはそんなに甘い出来事ばかりではないという事実」をあらかじめ知っているのではないかと思えてならない。米国勢における利下げは、なぜ必要なのか?―――シンプルに考えるならば、米国債の金利の支払いが困難になりつつあるから、なのだ。つまり米財政は既に危機なのであって、何もトランプが就任するからそうなるというわけではない点に注意する必要がある。他方でこれから大統領に就任するトランプとその周辺こそこのことを熟知しているのであって、トランプはわざわざマクドナルドで「バイト」のふりまでして、ハンバーガーを側近たちにビットコインで買うといったことまでアピールしたのである。その延長線上には、総額で15兆円(邦貨換算)ほどのビットコイン、すなわち仮想通貨=暗号資産を「準備金」として米政府が購入し、法定通貨である米ドルを支えぬこうという一部の連邦議会議員たちによる立法化の試みがある。そしてまた、あまりにも滑稽であり、また露骨なまでにインサイダーとしか見えないイーロン・マスク「DOGE庁」長官による「DOGEコイン」を巡る発言もこの流れの中になるのであって、米国勢においては「ブロックチェーン上におけるアメリカン・ドリーム」を求めて人々があれやこれやとミームコインに殺到するというムーヴメントが起きているわけなのである。

紙幅の都合もあるので、法定通貨である米ドルを巡りこれまで米国勢で繰り広げられてきた暗闘の歴史をここでは繰り返さない。一つだけ確かなのは、「余程のこと」が無い限り、法定通貨=米ドルとその担保を巡るこれまでの本当のシステムが露呈したり、あるいはそれが何かと入れ替えられるということはないということだ。だが逆に言えば、「余程のこと」があるならばこれは瞬く間に変転してしまうのであって、海の向こうからメッセージを問わず語りで寄せて来る件の紳士ではないが、「私たちが想定している以上のすごいこと」がそこで起きるに違いないのである。

最初はギャグとして創られたはずの柴犬をかたどったミームコインである「DOGEコイン」。愛らしい柴犬がある時突然、オーバーナイト(一夜にして)で「獰猛なライオン」になる事態を、私たちはこの年末年始に向けての時期の中で体験することになるのであろうか?眼が離せない。

 

2024年11月30日 東京の寓居にて

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 ファウンダー/代表取締役CEO/グローバルAIストラテジスト

原田 武夫記す

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本日のコラム、如何でしたでしょうか?弊研究所では来年1月、恒例の「年頭記念講演会」」を開催致します。今回取り上げたテーマも含め、じっくりとお話をさせて頂きます。ご関心を持たれた方はどうぞ、こちらから講演会の詳細をご覧ください。皆様のお申込み・ご来場をお待ち申し上げております。