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今こそ我が国のリサイクル技術で世界を席巻すべき(コーポレート・プランニング・グループの”Pax Japonica” ブログ(Vol. 5))

この数か月間で米国勢の航空機事故が複数のメディアで報じられていたが、ご存じだろうか。我が国では、正月早々に起きた日本航空機と海上保安庁の航空機との衝突事故はメディアで大々的に報じられていたが、米国勢における航空機事故については大きな話題になっていないようである。1月5日(金)に米アラスカ航空便で離陸直後に機体の一部が落下(参照)、2月19日(月)に米ユナイテッド航空便で飛行中に機体の翼部分が損傷(参照)、3月7日(木)に米ユナイテッド航空便で離陸直後に車輪が脱落した(参照)。航空機事故の大半が操縦士のミスで発生するものの、これらの事故に鑑みると、機体自体の老朽化が進んでおり、新しい航空機の導入ができなくとも、部分的な修繕や新しい部品への取り換えが必要であると見受けられる。

(出典:The Standard

航空機の機体に使われる素材はどのようなものだろうか。一つとしてチタンが用いられる。高額なこともあり、使用される金属はアルミニウム合金の割合が大半を占めるものの、チタンも航空機の主翼、胴体やエンジン部品として使用されている。このチタン製品の原料であるスポンジチタンの世界生産量は我が国も世界で第2位であるが、中国勢がその2.5倍の生産量を誇り、ロシア勢は第3位の生産量を占めている(参照)。また、チタンの強度向上のためにはバナジウムが必要であり、この主要産出国は中国とロシアが80%を占める。

<国別バナジウム鉱石生産量>

(出典:JOGMEC

中国勢とロシア勢の存在感は様々な場面で感じるが、大阪大学の近藤勝義教授がチタンの廃材を再資源化する技術の開発を行っており、この技術が社会実装されれば我が国でもこの2か国に依存することなく、自国内でチタン製品の作成が可能になる。現状では、チタン製品は製造時に表面付近に不純物が付くことからその10-20%程を切除する必要がある。現在の技術では再利用できずに廃材になってしまうのだが、この廃材を安価に再生する製法を世界で初めて確立した。またリサイクルチタンが従来よりも強度が高く、しなやかさも増すことが証明された (参照)。この再生チタン材を使用すると、製品の小型軽量化も大型化も可能になり、巨額の設備投資も不要になるという。研究ではおそらく国内から廃材を収集したと見受けられるが、中国勢におけるチタン廃材の量は生産量と同様に世界で最も多いのではないだろうか。中国中部の大規模工場がiPhoneの最大製造元となり世界に出荷しており、iPhone15 Pro/Pro Maxがチタン製であった(参照)ことから大量の廃材が存在していると推察する。中国勢に確立したリサイクル技術が存在しないのであれば、彼らからこれらを回収して我が国に多くの利益をもたらすことも十分可能である。

この他にも我が国のリサイクルに対する研究は進んでおり、高い技術力が存在する。九州大学では環境調和型のレアメタルリサイクル技術の開発が2014年から実施されており、最近では目的のレアメタルだけを回収する特殊溶媒の開発に成功した(参照)。また東北大学においては、「水熱技術」によってリチウムイオンバッテリーから短時間で効率的に金属を回収すること及びバイオマスから炭素材料を作り出すことに成功した(参照)。

ただし、我が国も油断は大敵である。チタンリサイクル技術の開発に関しては既に韓国勢が注目し、新しいリサイクル方法の研究と開発に力を入れているのだ(参照)。太陽光発電で出遅れてしまった我が国がリサイクル業界を席巻する絶好の機会を逃さないためには、研究者だけではなく協力者が必要である。新しい物を生み出し製品化までに時間がかかる我が国であるが、技術革新が進む中でこのプロセスにかかる時間をなんとか短くしたいものである。そのためにも研究者、企業、起業家や投資家が集えるような機会は今後も増やしていくべきだろう。

社会貢献事業担当 近藤由貴 拝