『なぜ彼は原発反対にこだわるのか?』 (連載「パックス・ジャポニカへの道」) - IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 - haradatakeo.com
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『なぜ彼は原発反対にこだわるのか?』 (連載「パックス・ジャポニカへの道」)

最近、気になって仕方がないことが一つある。それは小泉純一郎・元総理大臣が再び「原発反対」の怪気炎を上げ始めたことだ。しかも今年7月に行われる見込みの参議院選挙に向け、「反原発勢力の結集」まで謳い始めている感がある。

原子力の是非については福島第一原子力発電所(F1)から放出され続けている放射性物質の永続的な処理を抜きにしては決断できないというのが私の考えだ。したがって私はそもそも「原発反対」とだけ叫び、「F1問題」について何らの処方箋を提示しない者の叫ぶことを一切信頼しない。むしろ「あーでもない、こーでもない」と価値観の主観的な議論に持ち込むことで、問題を過度に単純化し、結局はそれを自己の権力・勢力拡大のために政治利用しようとしていることは目に見えているからだ。「将来」について語る前に私たちは「過去」についてまずは整理しなければならないのである。そこからである、全ては。

その意味で小泉純一郎・元総理大臣の発言は全くもって分からないのである。しかも「反対、反対、即時撤廃」とだけ叫ぶものの、「それではその代りはどうするべきなのか」という点について具体的かつ包括的な戦略を述べたことは一度もないのである。無論、この様に言うと「それは官僚がやるべきこと。政治家は風穴を持前の突破力で開け、方向性を決めることが役割だ」という反論がすぐさま聞こえて来そうだ。確かにそれは一理ある。だが、氏は既に厳密な意味で政治家ではないのだ。それなのになぜここまでこの点に拘るのか、普通は皆目見当がつかないのである。

もっともこれもまた小泉純一郎・元総理大臣ならではの「いつものやり方」であると考えることも出来なくはない。「自民党をぶっ壊す」と勢いよく語って始まった小泉政権。しかしその実、当時の「小泉純一郎総理大臣」を中心に政権与党である自民党は結束力を高め、ぶっ壊れるどころかむしろ筋肉質になったことは記憶に新しい。広い意味で言うならば、あの時の記憶があるからこそ、現在の安倍政権もまた成立し得たのである。その意味で小泉純一郎・元総理大臣は自民党に対する最大の功労者であると言うべきなのだ。

それでは小泉純一郎・元総理大臣が重ねて述べる「反原発論」の狙いは一体どこにあるのか。―――もう一つ思いつくのが「権力の継承」というモティーフである。誰が見ても「ある時から我が国の内閣総理大臣になるだろう」と囁かれている息子・進次郎。彼もまた、東北復興には並々ならぬ力を入れていることをアピールしている政治家の一人だ。したがってその意味で小泉親子は東北復興を起爆剤にした政治権力の獲得に向け、驀進しているように見えなくもない。しかし、それにしてはやや迂遠なのではないだろうか。これを機に一気に権力を「小泉ファミリー」として掌握するというのであれば、親子が並んで画面に映ればそれで足りる。ツーショットは映像メディアの恰好の題材となり、現職である安倍晋三総理大臣に匹敵する、あるいはそれ以上の“尺(=放映時間)”を得ることは間違いない。

もっともこう考えるのはやや短絡的であるというのが卑見だ。というのも、息子・進次郎に対して直接指導を行っているのは父・純一郎ではないとのディープ・スロートからの非公開情報があるからだ。それによると進次郎を訓導しているのは、表には全く出て来ない小泉純一郎・元総理大臣の「実の兄」なのだという。姉・信子の采配ぶりはマスメディアでもよく語られるが、この「実の兄」の存在については不思議なことに全く語られることがない。ファミリーとして絶対に語ることのない、深淵な世界がそこには広がっている。だがいずれにせよ、小泉父子が一般に考えられる「親子関係」ではないことは間違いないのだ。

それでは特殊ないわゆる「利権」に絡んでいるのかというと、なかなかそれも見えて来ないことも事実である。私はかつて外務省・北東アジア課に勤務していた時代、藪中三十二・アジア大洋州局長(後の外務事務次官)からこんな電話連絡を大声で受けたことがある:

「今、総理官邸に行ったらば、小泉総理から“北朝鮮がエネルギーが欲しいというのなら、風力発電でも我が国から供与したらどうか”とのコメントを受けた。風力発電の現状について今すぐ調べろ」

その時の藪中局長の狼狽ぶりは今でも覚えているが、それはそれとして、我ら事務方は余りにも突拍子の無い話だったので、さしあたりネグレクトしたことを覚えている。その対応は正解だったわけであり、その後、小泉純一郎・元総理大臣からこうしたコメントが出て来ることは二度となかった。今もまた「反原発論」をぶち上げる小泉純一郎・元総理大臣の口から「原発を廃止して、代替エネルギーに切りかえろ。具体的には・・・」といった発言は一切聞かれないのである。したがってこうした推移を総合して考える限り、小泉純一郎・元総理大臣が既存の、という意味での「特殊な利権」に目がくらみ、こうした言論を展開しているとは到底考えられないのが実態なのだ。

はっきり言おう。小泉純一郎・元総理大臣がその「行動原理」として常に念頭に置いていること。それは「我が国の本当の”権力の中心“」及び「米国勢の根幹」との間のバランスの維持である。それ以上でも、それ以下でもない。小泉純一郎・元総理大臣はメタ・レヴェルでこのことについて思考し続ける能力を明らかに持っている。そのことはいわゆる「小泉構造改革」によって何が起きたか、何がそれによってもたらされたのかを考えれば一目瞭然なのである。

「小泉構造改革」について人々は当時、“あれは小泉総理が米国勢ら外資勢の手先となり、我が国の国富を彼らに食わせるために行なったものだ”という批判を口々に語っていた。ゴールドマン・サックスを筆頭とした「投資銀行」や無数の「外資系ファンド」が我が国経済を食い荒らしたことは事実である。そしてその風穴を開けたのが他ならぬ「小泉構造改革」であったこともまた真実なのだ。その限りにおいて、この指摘はあたっていると言わざるを得ない。

だがそれと同時に行われたことを巡る「真実」を私たちは全く知らされていないのである。舞台は我が国の民間銀行セクターだ。そこで行われた巨大銀行の統廃合劇の裏側で投入されたのが実は我が国の本当の”権力の中心“が抱える莫大な量の簿外資産だったのである。その結果、「海外支店は全廃、不良債権についても処理に目途がその時点で既に立てることが出来、しかもメガバンクとまではいわずともかなり大規模」という新しい銀行がそのタイミングで設立されたのだ。他方でこのことについて異論を唱えた者、例えば月刊誌にこうした内情を暴露しようとした者は容赦なく成敗された。しかもこうした本筋の話とは無関係に「異常な性的嗜好の持ち主」といった、図りし得ないダメージを当該批判者が受ける形においてである。その時の逮捕劇を巡っては余りにも不自然な状況から「米国勢の陰」が語られたが、結局はその意味で真相は明らかにされることはなかった(「U事件」)。それもそのはず、この一連の展開の原動力となっているのが、我が国の本当の”権力の中心“の御意思だからだ。我が国においては窮極において、この御意思に逆らうことは絶対にありえないことなのである。そしてなぜここまでしてこの新銀行を創ったのかといえば、正にこれから我が国が程なくして”デフォルト(国家債務不履行)”の陥る中で、銀行セクターの大規模な統合再編の核としてそれがどうしても必要だからだ。

ここに「日米同盟」の本質があることを今こそ、私たちは直視しなければならない。圧倒的な敗戦の直後、我が国の本当の”権力の中心“は米国勢と直接対峙した。その結果出来上がったのが「日米同盟」なのである。そしてその本質はと言えば、一方において我が国は米国勢からの求めに応じて国富を移転させる義務をその後「100年間」にわたって負い、他方で米国勢は我が国がこの義務を履行する限りにおいて安全の保証を与えるということにあるのだ。つまり我が国の本当の”権力の中心“が前者の義務を果たす限りにおいて、在日米軍は我が国を守り続けなければならないというわけなのである。そして後者の延長線上において、米系インテリジェンス機関が我が国の本当の”権力の中心“をその限りにおいて守り、かつその御意思が貫徹されるべく、我が国の国土の上で縦横無尽に活動を展開するという構図が成り立っているというわけなのだ。

これでお分かり頂けたのではないかと思う。小泉純一郎・元総理大臣が3代にわたる政治家一家で育ち、しかも米海軍が直接その場にいる「横須賀」を抱える地域で選ばれ続けるために必須の「行動原則」として刷り込まれたのが、正に“このこと”なのである。小泉純一郎・元総理大臣が常にその視線を向けているのはただ一つ。「我が国の権力の”本当の中心“」と「米国勢における根元的階層」との間のバランス。ただそれだけだ。彼の言動の全てがこの一点に起因しているということを見誤ってはならない。

「そのことは分かった。だが、他ならぬ米国勢の利益となってきたのが我が国において拡大し続けてきた原子力発電なのではないか。そうであるならば、小泉純一郎・元総理大臣ががなり立てる“反原発論”はむしろ米国勢にとって不利益なのではないか」

読者からはここでそんな疑問の声が上がってくるはずだ。しかし残念ながらそうした疑問は全くもって的外れである。なぜならばこうした議論が湧き上がる大前提には、「米国勢が追求しているのは原子力。過去・現在もそうであり、これからも未来永劫そうであり続ける」という根拠なき確信だからだ。

しかしこう考えてみてはどうか。―――「米国勢こそ、反原発へと動き始めている。”太陽活動の激変が気候変動、とりわけ北半球における寒冷化を招き、そのことが人々の免疫力の著しい低下を引き起こす結果、グローバル経済全体がデフレ縮小化を加速させ続ける“という現状の中、米国勢は天地をひっくり返すようなイノヴェーションをエネルギー分野で打ち出そうとしている。それは『常温核融合(cold fusion)』である。」まさか、と思われるかもしれない。これは”真実“なのである。また別のディープ・スロートが最近、「米国勢の連邦エネルギー省と海軍が今、我が国の『常温核融合』研究者を次々に招き、プレゼンテーションをさせ、資金供与を大規模に行っている」との非公開情報を教えてくれた。確度120パーセントの”事実“そのものである。そう考えた時、米国勢にとって邪魔なものは他でもない「かつてのビジネス・モデルである原子力発電を延々と続け、トラブルばかり起こしている我が国の電力利権グループ」に他ならないのだ。

他方で我が国の本当の”権力の中心“はといえば、その御意思が実質金利(=名目金利―インフレ率)のマイナス化を通じた史上空前のバブルの発生(”上げ“)と、その中においてもなお劇的なイノヴェーションによるマーケットと需要の創出が叶わず、最終的には上昇し続けるインフレ率を抑えるために同じく上昇する名目金利に伴う「日本国債の利払い不能」に直面することで生じる事実上の”デフォルト(国家債務不履行)“(”下げ“)にあることはこれまでの流れから明らかだ。だが、その先で我が国全体が生きさらばえるためには、国家として大規模な「掃除」が必要になる。そしてそれが全土にわたる「エネルギー革命」なのである。そのためには従来型の原子力発電には消えてもらう必要がある―――。

物事とは、それを支えている梃子の支点を変えるだけで、かくも全く異なる形で見えて来るのである。そしてこうした我が国の本当の”権力の中心“と米国勢の双方の意思が交錯した微妙なバランスの中で、なおも本当の意味での「政治」を行い続けているのが小泉純一郎・元総理大臣なのだ。その延長線上には愛すべき息子・進次郎へのこの意味での”ファミリーの役割“の引き継ぎという大役が見えてきている。

表で小泉純一郎・元総理大臣が再びけたたましく語り始める中、背後ではこれら両者の意向を踏まえる形で様々な人士が我が国において動き始めている。私と私の研究所もその渦中にいる。今後とも、そこで一体何が行われ、動いているのか。可能な限りでこの場を借りて御説明出来ればと思う。

2015年3月13日 東京・仙石山にて

原田 武夫記す

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