WEBとコンビニ - IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 - haradatakeo.com
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WEBとコンビニ

エストニアからこんにちは。

突然ですが先週から東欧のバルト三国、エストニアに来ています。

フィリピンに引き続きヨーロッパ地域にも拠点を置きたい、という会社の意向のため、しばらくこの黒海の辺りで仕事をすることになりました。近くエストニアのIT会社と協力して、日本・フィリピンメンバーで共同開発を始めます。

知る人ぞ知るIT大国、ただし遠くはなれた東欧の国と、日本、フィリピンという全く性格の異なるアジアの国々との開発となるため、次の記事ではよいネタになるのではと期待しています。きっとしばらくプロジェクトは(全く)うまくまわらないんでしょう。

ところでエストニアに旅立つ前の最後の週末、数ヶ月東京で一緒に働いていたフィリピン人のスタッフと大阪・京都・神戸で観光してきました。私より一つ年下の真面目な女の子でとても仲がよく、東京にいる間はよく二人で出歩いてました。最近は日本の冬の寒さに耐えかねて季節性の鬱っぽい症状があったらしく、気を紛らわせるために布団でアニメを見始めたらハマってしまったそうです。コタツは知らないほうが幸せだよ、とだけ言っておきました。

すっかり日本のライフスタイルに馴染んだ彼女と、地元関西のいわゆる観光地をぶらぶらして感じたこと。最近の都市部はびっくりするくらいに英語・中国語・韓国語の併記、アナウンス、更には多言語対応してくれるスタッフの配置などが進んでおり、私も気軽に日本語が全くできない外国人の友人を連れ出せます。最悪私が遅刻してもどうとでも暇を潰せるし、別行動ではぐれて路頭に迷うことはないでしょう。

今回は急な三連休だったので、金曜日の夕方に突如として計画を立て夜行バスを取り、日曜の朝には二人で京都の街をぶらぶらしている状態でした。私はただ彼女から送られてきたバスのConfirmation emailを確認し、バス発着場に迎えに行っただけ。どこに行きたい?と聞けばwi-fi完備の待合ラウンジで調べていたらしい幾つかの有名どころを、google mapで検索して歩き出すだけ。Suicaにチャージすれば切符に悩む必要もなく、次の日しばらく神戸を案内し夜は道頓堀でたこ焼きを食べて、またバスのラウンジまで見送り、さよなら。

弾丸ではありましたが気が紛れたと、とても喜んでくれました。伏見稲荷で筋肉痛になった甲斐がありました。

日本語ネイティブ故に今まで知らなかったのですが、今や大きな交通機関、宿泊施設の各社多言語ページやアシスタントページ、またはかなり詳細な価格や所要時間、快適度の比較サイト、外国人のブログや動画など、旅行から日々のライフハックまで、良質なコンテンツが大量にネット上に転がっていること。ヘタに細かい情報が網羅された日本語のサイトを見るより、外国人向けにシンプルに情報が切り取られたこれらのサイトを見るほうが日本人の私にすら簡単に思えました。

そしてコンビニの圧倒的なコンビニエンスさ。クレジットカードを持っていない彼女は今回チケットをコンビニ端末で取得し決済したのですが、これもシンプルでとても簡単。私の手助けは一切不要。大きなコンビニの端末だと多言語対応していますし、支払い方法を細かに教えてくれているサイトもたくさんある模様。来日以来コンビニスイーツに心を奪われている彼女の流れるようなチケット代支払とおやつ補給は日本人そのものです。

もちろんこれではいわゆる「現地の生活に触れる」だとか「伝統的な」とか「観光地されていない生の」と形容詞が着くような感動的な経験は不可能ですが、こちらは忙しい仕事の合間に「そうだ、KYOTO行こう」程度の願望でふらりと出掛けているので、これで全く構わないのです。画一化されお膳立てされ何の心配も要らず、かといって何の強制もなく、ただネットで話題になっているところに行って写真をとってお茶をしながらFacebookにあげるような、そういう安っぽい延長された日常で十分なのです。

そうした「サービス」が浸透してきて、多くの外国人観光客がそれに乗っかっていることを目の当たりにして、それこそ安っぽく、また直感的に「グローバル」だなぁと感じました。そしてその大部分がITの恩恵なのだと思うと、改めてすごいもんだなと感心します。地球上どこでも、大体おんなじ。

それを文化的に悲しむべきか嘆くべきかはさておき、とりあえず空港で一番に買うのは地図でも観光ガイドでもなく、安く大量のデータ通信ができる現地のSIMカードという程度に文化的に安っぽい人間である私としては、これっていわゆるセーフティーネットだなと思うのです。

彼女曰く、皆に言われていたように確かに日本では相対的に話し言葉としての英語が通じないし、東京のメトロは未だに全くわからない。けれども、ネットで色々な情報は英語で得られるし、交通機関は安全で時間通りだからアプリさえあればマニラよりよほど簡単に移動ができる。ご飯も美味しい。困るのは寒いことだけ。今度は桜の時期にまた1人でも京都に来たい。だそうです。

日本国民が誰でも英語を理解できるようになるのはどう考えてもまだまだ先。どころか日本国が日本国としてある限りあり得ないことかもしれません。親切でやる気がある日本人がどんなに勉強したって努力したって、明日、英語でバリバリプレゼンすることも、饒舌に愛を語れるわけでもありません。せいぜい道案内が地図アプリ程度に少しうまくなる程度でしょう。

そうではなくて、そこの努力はもちろんそれとして置いといて、そこのワンレイヤー上に、かぶさるようにあるセーフティーネットとして、それを紡ぐ技術としてのITは喜ぶべきものだと、日々むしろITに追われているような小さな人間たる私は思うのです。

「最初はもちろん不安だったけど、日本は安全で、皆優しくて親切だから、きっと誰かが助けてくれるとわかった」安心感があるからこそ、彼女は次から1人でも大丈夫と言っていました。誰かが助けてくれるとまで行かずとも、誰か助けてくれそうな人がいる、というのが本当のセーフティーネットでしょう。ただ自分が網目にかからない時というのは多分誰にもどこにでもあり、そういう時に、地続きではないどこかにアクセスできる、そういう意味でのぼんやりしたネットが頭上にあるというのも、安心できる材料だなぁと思うのです。

ニューヨークにいた頃、引っ越して1ヶ月経たないうちに文字通り着の身着のままスリッパで家から締め出しを食らったことがあります。商品棚に蜘蛛の巣がはっているような1ブロック先の怪しい中国の個人商店に駆け込み、余り英語が通じないおじちゃんがスマホですぐ近くの鍵屋を検索してくれたのは私にとって最高にConvenientでした。

社会保障とかそういうレベルでのネットではなくて、つながりとかいう精神的な意味のネットでもなくて、単純に、情報源としてのネット。ただひたすらに感覚論で恐縮ですが、宙吊りになって新しい場所を覗きこめば、その下には別の形でセーフティーネットがあったりするかもしれないので。便利とか効率だけとかではない面も含めて、今後ますますの健やかな発展を期待したいと思います。

 

【プロフィール】
楼 まりあ
神戸・東京・マニラのオフショア開発を繋ぐブリッジSEとして日系企業に勤務。東欧での新拠点をリサーチするため現在エストニアに長期滞在中。
大学時代、マニラオフィスのオープンスタッフとして1年間マニラに滞在。NYでインターン経験有。東京大学経済学部卒。

 

 

 

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