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「遠隔操作マシンガン」とは何か?(IISIA研究員レポート Vol.19)

去る11月27日(テヘラン時間)、イラン勢で最も著名な核科学者モフセン・ファクリザデ(Mohsen Fakhrizadeh)がテヘラン近郊で殺害された旨報道された(参考)。

(図表:Mohsen Fakhrizadeh)

Mohsen Fakhrizade

(出典:Wikipedia)

モフセン・ファクリザデはイラン勢の核開発に関わる「防衛開発研究機関(SPND)」代表を務めており、同機関は去る昨年(2019年)3月に米国勢から制裁対象と認定されている。この制裁措置の背景として核合意失効後に再び核開発が行われることへの懸念と若い研究者が核開発に関わらないようにけん制する目的があるとされる(参考)。

今回の暗殺に関して当初イラン勢の国防総省は武装テロリストがモフセン・ファクリザデの乗っていた自動車を襲撃し、7人の襲撃犯とモフセン・ファクリザデ側のボディ・ガードとの間で銃撃戦があったと説明していた。またテロリストとされる3,4人が殺されたという目撃情報も伝えられていた。さらに現場の近くで証拠隠滅のため日産車が爆発したとも報じられた(参考)。

イラン勢の外務大臣モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ(Mohammad-Javad Zarif)はツイッターで「テロリストがイランの著名な科学者を殺害した」とし「この卑劣な行為は、イスラエルの関与が強くうかがえるものだ。戦争を引き起こそうと必死の様子だ」と批判して国際社会に対し「国家によるテロを非難する」よう求めた(参考)。

しかし11月29日(テヘラン時間)になると説明は一転し暗殺者の集団がその場にいたのではなく先の不審な日産車に設置された遠隔操作の自動機関銃からの発砲により殺害されたと報道された(参考)。この日産車は証拠隠滅のために発砲後爆破されたという。

ここで使われた自動機関銃は高度なカメラとAIを搭載しており衛星経由でオンライン制御されていた。3分足らずで砲撃がなされ、25センチメートルしか離れていなかったモフセン・ファクリザデの妻には発砲がされなかったという(参考)。

イラン勢は本件で使われた銃に「イスラエル製」という文字が刻印されていたということを根拠としてイスラエル勢を非難している(参考)。ここで疑問となるのはイスラエル勢が関与しているとすれば、そして証拠隠滅のために使用した車を爆破までしているとすれば、なぜ使用した銃に「イスラエル製」などと刻印したのかという点であろう。イラン勢は少なくとも核兵器を巡ってイスラエルと対立する構図を改めて打ち出したいと分析される。

一方、本件で使われた遠隔操作の自動機関銃の高性能さも明らかだ。今後暗殺には同様の遠隔操作が主要な手段となっていくことが考えられる。このことがもたらすのは暗殺犯側の危険が大幅に低下する暗殺だ。それは同時に第三者への責任転嫁もより簡単にするだろう。遠隔操作武器の今後について引き続き注視していきたい。

グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー

佐藤 奈桜 記す

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