カルチャー・タイム・ショック - IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 - haradatakeo.com
  1. HOME
  2. ブログ
  3. カルチャー・タイム・ショック

カルチャー・タイム・ショック

日本の方でトラブルが続いて、自分のプロジェクトでも色々なものが伸び伸びになった結果、

2ヶ月ほど前から仕事の内容的にはまったくエストニアにいる意味のない状態が続いています。笑

 

むしろ先月末には突然に日本への帰国命令が下り、週末含め神戸・東京で延々とお仕事とちょっと友達と遊ぶ、という私にしては珍しくアクティブな2週間を過ごしました。

「エストニアに戻る必要ある?」「せめてマニラにいれば」と度々会社の皆さんに言われましたが、少なくとも日本のオフィスで朝から晩まで出勤するより今のエストニアでの在宅ワークスタイルは自由で気に入っているので、経営者の気が変わらないうちに戻ってきています。

 

今回のエストニア行きはまだほとんど構想段階、とりあえずお前行って様子見てこい、くらいの話ですので、日本の本社がここまで余裕がないとエストニア要素が放置されていても仕方ないといえば仕方ないのですが、ここまで忙殺されていては本当になんのためにいるのやら…ということで少々反省しています。

世の中にはどんなに忙しくても精力的にネットワーキングに勤しみ、新しい知識や体験を得るスーパーマンもとい立派な国際的ビジネスパーソンがおられるはず。

心の底から尊敬するのですが、私みたいな貧弱引きこもり気味なインドア趣味人間はダメです。まず圧倒的に体力がもちません。

 

というわけで近頃は後ろ向きな義務感で一日最低1時間ほどあちこち散歩をするようにしています。

ここ最近で私が1番衝撃を受けているギャップについて。

 

エストニアでは6月24日は夏至祭(ヤーニパエヴ/jaanipaev)で祝日でした。

さらにその前日6月23日も「戦勝記念日」というエストニア独立戦争の際の勝利を祝う祝日だそうですが、基本的に夏至祭の前夜祭、つまりはクリスマス・イブのような位置づけとなっています。

両日とも国旗を掲揚し、多くの人々は田舎や郊外に出向き家族や恋人・友人とリラックスして過ごします。また伝統的に篝火を燃やしてお祝いします。

 

写真はあのエストニア人力士、把瑠都のゲストハウスで行われたイベントで撮影したものです。

今までで1番エストニアっぽいことをしたかもしれません。前進です。

あいにく当日夜は雨だったのですが無事に篝火も燃え、明け方1時をすぎる頃には晴れはじめ、中々に気持ちの良いひとときを過ごせました。

星が見えれば最高に綺麗だったかと思いますが、そこは夏至祭、ほとんど日が沈まないので仕方がないですね。エストニアも白夜です。

 

そして例年、このヤーニパエヴの週くらいから多くのエストニア人の意識は夏休みに向けてそわそわし始めるそうです。

(学校などは6月前半でほぼ夏休みに入っています。大体9月頃まで。これは羨ましい)

そしてこれが開けると8月の後半まで多くの企業でも夏休みを順番に取り始めるので、

全体的にビジネスが停滞しがちだとか。まさに今は本格的にサマーバケーションの季節に突入したところです。

エストニアだけでなくヨーロッパ全土でもそろそろ、ということらしく、

観光都市であるタリンでは旅行客がどっと増え、平日週末昼夜問わずテラスでビールを楽しむ人々で賑わっています。

 

この、このいかにもV・A・C・A・T・I・O・Nと言わんばかりの外界と

パソコン画面の向こう側に見え隠れする湿気と疲労感のギャップ。

街中を歩けば上のような状態で、ちょっと私の気分が明るくなるのも束の間、

家に帰ってパソコンを開けば6時間の時差を思わせない程延々と飛んでくるメール、一向に終わる気配のないTODOリスト。

労働環境?文化?気候?もしかして単純に収入格差?

いずれにせよ簡単には埋まらない差だと思うのですが、ここまで目の前で見せつけられるとびっくりしてしまいます。

 

ちなみにですがフィリピンはこの時期は夏ではなく雨季のため、基本的に休みはありません。

(ただ洪水の影響で不可抗力的に休みにならざるを得ないことは多々あります)

代わりに3月終わりから5月にかけて多く夏休みが取られるようです。

その他クリスマスの時期が1番の連休になりますが、

フィリピンも大型連続休暇ではなくちょこちょこ挟む祝日で休日を確保する形で、VacationというよりHolidaysという意識でした。

ちなみにこの2カ国は世界でも1位、2位を争う祝日の多い国だそうです。あまり実感はありませんが。

 

実際仕事をしていないのであくまで想像にすぎませんが、

もしあのままこちらの企業と共同プロジェクトを始めていたら

しょっぱなからスケジュールで結構揉めたかもしれません。

 

最近はようやく東京・マニラ・タリンの時差の感覚がつかめてきたのですが

(後よく間違えられるのでロンドン時計も一応並べています)

フィリピンの突然の祝日に慌てふためくことがよくあります。

これがもう1国2国と加わるグローバルなマネージャー職は相当時間感覚に優れていないといけないのでしょう。

日本のカレンダーもまともに把握せず生活している私は氾濫するカレンダーや時計アプリに色々手を出すものの結局忘れていて愕然とします。デジタルじゃない時代のサマータイムなんて事故以外のなにものでもなさそうです。

無理やりつなげてみましたがITって素晴らしいですね。

人間の時間感覚なんて日が昇って沈んでくらいが限界でしょう。

それすら世界の中ではこうして日が沈まなかったり上らなかったりするのですから、人類の歴史上時計と暦は文明と文化の最先端だと思います。

 

というわけで数字を刻むという意味では私たちは既にスマホ一台でほぼ全世界を掌握していると言っても過言ではないかと思うのですが、

やはり時間の過ごし方や区切り方、捉え方というのは異文化同士、なかなか理解しきれない気がします。

 

別に欧州のバケーション文化素晴らしい!とか日本も最低2,3週間の夏休みを導入スべし!と安直にいいたかったわけではないのですが(あればそれはそれでとても嬉しいのですが)

まぁ、日本人も皆が皆そこまで根を詰めなくてもいいんじゃない?というご提案だけは私のカルチャーショックを和らげるためにも申し上げたいと思います。

 

自分が休日出勤するからといって取引先にも度重なる深夜残業休日出勤を要請するとうっかりエストニアから人を呼び戻さないといけないことだってあるかもしれませんので…。時差やカレンダー差を利用して年中無休で仕事を回すのは正しくグローバル化ですが、人間が回るのはその限りでないです。きっと。

 

 

【プロフィール】

 

楼 まりあ

 

神戸・東京・マニラのオフショア開発を繋ぐブリッジSEとして、そして東欧での新拠点をリサーチするため現在エストニア現地企業で外部契約社員として勤務。大学時代、マニラオフィスのオープンスタッフとして1年間マニラに滞在。NYでインターン経験有。

東京大学経済学部卒。

 

関連記事