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そして金(ゴールド)が無くなる日 (連載「パックス・ジャポニカへの道」)

金(ゴールド)、しかも地金がマーケットから無くなり始めた。そうなることは最初から分かっていたのだが、スピードが加速し始めている。世界最大の資産運用会社であるブラックロック(Blackrock)社が人気のETF(上場投資信託)である「ゴールド・トラスト」の新規設定を停止し始めたと報じられたのである。一見すると何気ない報道の様に見えるかもしれないが、要するに買付=解約分の現物の金(ゴールド)を用意出来なかったからではないかとの見方が広がり始めているのである。

金(ゴールド)の需要増は通常、本来ならば国際基軸通貨であり、皆が信頼しているはずの米ドルの「危機」を惹起しかねない。そこで米国勢はマーケットに介入し始めるはずなのだ。放っておくと大変なことになるからだ。だが仮にそこで米欧系“越境する投資主体”らがかつてイングランド銀行をよってたかって襲い掛かった時の様に、今度は米連邦準備制度理事会(FRB)を襲い始めるとなると事態は極めて緊迫したものになる。そこにたとえ悪意は無かったとしても「マーケットに歪が生じたから」などという理由で、グローバル・マクロ系の巨大なヘッジファンド勢が一気加勢に米ドルを売り始めれば、たちまち米国勢は負けてしまうのである。その代りに金(ゴールド)は急騰し、新しい時代の始まりになる。

だが、難しいのはブラックロック社という名の知れた存在がなぜあえてこのタイミングで、「それ」と分かる動きをし始めたかなのである。マーケットの“猛者”であれば上述の様な展開になることを当然想定して動く。だが、当の巨大ファンドたちはその実、全く逆の動きを示すとなると話しは変わって来るのである。そこで「想定外」の出来事が起きると、一時的な急騰を経てむしろ崩落へと転ずるリスクすらある。さて、どうなるか。―――金(ゴールド)に巨額のポジションを持っている”越境する投資主体“の主らは今、文字どおり「眠れない夜」を過ごしているはずだ。

ちなみに仮に順当な形で「金高騰=米ドル危機」となった場合、これが引き金になってインフレの本格高騰になる点に留意しておきたい。そしてこの金(ゴールド)を巡る混乱が醒めやまぬ内に今度は原油(WTI)、さらには非鉄金属や穀物、そして材木などその他資源に波及していくのである。前回のこのコラムでも書いたとおり、中央銀行当局、さらにはその周辺にいる米欧勢の統治エリートたち、そして彼らを使用人として用いている華僑・華人ネットワークのハイレヴェルたちの本当の狙いは「実質金利のマイナス化」だからだ。そのことが誰の目にも明らかになった瞬間、全世界で爆発的かつ歴史的な金融バブルが発生する。しかも今回は我が国であってもFinTechにより、あるいはBitcoinにより、低所得者層にも賭博場へ入る切符が渡されることになる。「20代そこそこなのに2000万円貯蓄が出来た」「40代の外資系サラリーマンが家賃収入だけで1億円のリッチな生活を実現した」といったタイトルの書籍が書店の軒先に並び、私たち全員の射幸心がくすぐられる。そう、“いよいよ”なのである。

しかし大変気になるのは繰り返しになるが金(ゴールド)、しかも現物である地金が無くなっていることがこれ見よがしに騒がれ始めた感があるという点なのだ。私の年代前後以上ならばこのことを知ってすぐさま想い出すのが、1985年に発生した「豊田商事会長刺殺事件」だろう。当時、金銀価格の高騰を目の当たりにした個人投資家たちは一斉にただの紙切れに過ぎない同社の「純金ファミリー契約証券」に殺到。ところが蓋を開けてみると現物の金(ゴールド)など全く持ち合わせていないことが明らかとなりパニックとなった。被害総額は当時の金額で約2000億円にもなった。

「のるか、そるか」―――正に歴史上そうそうないタイミングが到来している。無論、私たち日本勢一人一人の人生にとってもそうだ。ここで何を考え、どの様に動くのかによって私たち自身、さらにはその愛すべきファミリー、そしてその子孫たちまで大きく影響を受けることになる。「そのこと」に対するセンスを持ち合わせているか、あるいはそうではないかによってこれから行く道のりは大きく分かれて来るのである。

ちなみに実質金利をマイナス化する最大の理由は、わずか2年から長くても5年程度であろうが爆発的なバブルの中で「とんでもないイノヴェーション」を打ち出し、グローバル経済を根底から変えるしかもう手段がないと米欧勢の統治エリートらが考えているからである。事実、ここに来て米エネルギー省や米軍らは血眼になって我が国における技術シーズを探しており、西海岸の米軍基地で行われるプレゼンテーションに次々に我が国の科学技術者たちが誘われている。中には「行ったきり消息不明」になっている人物もいるのだと聞く。そこまで米国勢は必至なのである。それもそのはずだろう、何せ狙われているのは自分たちだからだ。ドナルド・トランプ共和党大統領候補の「快進撃」や、それに対する統治エリートらの猛烈な反発(「トランプ大統領が誕生しても中央情報局(CIA)は従わない」宣言など)を見れば、いかに尋常ではない出来事が今彼の国では現在進行中なのかが分かるであろう。

しかるに我が国はといえば昨日(5日)、安倍晋三総理大臣自身が「福島を風力発電などによって新エネルギーの開発拠点にする」と記者団に対して述べたのだという。正直言えば全くもって遅きに失しているとしか言いようがない。なぜならば私は昨年(2015年)1月2日に安倍晋三総理大臣に40分ほど面会した際、「福島第一原発の廃炉、とりわけ膨大なトリチウム汚染水の処理を行う際、これを置換反応によって水素へと転換する本邦ヴェンチャー企業が開発した技術を用いれば、『F1』は水素の生産拠点となり、我が国を救うことになる」と進言したからである。今回の発表では「風力エネルギーを用いて」などと未だ寝ぼけたことを言っていたと報じられている。だが、道は一つしかない。そのことに気付くか、あるいはハイパーインフレーションに巻き込まれ、いよいよ我が国がデフォルト(国家債務不履行)になるか。時間の競争が始まったというわけなのだ。

いずれにせよ「甘い時間」「眠っていて良い時間」はこれにて終わり、なのだ。人知れず機敏に動いたものだけが、確実に未来への切符を手にする。是非、心に刻み込んで読者の皆さんには週明けに臨んで頂きたい。

2016年3月6日 東京・仙石山にて

原田 武夫記す

 

※「週明けの展開可能性」について、更に代表・原田武夫が詳しく論じているのが音声レポート「週刊・原田武夫」(2016年3月4日号)です。こちらからご参照ください。

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