「Agile in uncertainty」(“変化の激しい環境で機動力の高い組織へ”) - IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 - haradatakeo.com
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「Agile in uncertainty」(“変化の激しい環境で機動力の高い組織へ”)

大橋祐介です。第8回は「Agile in uncertainty」(“変化の激しい環境で機動力の高い組織へ”と題しまして、最近のビジネス現場でよく起こりがちな現場の混乱するパターンを紹介し、組織全体から見た必要な考え方や対処の仕方を取り上げます。今回も「ちょっとした視点の切り替えが生む大きな変化」というテーマに沿ってお送りします。少しでも読者の皆様のご活躍の一助になれば幸いです。

マーケット環境が大きく変化する中で、「事業ポートフォリオ」を多く持つ企業が増えてきました。M&A、資本提携、業務提携などの動きに加え、新しい事業を立ち上げる動きなどもあります。今回はこのような複数の事業ポートフォリオを持つ、執行役員や事業長などが複数の異なる案件を並行して主導している、等の企業の事業現場を想像してみてください。(特に今回のテーマが深刻な課題に直結します)

このような環境下では意思決定者が複数のポートフォリオ(事業領域)に関わり、経営に関わる意志決定も早く、リアルタイムで状況を見ながら軌道修正されていきます。ロケーションが日本に限定されない「グローバル企業」であれば尚更その修正の頻度と複雑性は高いです。従来のような上流から下流へとウォーターフォールのように進むものではなく、優先順位の変更が都度なされます。(こういった動きは所与の段取りと対比されて”Moving Target”型と称されます)

企業全体を”船”と捉えると、優先順位や方角を柔軟に変えて、都度そのタイミングでの最適な動きに合わせていくことが重要なのですが、”船の舵取りである”経営層や事業長が優先順位や方針の変更を頻繁に言いすぎると、(特に個々の案件単位で動く)現場レベルでは混乱が巻き起こります。よくある話ですが、”頭が冴える”上司に対して部下が大きく振り回されていると考えてしまい、「首尾一貫していない」「注力すべきイシューがブレている」などの批判が現場レベルからよく起こるのはこういった文脈から出ることも多いのです。

スピード感を持ってどの企業も勝ち残っていかなければなりません。さて、この環境下で経営サイドと現場サイドではどういった協働の仕方が求められるでしょうか。経営では企業レベルでのマネタイズ・財務収支管理に注力するため、優先順位を柔軟に変えていくことが是となります。しかし、事業現場では直近の各案件・実務に注力しており、現場メンバーの皆がAlmightiness(オールマイティな完璧さ)を持ち合わせているわけではありませんので、経営サイドのあらゆる状況や意図を汲んで動くのは難しいというのは言うまでもありません。

経営サイドから現場サイドに向けて必要なのは、

・あらゆる案件の繋がりをしっかりと説明し、究極的なゴールが何か、判断軸や基準が何で あったかを説明する場を設定すること。方針やアプローチを明確に定義し、コミットメントを出していること。

・その掲げた方針やアプローチを変えた場合には、理由(状況の変化を察知した根拠など)を明確に伝え、アップデートした指示を元に現場が動いているかどうかを定期的にレビューする場を設け、方針転換がある場合は末端までに浸透されているかを確認すること。

―変更指示が十分に行き届いていないがために、今まで3つ以上の顧客で、経営サイドが「二枚舌な動きをしている」と現場に誤認識された場面に遭遇しています。さらに悪いケースですと、関連会社やその企業のクライアントなどにも同様に「筋が通っていない」という印象を与えてしまうこともあり得ます。

-こういった”変更管理”は両サイドの信頼を維持する上で非常に重要です。定期的にレビューを設け、進捗を確認することで両サイドの信頼が生まれていきます。この場でしっかりとその変更に柔軟に対応できていることが確認できたら、Recognition(賞賛)すべきでしょう。

-「柔軟」という言葉は”都合の良いワード”と捉えられがちですが、しっかりとイシューに呼応しているとクリアになればむしろ良い言葉です。何に対して柔軟なのか?というのを意識すると良いと思います。

「組織が思ったように動かない」とよく発言する経営サイドが多くいます。深く入り込んで、我々が支援していけばするほどその気持ちはよく分かります。施策レベルまで指導し、実行計画の組立、推進体制の構築まで綿密にフォローするケースは増えてきているからです。また、経営サイドに立つ人材ほど、現場時代に自身のリーダーシップで道を切り拓いてきた経験を持つことが多く、「自分で何事も完結できる」スキルを持っているため、スピード感のなさに霹靂としてしまうのです。

しかし、前回7回でお伝えした通り、「経営サイドから複数のプロジェクトを動かす立場」になると、自分だけでは完結・完遂させることはできません。ここでは必ず、各現場に落として展開、推進させることが必要になってきます。

経営サイドとしては自分たちが抱いている構想に対して、「進むスピードの遅さに堪えられない」状況が生まれ、その一方で、現場では「都度発生する変更と同時並行で進む各案件との関係性や優先度などがどんどん変わっていくことに対して混乱状態が続いてしまう」状況が生まれてしまうのです。機動力のある組織作りには、こういった課題を解決し上記のような協働体制をしっかりと仕組みとして作り上げる必要があります。

ここで上記のような明確なコミュニケーションを経営サイドと現場サイドで持たせる必要があります。現場の皆様はぜひ上記の観点を参考にしながら、経営サイドとの橋渡しをしていけると更に機動力のある組織へと一歩近づきますので、実行に移してみてください。このコラムを機に、読者の皆様の現場が抱える課題への問題解決に少しでも繋がっていけば嬉しく思います。

【執筆者プロフィール】
大橋祐介(おおはしゆうすけ)
慶應義塾大学卒業後、経営コンサルティング・ファームに参画。戦略、マネジメント、オペレーションを総合俯瞰したコンサルに価値を置く。国内外を跨いだ 数々のプロジェクトに従事し、直近では合弁会社設立や新規事業立ち上げに参画。アメリカ発祥の国際的非営利教育団体Toastmasters Internationalにてエリアディレクターも務める。

 

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