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「救国のテクノロジー」、急募。(続「パックス・ジャポニカへの道」)

「進むべき道はない、だが進まなければならない」

イタリアの現代作曲家ルイジ・ノーノが旧ソ連映画界の巨匠アンドレイ・タルコフスキーのオマージュとして創った曲のタイトルだ。時空を超えて、この言葉ほど今の我が国の状況を物語るものはないと私は強く想っている。

一国の経済成長のために必要なもの。それは3つである。「資本(capital)」、「人財(human resource)」、そして「技術(technology)」だ。これら3つの内、どれが欠けても健全な経済成長は生じない。だが過去30年近くにわたって続いてきた我が国ではこの三位一体が全くもって無視されてきたのである。

1973年に発生した第一次石油ショック。そこで追い詰められた我が国政府は、国中に散在していた「奇人・変人」とも揶揄される天才技術者たちを結集し、一つの賭けに出た。いわゆる「サンシャイン計画」である。化石燃料という意味での資源に乏しい我が国が最も恐れるべきは資源の兵糧攻めである。これが眼下で生じたことから、あらゆる偏見を超えたところでオール・ジャパンのエネルギー技術開発を急ピッチに進める。それがこの「サンシャイン計画」の主旨だったのである。

だがしかし、敵もさるものである。限りなく「無から有を生む」エネルギー技術開発にまで我が国がいよいよ手を届かせ始めたところで、我が国をバブル経済に陥れたのである。1985年の「プラザ合意」によって強制的な円高・ドル安へと転換させられた我が国は内需振興へと走り、国内不動産価格は高騰。地上げが横行する中で不労所得に酔いしれた我が国はこれら珠玉のエネルギー技術やその周辺で生まれてかけていたほぼ全ての技術を打ち捨て、マネー・ゲームに走ったのであった。

そして今、2018年。「平成」も30年が経過したが、あの時に太陽の様に光り輝くはずの我が国の(エネルギー)技術は無残にも打ち捨てられ、あるいはそれを開発していた天才技術者たちは再び棍棒で追い立てられ、悲嘆にくれる中、海の向こうの新天地へと旅立ったままなのである。「技術」、そして「人財」の流出はこの様にして生じたのであった。端的に言おう、グローバル・リーダーシップの中における奸計に我が国は騙され、負けたのである。決して偶然ではない。知恵と策略に敗北したのだ。

2012年に成立した安倍晋三政権はこの様に「技術」と「人財」が共に欠けているにもかかわらず、大量の「資本」をばらまき始めた。一時は一斉を風靡したマネタリズムによれば、マネーをばらまくと景気は良くなったかの様に見えるのである。事実、我が国では株価が上昇し、私たちはしばし安堵しかけた。だが、結局のところ何も変わらなかったのである。むしろそこで続いているのは「モノづくり大国」であったはずの我が国の醜態劇に他ならない。

爆発的な量的緩和によって、ただでさえ優遇されてきた我が国大企業は余りガネを抱えた。そのまま内部留保にまわしていたのでは株主がうるさい。そうだからといって社内に技術シーズ(芽)は存在しないのである。いや、存在していたとしてもそれが「珠玉の価値を持っている」と断言し、イノヴェーション・プロジェクトを推進するリーダーシップが根本的に欠如しているのである。そこでこれら我が国大企業はいずれも「社外」に投資先を求め始めたのである。にわか「ヴェンチャー・キャピタル」であるCorporate Venture Capitalブームの根源はここにある。

しかし所詮は目利きなどこれら我が国大企業に存在しないのである。いきおい目先で儲かりそうな、プレゼンだけは上手な広報・営業系の若手社長がそこでの投資先として選ばれることになる。そもそもこのCVC自身が広い意味での「節税対策」に過ぎないのである。根本的な技術革新と言う意味でのイノヴェーションとは無縁な、単なる一時的な仕組みビジネスに過ぎない「デジタル系ヴェンチャー」にばかり3000万円、5000万円といった「物事の本質を変えるには到底足りない金額のマネー」が集まり続けてきた。だが、結局のところ何も変わっていないのである。それもそのはず、「電子蚤の市」や、「ミドリムシ食品」で世界が変わるなど絶対にありえないからだ。

そもそもこうしたCVCを行うタイミングが間違っているのである。我が国大企業によるCVCは一段落した感がある。そもそも経済産業省が「ヴェンチャー囲い込み規制」としてのJ-Startupなどというものを始めた段階でもう終わりなのである。端的にいえばお得意の「新しい業界を法的・行政的な囲い込みよって創り出し、天下り先を創り出す」作業以外の何物でもないからだ。我が国を筆頭とした”デフォルト(国家債務不履行)”ドミノを目前に控えた今、これらCVCという「大企業のままごと」はブームを終えつつあるが、そうであるからこそ本当の”越境する投資主体”らは、我が国、そしてグローバル社会全体を根底から変える珠玉の技術を他ならぬ我が国で探し始めていることを、私たち日本勢はほとんど知らないのである。

前置きが大変長くなった。---私はこうした”越境する投資主体”とタグを組むことを通じて、「救国のテクノロジー」を育成する事業をここに来て始めた。カネに色はない。端的にいって”越境する投資主体”の側に感情的な要素はなく、冷静な計算に基づき「今だからこそ、日本勢が抱える根源的な技術革新のシーズに投資すべき」と判断したに過ぎない。そうした判断の場にたまたま私は居合わせた。そもそも「救国のテクノロジー」だけが我が国、そしてグローバル社会全体をますます悪化する状況の中から救い出してくれると信じ、これまで行動してきた私である。二つ返事で協力を申し出、現実に至っているのだ。

私たちのチームは世間で騒がれている、「キラキラ系」ヴェンチャー企業に全く関心はない。見せかけのデジタル・ビジネス、あるいは本当は何ら新味がないことをMITを含め専門家たちは皆知っている人工知能(AI)開発などである。むしろ関心があるのは以下の3つとその周辺である:

―エネルギー

―電池

―革新的な農業関連技術

―斬新な廃棄物処理技術

これ以外の分野に全く興味がないわけではないが、簡単に言えば”越境する投資主体”の資金管理者が長年にわたり素朴に抱いていたこの様なイメージを現実にしてくれる技術を探しているのである:

「世の中には魔法のブラック・ボックスが必ずある。そしてこのブラック・ボックスを通せば、これまで解決不能と想われていた社会的な課題が解決される」

私の連載動画コラムにてこれまで複数回呼びかけてきたため、既にたくさんの応募・情報提供を頂いている。そして実際に予備的デューデリジェンス(精査)のフェーズを無事に超え、3か月程度かかる外部専門家たちによる投資判断のための精査(DD)にいよいよ突入したものもあるのだ。だが、私は「我が国に潜む本当の技術革新はこんなものではない」と信じている。そこでこのブログ記事を通じてあらためて技術開発者であり、経営者である各位へ応募を呼び掛けることにしたというわけなのだ。「我こそは」と想う技術開発・経営者はこちらをクリックして今すぐ応募頂きたい。

ただしその際、ぜひご注意頂きたいことがある。我が国ではこれまでこの手の「革新的技術」を食い物にするブローカーが暗躍してきた。曰く「カネが天から降ってくる」かの様な詐欺的な言説に翻弄された技術開発・経営者たちは、それほど詰めて考えずとも、「技術が素晴らしければ必ずカネはふんだんにもらえる」と信じ込んて来たかというのが実態なのである。しかし、そんなことは絶対にありえないのである。グローバル・マーケットに直結する「生きた」リスク・マネーを手にし、いよいよ自らの技術をもって世界を変えていくためには、それなりにまずは「詰めた思考を数値ベースで行うこと」が不可欠なのである。

具体的には以下のことを行って頂ければと想う:

―技術の概要を「文系である素人にも分かる様に一言で説明できる」準備をすること。専門用語や記号・数式を羅列しても意味がない。要するにインプットは何であり、いくらかかるが、これに対してアウトプットは何であり、どれくらいの付加価値を持ったものであるのかを端的に説明してもらいたいのである

―当該技術をもって制することが出来るマーケットは国内・国外において潜在的にどれくらいの規模なのかを数値で語ってもらいたい。理系である技術開発者は往々にして「いい加減な推定は出来ない」と思考を放棄する。だが、いくら良い「売り物」をつくっても「売り方」がなければ世に出ることはないのである。この部分について思考と行動を伴っているのかを資金管理者はまず精査するのだ

―数億円から時には数十億円以上の投資が行われるにあたり、それを受けての技術開発・事業運営を適切に執行できるだけの企業としての体制が整っている、ないしは整える具体的な段取りが見えているか否か。技術開発・経営者はしばしばこの意味でのガヴァナンスを軽視する。そして「素晴らしい技術はオレが創るから、あとは誰かが売ってもらいたい」などと嘯くのである。だがはっきり言っておこう、この意味での経営リーダーシップが無い人物が創った技術は未来永劫、日の目を見ることはないのである。ましてや「企業」としての受け皿の無い技術開発・経営者に対してリスク・マネーの女神がほほ笑むことは一切ないのであり、またそこでは相当な事務的作業(ペーパー・ワーク)が発生することも認識しておいてもらわなければならない

当該技術が我が国において芽吹かないのには大抵の場合、パターンがある。「資本(カネ)が足りない」「技術が生煮えである」というのと並んであるのが「我が国特有の社会構造の中で販促が妨げられている」というものである。だが、心配はいらない。そうであれば我が資金管理者が構築してきたグローバル・ネットワークを用いる形で当該技術による社会変革と十二分なほどの利益をもたらすビジネス展開をすぐさま行えば良いからだ。逆にいえば「ただそれだけのこと」なのである。

これまで数多くの「他薦情報」が寄せられてきたが、基本的にはそれらを顧慮はさせて頂いていない。なぜならば技術開発だけではなく、上記の意味での「経営者としての気合・資質」が当該技術によって現実を変える原動力になるからである。読者が仮に優れた技術開発を知っているというのであれば、ぜひその開発者であり経営者である人物に、ここで開かれた「窓」の存在を告知してもらいたい。そして基本的には技術開発・経営者ご自身から、これまで述べてきたことを十二分に踏まえた形でご一報頂きたいのである。あとは私からのガイダンスに則った形で作業し、いよいよ訪れる飛翔の時に備えて頂ければ良い。

「救国のテクノロジー」を以上のとおり急募する。願わくばシンクロニシティの女神が吾らを「次」へと誘うテクネ―へと誘わんことを。

以上

2018年12月15日 東京・丸の内にて

原田 武夫記す

 

 

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