2022年米国勢中間選挙イヤー幕開け!~選挙の行方と米国株への影響を予測する~(IISIA研究員レポート Vol.68) – IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 – haradatakeo.com
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2022年米国勢中間選挙イヤー幕開け!~選挙の行方と米国株への影響を予測する~(IISIA研究員レポート Vol.68)

去る2021年12月19日(米東部時間)、ジョー・マンチン民主党議員がFOX NEWSとのインタヴューにて、バイデン政権の経済施策の中核を占める約2兆ドル(約228兆円)規模の税制・支出法案に反対すると答えた。保守派の強いウェスト・ヴァージニア選出のマンチン議員は、2021年TIMES誌の「世界で最も影響の強い100人」に選出されるなど、ワシントンで最も影響力がある議員として注目を集める(参照)(参照)。マンチン議員が選出されたウェスト・ヴァージニア州ではトランプ前大統領が70パーセント以上の得票を獲得しており、マンチン議員はこういったトランプ支持者層の取り込みを意識した保守的な政策を打ち出している為、今回の民主党への造反はある程度予見されていた。

 

なぜここまで一人の反対票がニュースになるのか。それは、2020年に行われた上院選を経て民主党が4議席増やし、両党同数の50人となり法案審議で両党同数の場合でも、ハリス副大統領が1票を投じることで過半数可決のめどは立ったものの、逆に議員のうち1人でも造反すればいかなる法案も成立が困難になるという、バイデン政権にとって“綱渡り”の状況が上院では起きているからである(参照)。

 

こういった選挙を意識した各議員の戦略が過熱する背景として、2022年11月に迫る中間選挙がある。ここで注目が集まる中で、米国勢の有名サイトは軒並み「2022年の中間選挙で共和党が上院議員で多数派になる」と予想しており、その傾向は2021年10月以降顕著になってきている(参照)

 

(図表:バイデン大統領は歴代大統領の中で低い支持率となっている)

(出典:BBC

 

こうした賭けサイトへの注目が集める理由としては、ヴァージニア州知事選の結果を世論調査の下馬評に反して予想したということもある。民主党は近年、ヴァージニアでは安定した地盤を固めてきたことで、マコーリフ元州知事がポジションを死守し、続投すると見られただけにバイデン政権の動揺は大きかった(参照)。このヴァージニア州知事選挙は、稀にみる接戦で、最終的には民主党候補のテリー・マコーリフ元州知事が48.7パーセント、共和党の新人グレン・ヤンキン氏(現知事)が50.6パーセントという僅差での勝利となった(参照)。先述のとおりに世論調査では、10月末日まで民主党候補の勝利で推移していた。実は大手賭けサイトのPredictitでも、米国勢全土からの入札でいえば民主党候補の勝利が多数派だったが、地元のバージニアビーチではヤングキンが0.66対0.37で勝つと予想されていたのだ(参照)。

 

今後、賭けサイトで動く金額が増大していけばいくほど、世論調査よりも正確に選挙の動向が予測できると見込まれているとノースカロライナ大学の研究は示している(参照)。米国勢マーケッターも「世論調査よりお金が絡む予想の方が信頼できる」と発言し、『Forbes』など金融誌も注目している記事を出している(参照)。

 

(図表:中間選挙と大統領1期目支持率の相関)

(出典:The Washington Post

しかし、2022年の中間選挙、さらにその先の2024年の大統領選挙は不確定要素が多すぎる。トランプ前大統領を旗印として戦うとみられる共和党だが、ここで動きが怪しくなってきた。トランプ前大統領が新党結成を画策しているとABCニュースの記者が、共和党の内部事情の暴露本を去る2021年11月に出版した(参照)。この本の内容を、トランプ前大統領の勢力は否定しているが、メディアは常にその可能性を喧伝し続けている。

 

共和党はトランプ人気に大きく寄りかかり続けている。トランプ前大統領は大口寄付者にとっても魅力的で、先月フロリダで行われた全米共和党議会委員会の秋の資金調達パーティの主賓を務め資金調達力を見せつけた。ここからも、トランプ前大統領の脱税にまつわる裁判の費用を共和党が負担すると宣言したのもうなずける。現在、トランプ前大統領は議会議員や党の役員を勤めているわけでもなく、係る脱税行為の嫌疑も大統領任期以前のものにもかかわらず共和党の予算をそこに割くという(参照)。共和党の戦略は良くも悪くも、トランプ前大統領の動向に大きく左右される。これは非常に危険なリスク要因となり得ることは言わずもがなだ(参照)。

 

民主党内にも、バイデン大統領の不人気以外の不確定要素がある。2021年12月現在で既に、14名の現職議員が中間選挙に出馬しない旨を表明しており、これは各選挙区で新候補者の活動を行っていく上で不安要素になっている(参照)。また、自身もカトリック教徒であるバイデン大統領にとって難しい問題は「中絶論争」だ。接戦の選挙区において、政治的なスタンスよりも、宗教的価値観の相違で「中絶禁止」を推し進める共和党に傾く層が出てきているという(参照)。

 

民主党の支持者層にも変化が見られている。歴史的には、マイノリティー層は民主党支持である傾向があったが、ピュー・リサーチ・センターの調査によると、7~9月に黒人有権者のバイデン支持率は18ポイント低下している。さらにヒスパニック系有権者で16ポイント、女性で12ポイント低下している。民主党支持層の間でも支持率は13ポイント低下している。大統領選挙を勝利に導いた無党派層の支持率54パーセントか42パーセントへ低下している(参照)。

 

さらに、サンダース議員を中心に、左派的な政策の施行を推し進める層と民主党内の穏健派や保守派で分断が起きている。オカシオ=コルテス議員など、若年層に人気の女性議員も、中道左派と呼ばれていたが現在はサンダース議員と協力し左派急進派として力をつけてきている。

 

こういった今までの米国勢の二大政党制自体が揺らいでいる状況をStratforの前チェアマンであるジョージ・フリードマン氏は早くから予測していた。自身の展開する米国の制度的サイクル理論に当てはめて、現在のサイクルの終盤期に行われる2024年の大統領選は「古い政治」の幕引きを象徴する場になると持論を著作にて展開。今後、無党派層を始めとしたジェネレーションZ(ミレニアル)世代など、既得権益に縛られない層が新生党を打ち立てる可能性はゼロではない。実際に、リバタリアン党と緑の党という政党が若い世代の問題意識に寄り添った政策を打ち出しており、今後中期的な目で見れば二大政党制を揺るがすことも考えられる(参照)。

 

2022年の中間選挙の結果によっては、バイデン・ハリス以外の候補の登場や、トランプ家の子息も参入しての乱戦となった場合、プロテストへの兵力導入など米国勢そのものが地政学リスクの「塊」となる危険性があり、それをマーケットへと影響を与えていく可能性を踏まえ、今後も中間選挙への二大政党以外の動向も注視が必要な展開。

 

 

グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー

横田杏那 記す

 

前回のコラム:石油価格急落と円高の行く末 (IISIA研究員レポート Vol.65)

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