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我が国における人型ロボット研究がもたらす未来(IISIA研究員レポート Vol.9)


「ロボット」と聞くとどのようなイメージが思い浮かぶだろうか。

どれほどリアルかはともかく、人に似せた姿を思い浮かべる人も多いだろう。

(図表:An artificial hand holding a lightbulb)

サムネfor今日の言葉

(出典:Wikipedia)

我が国ではロボット研究の中で多くのヒューマノイド・ロボット(人型ロボット)が生み出されてきた。産業技術総合研究所、東京大学、大阪大学をはじめとする研究機関、またASIMOで有名なHONDAをはじめとする多くの企業によって研究がなされており、ヒューマノイド・ロボットの開発数は我が国が圧倒的に多い(参考資料)。

なぜ我が国においてヒューマノイド・ロボット開発がそれほど活発なのだろうか。

そこには宗教的価値観が大きく影響していると考えられる。我が国においては「八百万の神」といった万物に神が宿るという思想が広く根付いている。他方でキリスト教をはじめとする一神教では創造主としての唯一神を信仰し、自らを被造物として捉える。こうした信仰の下では「人を模した」ロボットを作るということには、神の領域に踏み入るものと考えらえるため未だ反発は根強い。

技術の発展は目覚ましく、ヴァチカンもそれを無視することはできない。第266代教皇フランシスコは2019年3月に“Roboethics: Humans, Machines and Health”と題したワークショップを主催した。開会に際しての書簡の中でフランシスコ教皇は「画期的な変化と最先端の技術を理解し、それによって人の本質的な尊厳を尊重し促進しつつ人間のためのそうした技術をどのように配置するかを決定することが急務である」と述べている(参考記事)。

しかしヒューマノイド・ロボット開発で知られる大阪大学の石黒浩教授は、同ワークショップにおいて「1万年後には人間は生身の人間として認識されなくなる」とする仮説を発表した(参考記事)。地球や太陽において何らかの事態が発生し地球で生きていくことが出来なくなった場合に宇宙で生きていくことができるよう、人間の身体を無機物に置き換えることで不老不死を実現することが人類の進化の究極目的であるというのである。こうした開発には「創造主」を代替する役割を人間が担うものとして反発が容易に想像される。2018年にはThe European Group on Ethics in Science and New Technologies (EGE)がAIとロボット工学の進歩によって提起された緊急かつ複雑な道徳的問題を強調した報告書を発表している。ここではロボットが権利を持つという議論が強く否定されている。

他方で我が国におけるヒューマノイド・ロボットの研究は、各国が直面する問題に対する解決策として注目されてもいる。石黒浩教授の前述のような意図はともかくとして、一般的にヒューマノイド・ロボットの意義については、例えば高齢者の介護のような人間に直接かかわる作業を人間に代替して行う際により親密感や安心感を与えることが強調される。

我が国では他国に比べ移民の受け入れが少なく、不足する労働量の供給源としてヒューマノイド・ロボットの活躍が期待されている。

急速に進む少子高齢化、人口減少といった日本が直面する問題は多くの国が抱えている、もしくはこれから抱え得る問題である。この意味において自国内で労働力を供給する方策としてのヒューマノイド・ロボット開発は他国にとっても同様の問題を解決するにあたり注目すべき議論なのである。日本におけるヒューマノイド・ロボットの活用と倫理にまつわる議論の行方は世界全体としてのヒューマノイド・ロボットの未来を方向付けるものとなるだろう。

 

グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー

佐藤 奈桜 記す

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