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『部門を超えたダイナミズムを見据えて、各組織の役割を考える』(連載「現場課題を乗り越える思考と行動のフレームワーク」その3)

本コラムでは経営コンサルタントとして国内外の顧客現場で直面した筆者の実体験を基に、「現場課題を乗り越える思考と行動のフレームワーク」について取り扱います。前回は『ものさしを持って利害関係を調整する』と題しまして、事業現場では取引先との利害調整を含めた“突破力”が必要で、巧みなレトリック・思惑に翻弄されないためには常に“判断のものさし”を持って動く必要があると述べました。

第3回目の寄稿となる今回は『部門を超えたダイナミズムを見据えて、各組織の役割を考える』について書かせて頂きたいと思います。

本テーマのような“部門間連携”を取り扱う書籍やコラムは多くあり、多くが営業部門とマーケティング部門の軋轢やそれを解決するための協働案について取り上げています。事業企画とフロント営業組織がどのように足並みを揃えていくべきかという内容です。 (往々にして経営企画のポストを設置し、部門横断的に管理すべき…といったありふれた結論で終わりがちです。本コラムでは横串部署を作ったとしても部門の利害調整が解決できない難解なケースを扱います)

今回はいわゆる戦略~実務間での一貫性についてではなく、部門間での利害調整について取り上げます。卸事業会社の販売部門と調達部門を例にとり、“売り”と“買い”が有機的に連動することが求められる組織現場をモデルケースとします。戦略レイヤーと実務レイヤーの整合だけでは不十分でなく、異なるミッションを持つ現場部門がいかに役割分担を適切に行い、共通の目的に向かって力を合わせるかを考える必要があります。

第1~2回はゴール定義や判断軸を元にした戦略寄りのテーマを扱い、第3回から徐々に現場での“実行”に軸足を移してコラムを展開していきます。皆さんも「モデル企業A」を牽引するマネジャーになったと思って、考えを巡らせてみてください。さて、下記のモデル企業Aの現場ではどういった動きが求められるでしょうか。

 

【モデルケース説明】

●モデル企業A -主力事業:
☑B2B卸事業、(今後のターゲットは海外新興国の小売事業者・小売店舗)

●モデル企業A -事業ミッション:
☑中間層のポテンシャルが高いアジア新興国に対して、セグメントに訴求できる商品を調達し、販路を拡大して商品を卸す

モデル企業A -事業推進組織:
☑卸先を開拓する営業部門(売り)
・販売・営業機能を持ったフロント組織。各国の市場ニーズ調査もミッションとして持つ。(「海外調査部」など専門特化した部門などは存在しない)

☑訴求商品を集める調達部門(買い)
・商品ラインアップを考え、色々な既存の取扱商品を集約・セレクションするがモデル企業A調達部門の役割。(*注: モデル企業Aはメーカーではないので、自社製品を単に販売すればよいというのではなく、提案先に何の商品を持って行くのか?から考えないといけない)

 

グローバルを掲げて新規販路を開拓するフェーズで特によく起こりがちなのが、下記のような課題です。(海外企業の日本進出失敗ケース等でも散見されます)

海外新規開拓を進める事業初フェーズ:

☑調達側は「販売国での商品の売れている特徴/傾向、そもそもの消費者ニーズを営業部門が提示してくれないので、販売先に提案する商品なんて選定できない。調達活動するにあたって綿密な市場調査を行い、営業側から要件をしっかり出してほしい」と言って、営業側を牽制する。

☑営業側は「販売先のニーズなんて売ってみないと分からないのだから、日本での人気を見てとにかくまずはコバンザメ戦法で営業先にアタックしないと進まない。業態や価格帯によっても商品のニーズなんて変わってくるんだから、はやく商品調達を先行して進めてほしい。調達が進まないことが何よりもボトルネックだ」など調達側に言い返す。

上記は特にグローバル進出を目指す卸企業だけに当てはまる課題では決してない。事業が順調にいかない企業では往々にして部門間で言い合いが続く。調達側は販売側に対して「売り方が悪い」、販売側は調達側に「商品調達の品質が悪い」など言い合って更に溝が深くなってしまいがちです。モデル企業Aの営業部門も明確な販売戦略を持っていればそれほど深刻ではありませんが (=注力する販売国・取引セグメントを定義して中長期的なロードマップと営業活動計画を立てて行動する等)、上記の営業側の発言にあったとおり「まずはコバンザメで」というスタンスだと、行き当たりばったりの動きになりがちです。

モデルケースでは「市場性を把握するというお題」に対して、営業側がミッションとして持っていながらも優先度を下げており、それを皮切りに調達部門が機能しなくなる、という事態が起きています。悪循環を断ち切るためにはどうすればよいでしょうか。

☑ 「まず何から始めるべきか?」という全社的なアプローチを振り返り、市場調査がキーになると営業部門に再認識させる必要あり。(いわゆる営業部門に対して”できていないことに着手させ、改善を求める”こと)

☑しかしながら、海外進出初期のように市場がまだ見えていない段階であれば「市場性を把握する」という目的達成には   限界があるのも確かだ。調査会社のレポートをヒントに最低限の市場知識を持つことはもちろん必須だが、各国現地のリアルな声は把握しきれないだろう。

☑そもそも、「営業部門は特定商品を営業先まで持って行って商談するイメージ」を持っているのだが、進出初期ではそれに拘る必要はない。最初の商談で「販売先の調達ルートや調達商品で抱えている課題をヒアリング」して、それを何社も積み重ねていき、時には調達部門を商談に同行させて、商品ラインアップの高さや調達スキルをアピールさせていくということだ。

☑いきなり事業初段階から営業先に対してラインアップした商品をマッチングさせることは難しく、また調達部門・営業部門ともに役割を固定してしまうことでこの悪循環が生まれていたため、このような役割の再定義が必要。

モデル企業Aでは、実際にどういったステップを各部門が踏めばよいのか分からず、結果、成果に結びつかないといった課題に直面しています。各部門がどういうステップで業務をリレーして事業を動かすべきかについて認識を合わせること。既存のステップでは動かしにくい現状があるのであれば、どこに注力すべきかを現状を見ながら決めた上で、組織の役割を実情に合わせて変えること各部門という組織というハコをリセットしながら柔軟に役割を変えていく必要があるのです。

組織ミッションまで遡って再整理しようという考えまでにはなかなか考え付きにくいですが、むしろそこから軌道修正しないと現場は機能しにくいという構造だと割り切ったほうが良いでしょう。実際にどうやって部門間の循環を生むか?どういったステップを踏んで進んでいくか?という視点で、そこから各部門の役割を事業のフェーズに合わせて変えていくべきです。

(モデル企業Aにおいて組織の役割を固定したままだと、営業部門が「商品ハードでのニーズ把握から設計する」という本来の戦略をやり切らず、販促施策やプロモーションに大きく方向転換してしまいがちです。「注力セグメント×選定商品」のマッチングに対する答えから離れてしまい、戦略からどんどん乖離してしまうのです)

実際にどうやって部門間の循環を生むか?どういったステップを踏んで進んでいくか?という視点で、各部門のミッションの定義を決めていくべきです。一端を担えるリーダーこそ、各現場で求められます。役割が先に決まってしまって部門間で軋轢が生まれている、という状況から組織が一番機能するダイナミズムを常に考え、その上で役割を再定義して、事業のゴールに向かって各部門が役割/業務を推進するという変革ができると現場での付加価値が最大化できるでしょう。

本コラムでは「ちょっとした視点の切り替えが生む大きな変化」をご紹介しておりますが、第3回のコラムも少しでも読者の皆様のご活躍の一端となれば幸いです。

 

【執筆者プロフィール】
大橋祐介(おおはしゆうすけ)
慶應義塾大学卒業後、経営コンサルティング・ファームに参画。戦略、マネジメント、オペレーションを総合俯瞰したコンサルに価値を置く。国内外を跨いだ 数々のプロジェクトに従事し、直近では合弁会社設立や新規事業立ち上げに参画。アメリカ発祥の国際的非営利教育団体Toastmasters Internationalにてエリアディレクターも務める。

 

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