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「United in your team」(“チームでテイストを合わせる”)

特別コラムニストの大橋祐介です。第9回は「United in your team」(“チームでテイストを合わせる”)と題しまして、日本企業の現場でよく見られる課題を例に挙げながら、チームの中で上司と部下がどういった協働をしていく必要があるのかという観点でお伝えしていきます。
第7回では権限委譲の重要性(自分の業務をうまく部下に委任し、リーダーはより難易度の高い業務に注力する)についてお話し、第8回では機動力を高める上で経営と現場の間で必要な連携の仕方についてお伝えしました。今回は、現場チームの中での上司・部下の協働の仕方に焦点を当てます。

▼日本企業の組織でよく見られる課題の一つ:

「上司の意見に同意していない場合でも表面上はあたかも同意したように見せる部下が、(本心は乗り気じゃないので)指示に対して十分なコミットをせず、結果としてチームは成果を収められない」というケース
このケースでは、部下は本心では同意していないのにも関わらず、上司の意見に対してその場では「合意(=迎合)」した態度を見せます。ですが、その指示を受けて全力で推進することはせず、Ignore(無視)してしまうのです。何らかの理由をつけて指示されたことが(外的要因のせいで)遂行できなかった、と処理してしまうのです。
現場メンバーは上長に対する不満を裏で吐露して結束したり、上長に共有せずに自分一人で別の案件を(秘密裏に)動かしていたり、することが恐ろしいことに多くあります。上長には報告せずに動かし、形になったところで既成事実を作ってしまうのです。中には、極端なケースだと「上長に抵抗することに価値がある」と現場メンバー間で言ってしまうことがあります。
これは私個人のプロジェクト経験を元に書いていますが、読者の皆様も一部頷かれる部分もあるかと思います。外資系企業の欧米人エリート(ヴァイスプレジデント級以上)でも、同様の課題に悩まされ、個人的に相談に乗ったケースも何回もあります。特に外資系企業ですと日本人のアソシエートのマネジメントに苦労して、母国に帰ってしまった優秀な外国人も少なくありません。
このような状況は、「肌感(テイスト)が合わないと、正面から向かい合わず妥協点を探りに行かない」ことだと言い換えることができます。極端に言うと部下が上司を「Ignore」することが許されている環境だと見ることもできます。(これを短絡的に”日本人が…!”と一般化するつもりはありません。私は日本人の気質である”衝突を避ける”という良さが生かせていないだけだと考えています)

農耕民族的な「和」を尊ぶのはもちろんチームとしては大切なのですが、このような結果を招かないように、しっかりと上司と部下の間で“テイストを合わせる”作業を踏む必要があります。刷りあわせをしながら同じ方向にチームを向かせるべきなのです。

「部下に納得感を醸成させることに徹する」ステップを明確に踏むということです。初段階のうちに、高頻度でコミュニケーションができれば上司と部下の溝は大幅に縮まります。

これは初期段階から動くことで解決できる課題であり、対処することで部下の不満も蓄積されません。

・上司の意見や趣旨をしっかりと細部まで理解させる場を持つ
・具体的なイメージに落とし込むステップは上司と部下が討議しながら進める
―部下は少ない情報量の中で悶々としながら、悩みつつ上司の意見を汲み取ろうとします。上司の意見を言葉の節々から読み取らせて詮索させる作業は意味のないストレスを生みます。
―余談ですが…「上司の考えが部下の誰にも理解できない困った状況なため、その咀嚼にコンサルを雇う」…という案件も少数ですが存在するのが実情です。(このような”寄り添い”プロジェクトは顧客の散漫な考えを整理し、それを資料化して終わり…という案件です。本来の第三者的な視点での価値提供が求められないことが多く、コンサルファームの中では良質でない案件だと位置づけられることが多いです。これらの案件は私の本稿での主張に大きく逆行するものだと捉えてください)

・材料(情報)を全て与えた上で、不明点を質問させる
―部下に質問をする機会を与えることで、部下自身の考えを上司にぶつけさせることが   できます。上司の仮説に対して、自然な形で「狩猟民族的な攻め」をする機会を部下に   与えるということです。
―定期的な刷りあわせを怠ると、部下が出してきた検討結果や報告が上司のイメージと   大きく異なるものになることが多く、結果両者が損をしてしまいます。

・部下がカバーできなかった部分を上司が補填する
―頻繁に進捗を確認して、部下に任せている”推進”に対してもフォローする。全体の趣旨  を理解させ、足りない部分を補填することで指示されたことに対して納得感を持って作業  をさせる必要があります。

 

全体の趣旨を分かりやすく共有すること、そのために、初期段階で高頻度に具体的なイメージ合わせを行うことで本課題は解決ができます。

シンプルかつ当たり前のように思えて、これを徹底してできる組織は縦のチーム力(上司と部下の協働力)が高く備わっていると断言できます。上司の皆様はぜひ上記の観点を参考にしながら、部下へのアプローチを変え、部下は上司に対して対面で同じステップを提案してみてください。

お互いが「Ignore」することなく、同じテイストでお互いが納得して「United(連帯する)」ことに拘ることで皆様がゴールを達成されることを心より願っております。このコラムが読者の皆様の活躍の一端となれば幸いです。

 

 

【執筆者プロフィール】
大橋祐介(おおはしゆうすけ)
慶應義塾大学卒業後、経営コンサルティング・ファームに参画。戦略、マネジメント、オペレーションを総合俯瞰したコンサルに価値を置く。国内外を跨いだ 数々のプロジェクトに従事し、直近では合弁会社設立や新規事業立ち上げに参画。アメリカ発祥の国際的非営利教育団体Toastmasters Internationalにてエリアディレクターも務める。

 

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