「グローバル進出する日本企業が直面する課題」~第28回 現地法人人的管理の問題事例 – IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 – haradatakeo.com
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「グローバル進出する日本企業が直面する課題」~第28回 現地法人人的管理の問題事例

日本でも大雪が降る地域も多く厳しい寒さが続いているようですが、欧州でも先週から大寒波が襲っており零下の日々が続いています。世界的に「寒冷化」の波が押し寄せているようで、春が待ち遠しいですね~。

さて、今回は日系企業の海外拠点での人的管理の難しさについて、極端な事例を挙げてみたいと思います。

まずはA社。欧州地域での販売が芳しくなく、現地でのコストダウンが不可欠となっている同社では、少しずつ本社からの出向を減らし、現在では欧州本社以外にはほとんど駐在員がいない状況。社長も現地採用で、極端なリストラ策を断行中のようです。例えば、産休から戻ってきたばかりの女性マネージャーを誰が担当していてもうまくいくはずがないと思われるプロジェクトの担当に配置換えし、結果が出なかったことを理由に数か月後にリストラ等。人事と社長がタッグを組んでおり、どちらかに嫌われればリストラの影がちらつく社内環境のため、誰もがサービス残業を暗黙に強いられ、ノートパソコンを配布されているものだから、休日返上で家でも仕事をするという悪慣行も横行し、かといって誰も誰にも文句が言えないという鬱屈した雰囲気が充満する中で、黙々と仕事をするのに耐えられず辞めるか、ひたすら我慢するかの二つに一つ。どこのブラック企業かと思うような体制が敷かれている、実は日本では一部上場企業の海外拠点。あまりに状況がひどいので、A社で働く現地採用日本人社員が欧州本社に出向してきている駐在員に話をしてみるも、「ひどい話だね」と相槌は打つものの、関わりたくないという本音が見え見えの態度で、全く改善は見られないとのこと。

競争力が落ちているからリストラ策に走らざるを得ないのは分かります。それでも、日本を代表する一流企業であるならば、きちんと本社の目のいく形で、説明責任を果たせるような行動をして頂きたいのが本音です。法律すれすれのパワハラ紛いのリストラを断行するのに、おそらく日本人ではそれが出来ないから雇われ社長に肩代わりをさせるといったような行為を、本社の意向の下で行っているのであればそれはそれで問題であるし、本社の意向とは剥離してしまって実態がこのようになっていしまっているとしてもそれは大きな問題です。一度不祥事が明るみに出れば、グループ企業で起きたことでも、名前が傷つけられるのは本社である日本企業の名前であり、威信であることを忘れずにしっかりと関連グループ企業のマネージメントを行っていただきたいと思います。

次はB社の事例。A社とは反対に要職は日本からの出向駐在社員で固められているが故に、明らかに問題があり、正当な手続きに則って解雇が可能な人間であっても、その決断ができないタイプの企業。果ては、本社役員から解雇要求まで出る騒ぎになっても、後1年待ってほしいと、自分が海外拠点からいなくなるまでは余計な波風を立てずに過ごし、如何なる責任も負いたくないという逃げの姿勢の一手を取るようなトップ陣に、駐在もローカルも辟易してしまい社内のモチベーションが下がるばかりでなく、折角本社に派遣してスキルアップさせたような有能な若手からさっさと見切りをつけて転職してしまい余計に混乱を招く事態を引き起こしてしまう状況。さらに追い打ちをかけるように、明らかに問題があるような人物は転職先さえ決まれば後は野となれ山となれと自己都合で退職する場合も多く、そうなったらそうなったで急な退職に対応できず、さらに現場は混乱と、火に油を注ぐ事態に。トップレベルが、所詮数年しかいない海外拠点のマネージメントと真剣に向き合わず、決断しなかったがために、禍根が何時までも燻ってしまう違う意味で残念なタイプのようです。こちらも一部上場の大企業。

A社とは正反対に、出来ればリストラ等の厳しい対応はせず穏便に物事を済まそうとするがあまりに、一つの膿を出す前に膿が広範囲に広がってしまい、そこで勤務している人財は有能であればこそ、こうした状況に、ひいては日本企業に失望して去ってしまい、日本企業にとっての損失となるケースです。そればかりか、こうして日本企業を去らざるを得なかった若手人財が今後増えていくようなことがあれば、日本企業の評判が少しずつ地に落ちていくことになるでしょう。こうした状況を防ぐためにも、海外拠点のマネージメントを疎かにしてはなりません。自社ばかりでなく日本企業全体の信用に波及するのですかから。

ここに上げた事例はもちろん極端な事例ではありますが、文化の違いもあり、多かれ少なかれ問題を抱えている海外拠点は少なくないかと思います。今一度、海外拠点のマネージメントが本社の意向に合った形で、また将来的なビジョンを描ける形で行われているかどうか本社の側からも確認する必要がある点、心に留めていただければと存じます。

 

プロフィール

川村 朋子

元外交官。大臣官房儀典官室、在フランス大使館、在ガボン大使館にて勤務。
現在は在仏日系企業に勤務。留学、外務省時代、現在と在仏歴通算15年以上。

リヨン第二大学歴史学修士、リヨン政治学院DEA(博士予備課程に相当)取得
主な論文に「アンシャンレジーム期のリヨンの倒産・破産状況」「日本の軍事問題の現状」がある。

 

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