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「グローバル進出する日本企業が直面する課題」~第17回 現地情勢の理解と情報収集

 

労働法改正に反対するストライキとデモがいまだに続いていますが、誰もがその状況に慣れつつある今日この頃。ストライキとデモと欧州選手権のフーリガンによる乱闘騒ぎと警察も休む暇がないほどフランス各地で細々とした問題が起きていますが、このまま大きなリスクが発生しないことを祈るばかりです。

さて今回は、現在のフランス情勢が日本の本社側にも駐在員に理解されておらずそれが業務にも支障をきたしている状況に、現地情勢の理解の重要性をしみじみと痛感したことから、このテーマについて書かせていただくことにしました。

労働法改正法案に対する全国ストの回数は3月から二ケタに達し、個人的にもちょうどバカンスから帰る日とストの日が重なり電車が運行されなかったらどうしようとハラハラしたり、ガソリンの残っているスタンドを探し彷徨ったり、渋滞がなければ30分の距離を大渋滞で2時間運転する羽目になったりと、日常生活に影響を与えているこのスト・デモなのですが、当然仕事上にも多少は支障をきたしてきています。それを最低限に抑えるためには、常時情勢を理解していなければならないわけなのですが、ここはフランス。当然第一情報はフランス語でしか入ってこないわけで、情報を求める相手が悪ければ必要な情報が入らないばかりでなく、情報が錯綜して余計な混乱まで引き起こすような事態が起こります。

ちょうど日本からフランスに出張予定であった出張者が、エールフランスのストライキがある旨旅行会社から聞き及び、そのやり取りをしていた時点で週末のストは解除になっていたにも拘らず、現地に確認することもせずそのまま旅行会社の言うことを信じ、わざわざドイツ経由に便を変更し一泊してからフランスに入るという大変な思いをして出張に来たことがありました。一言現地に状況を確認すれば、出発の1日、2日前に慌ただしくスケジュール変更することもなく、出張者側も受け入れ側も余計な労力を使わず、協議もより万全の態勢でできたはずであるのに、情報転達体制が整っていないばかりに「ムダ」が生じている事例です。それとは反対に、大規模国際会議が開催された際、パリの北半分は通行止め、パリ環状道路やパリ市内の道路も通行止めとなるような日をパリ到着日とするようなスケジュールで出張者がパリに来たようなこともあり、前もって情報転達しスケジュール調整が出来ていれば「ムダ」を省けた例はいくらでも挙げられます。

つい最近のことですが、14日、フランスでは労働法改正法案反対の大規模な全国ストライキ、デモが行われました。こうした全国ストの場合は3-4週間前には日にちが決定されているにも拘らず、本社からの出張者スケジュールとして、一番抗議運動の激しいノルマンディー地域にある提携企業訪問を駐在員がこの日に計画しているといったことがありました。たまたまローカルの目に留まったためにスケジュール変更を行うことが出来ましたが、仮に気付かないまま出かけていたとしたら、数日間の出張という限られた時間の中でほぼ丸一日ロスするという非効率的な事態が生じていた可能性もあります。こちらの場合は、前もって大規模ストの連絡などは入っていたにも拘らず、現地で生活している駐在員でもストやデモの影響を的確に判断できないがために寸前で回避されたとはいえ問題が起きそうになった事例です。確かに、日本ではストで小田急線が1日完全に運休するとか、東名高速をトラック運転手が塞いで通行止めにするなどという事態が起こることはありえないでしょうから、フランス人のストのレベルが理解できないのは分からなくもないのですが、日々情報に接していれば理解も深まり、状況判断が出来ていたはずです。そのほか、現在サッカー欧州選手権がパリで開催されており多くのホテルが満室であるにも拘わらず、上層部の訪問が近々あるからとアポを取らずに部屋の見学をしにいき案の定断られるなど、情勢を的確に判断できていないがために無駄な工程を作り出している例は数多く見受けられます。

テロといった大事件でなくとも、デモやストばかりでなく、国際会議・大会の開催、災害被害等、生活ばかりでなく通勤や業務に支障をきたす可能性のある事由は枚挙に暇がありません。ただでさえ物事がスムーズに動かないことの多い海外においては、如何なる時もロスを最小限に抑えていくためのシナリオを練っていかなければ業務が滞るばかりであり、そのためにもあらゆる情報を常に収集、理解、判断できるだけの能力がグローバル人財には求められます。言語のハンディがあるからこれが出来ないというのは理由にはなりません。言語のハンディがあるのであれば、こうした情報を収集・判断するためのシステムを構築すればいいだけの話であり、それが出来てこそのグローバル人財です。海外拠点での業務を円滑に進めるためには、業務とは直接関係のない現地の情勢・状況を理解することも業務の一環として必須であることを肝に銘じた上で、仕事に臨む姿勢が重要といえます。

 

プロフィール

川村 朋子

元外交官。大臣官房儀典官室、在フランス大使館、在ガボン大使館にて勤務。     現在は在仏日系企業に勤務。留学、外務省時代、現在と在仏歴通算15年以上。

リヨン第二大学歴史学修士、リヨン政治学院DEA(博士予備課程に相当)取得       主な論文に「アンシャンレジーム期のリヨンの倒産・破産状況」「日本の軍事問題の現状」がある。

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