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率直に言おう。「我が国にはアフリカを支援している余裕なぞ全く無いのではないのか?」(原田武夫の”Future Predicts”. Vol. 49)

暑い夏が全く過ぎ去ろうとしない今月(8月)の終わりになって、横浜で「TICAD」が開催された。「アフリカ開発会議」である。メディアが石破茂総理大臣の動向として盛んに報じているので、その様子をテレビ等でご覧になられた方も多いのではないかと想う。

「外交」というとどういうわけか今や「安倍晋三」ではなく、「岸田文雄」ということになっているようだ。今回のTICADでは、岸田文雄・前総理大臣にも「出番」があり、主要なメッセージが国際社会全体、そしてアフリカ諸国に対して発せられた。曰く、「我が国はアフリカ諸国において合計30万人の人材育成にコミットする」と。

更に聞くところによれば、AI(人工知能)研究で知られるかの東大・松尾研が我が国政府からの委託を受けて、アフリカにおけるAI人材の育成に励むことになるのだという。同研究室に入って来るのは基本的に理系の学生諸君だと思うので、必ずしも「国際協力」を元来志していた学生たちばかりではないはずなので、実にご苦労さん、というのが率直なところではあるのだが、いずれにせよ若き学生諸君には奮闘してもらいたいと心からまずは思っている。

しかし、だ。2005年まで我が国外務省という「日本外交の最前線」にいた当初から、私がどうしても心の中で拭うことが出来なかった想いがあるのでこの場を借りて吐露することをお許し頂きたいとも思うのである。それは、「我が国の現状がここまで酷いというのに、いくら困っているからといって、アフリカにまで支援をする余裕が我が国に本当にあるのか?そんな余裕があったらば、今すぐ我が国国内に投資をし、支援をするべきなのではないか?」ということである。

外務省には経済協力局(略して「経協局」)という部署がある。その中でも現在、花形となっているのが「無償資金協力課」だ。実は私はこの課のナンバー2である「首席事務官(総括課長代理)」へと異動せよという内示を受けていたことがある。2004年12月のことだ。しかし、私はこのオファーを即座にお断りし、「独り立ちすること」を決めた。私をこの栄えあるポストへと推挙して下さったのは、後に外務省筆頭幹部の一人となる人物で、私がこのオファーを受けるのであれば私の「前任者」になるべき方だった。文字通り「竹を割ったような性格」であった同氏は、私のファイナル・アンサーを聞きつけるや否や、私がまだ所属していた北東アジア課になだれ込んできて、「おい、原田、どうしたんだ?何故なんだ?」と大声で言ってくれたことを懐かしく思い出す。

実は「あの時」既に思っていたのが他ならぬ”このこと”なのである。時は2005年のことだった。その直前に「不良債権処理の時代」が我が国には訪れており、既存の秩序が音を立てて崩れた、その矢先であった。当時は確かにまだ、「平成バブルの余韻」が我が国に残っており、「まだ何とかなるだろう」という不思議な安堵感が我が国社会において漂っていたことは確かだ。しかし、私はというと対北朝鮮外交という、我が国外交の急先鋒に立たされていた。その現場で確かにこの目で見たのである、我が国を抜きにして明らかに「次なる秩序」が決められて言っており、我が国はその中で確実に追い詰められるであろうということを。同時に我が国においては既に社会の随所で「錆びつき」が隠せなくなっていた。そうした状況をあたかも隠蔽するかの様に「ニッポンは大丈夫、必ずダイジョウブ」といった根拠なき鼓舞を語る歌謡曲が巷では流されていたわけであるが、そうした風潮をどうしても肯ずることが出来なかった自分がその頃既にいた。

そう、何を隠そう、これが私が弊研究所「IISIA」を立社するに至った原点の一つだったのである。すなわち、「なぜ、我が国が明らかに崩壊し始めているというのに、誰もそのことを語ろうとしないのか」「それどころか、外交の現場ではというと、バブル時代と同様の羽振りの良さで”国際貢献”の名の下に大量の税金が発展途上国に対して使われているのはなぜなのか」という問いかけである。これらの問いに対する「答え」を得るべく、我がIISIAを立社した、と言っても決して過言ではない。

そして時代は下って現代=2025年。我が国における状況はというと、全くもって当時よりも遥かに酷いものとなってしまっている。「株高不況」という言葉が端的に指しているとおり、金融・マネーだけが上っ面を滑っていくような中、「じっと手を見る」ことしか出来ない私たち市井の者たちはというと、明らかに後戻りの出来ない沼に入り込み始めている。若い世代を中心にいよいよ「このこと」に対する怒りが爆発しつつあることは先の参議院選挙の結果、既成政党が与野党共に党勢を明らかに減退させたことに示されているのである。ところが、こうした流れが加速する中にあってもなお、時の政権担当者やそのOBたちはというと、したり顔で「アフリカの皆さんに支援を」と大枚をはたき続けているのである。何という悪夢であろうか。あるいは・・・何という「酷い冗談」であろうか。

端的に言おう。私はかつて、「外務省不祥事」が世間を騒がしていた21世紀初頭において、その内部調査担当であった。その時、現場レヴェルで小耳にはさんだのである。

「政府開発援助(ODA)は援助を受ける国からの”要請”があって初めて行われるもの。その際、無償資金協力援助や技術協力では、かかった資金そものの返済は有償資金協力援助と違って行われない。ただし、これらを供与する国が指定する企業が受注をして良いという、世界的なルールが存在している。したがってこの点に目をつけた一部の与党政治家たちは、まず相手国に”国際親善”を名目にアプローチしてわたりをつける。すなわち、自らが懇意にしている日本企業が受けたい開発プロジェクトを我が国に対して”要請”してもらうのである。これに対して我が国政府は”要請”を受けて支援を実施するわけだが、当然、当該企業が受注する段取りはついている。結果、裨益することになるこの我が国企業は、陰に日向に様々な形で、口利きを国境をまたぐ形でしてくれた与党政治家たちの懐にカネをそっと入れ込むのだ」

今想うことはただ一つ。数年が経過し、石破茂政権が瓦解した後、「TICAD汚職疑惑」なる事件が我が国外務省を巻き込まないことを。端的に言って、我が国にはそんな大枚をはたく余裕など全くないのである。それなのになぜか・・・と考える時。「真実の扉」がまた一つ開き始める。そう想うのは、果たして私だけだろうか?

2025年8月23日 東京の寓居にて

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 ファウンダー/代表取締役会長CEO/グローバルAIストラテジスト

原田 武夫記す

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