1. HOME
  2. ブログ
  3. 情報の断片化から一歩抜け出す (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.18))

情報の断片化から一歩抜け出す (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.18))

“情報リテラシー”と聞いて、何を思うかべるだろうか。英語ではInformation Literacyである。「情報が溢れる現代には、必要な情報のみを取り出す能力が必要だ。」 などという言葉は聞き飽きたかもしれない。「そんなことは言われなくても分かっている。」そんな声も聞こえてきそうだ。

しかし、これが実際にできる人は少ない。何せ「情報」の沼に全身が使っているだけでなく、ほとんどの情報は断片的であるために、全て揃っているような情報も実は完全ではなく、その情報の破片があちらこちらに散らばっている。それをかき集めるだけでも一苦労なのだ。しかも、かき集めた情報の中には大量の「ごみ」も混ざっている。これを選別する能力が欠けていれば、その作業をする気力すらも湧かないのである。結果、情報の洪水に巻き込まれ、つけっぱなしのテレビから流れてくるニュースを右から左に流すだけで、現代社会を知った気になる。そしてその先を知ろうともしない。なぜなら、そのような面倒な手順を体験しなくても、実に不自由なく生きられるからである。

それ以上を求める方にだけ、ここから先を読んでいただきたい。自分を高めたい人だけに。

 

“情報リテラシー”や、それと近しい意味であると考えられる“メディアリテラシー”や“ICTリテラシー”等と記載があるウェブサイトや書籍の中には、パソコンの使い方そのものを示しているものや、その情報のセキュリティ面の脅威に触れるもの、大学での学習スキル一般に対して述べるものなど、その内容が執筆者によって様々であることが分かる。また、時代によってその定義は変容する可能性が高い。現在総務省では、“情報リテラシー”に当たるものを“メディアリテラシー”と呼ぶが、その定義は以下である。

メディアリテラシーとは、放送番組やインターネット等各種メディアを主体的に読み解く能力や、メディアの特性を理解する能力、新たに普及するICT機器にアクセスし活用する能力、メディアを通じコミュニケーションを創造する能力等のことである。[総務省]

 

他方、弊研究所が考える“情報リテラシー”を端的に示すと、「過去に対する偏りのない正しい認識とそこから導き出される歴史法則をベースにしながら、未来志向のロードマップを創り上げる能力」である。弊研究所のヴィジョン“Pax Japonica(パックス・ジャポニカ)”実現のために行う社会貢献事業の中核を担うのは、やはり明日の人財を育てる「教育」である。

弊研究所は、国内外の学生に対して、講義・読書会・インターンシップという形でアントレプレナーシップ教育を積極的に推進してきた。これは「アントレプレナー」、つまり「0→1」ができる人財を育てることが、結果的に我が国に「明日のビジネスを作り出す人財」を生み出すことに繋がり、我が国に「ポジティブな循環」を齎すことを示すからである。そのようなアントレプレナーは“情報リテラシー”能力の体得が必要不可欠であり、これが欠けては将来様々なコミュニティにおいて先頭に立つことは難しい。

 

弊研究所における教育活動は、前回のブログ(IISIA教育の歴史を振り返る(その1) (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.17)))で取り上げた2019年までのプレップスクールをはじめとする活動に加えて、2020年以降は、弊研究所ファウンダー/代表取締役CEO・原田武夫を講師とした都内大学での自主ゼミの実施や、国立大学、及び私立大学での講義実施等を推進してきた。

2023年には、弊研究所会員制サーヴィス「原田武夫ゲマインシャフト」のゴールド会員・シルヴァー会員・ブロンズ会員様のご子息・ご息女(高校生・大学生・大学院生)を対象としたIISIA Summer School(以下、サマースクール)を実施した。筆者は、このサマースクールにおいて“原田武夫先生”の講義を受けた一人である。

3泊4日に渡る“勉強合宿”の内容は、非常に濃く(詳細はこちら:https://haradatakeo.com/iisia-summer-school/)。慣れない「知識のシャワー」を浴びた筆者は、サマースクールの帰りに知恵熱を出したのをよく覚えている。(笑)

 

(写真1:IISIA Summer Schoolの様子)

(参照:所員撮影)

 

そして本年9月からは、IISIA読書会を実施している。

「なぜ今、本か?」

それは、「ネットから得られる知識は、書物比べればはるかに断片的[原島24, p.195]」だからである。

「ネットにだって情報がまとめられていて、便利じゃないか。」

確かにその通りである。しかし、

人工知能によってそれなりに知識をまとめてくれるネットサービスも登場していますが、程度の問題です。教科書のようにきちんと知識が体系づけられていません。もしそのようなネットの情報だけで満足してしまうようだったら、それはその人の脳そのものが断片的になってしまっているということかもしれません。 ―中略― 注意しなければならないのは、相手との断片的な対話しかできないと、自分との対話も断片的なものになってしまうということです。もともと言葉は(言語)は、相手との対話ではなく、自分自身と対話(思考)するために発達したとする説があります。断片的な会話しかしていないと言語能力が発達しません。貧弱な言語能力からは貧弱な思考しか生まれません。[原島24, p.195-196]

ここまではっきりと現実を突きつけられると、学ぼうという気になる。

 

弊研究所における上記の読書会は、まさに書籍から“過去を正しく知り、未来を見据えるアントレプレナーシップ教育”である。内容としては、テーマに沿った課題図書が2~3冊提示され、各学生がこれを精読した上で、IISIA読書会内でグループ毎10分間のプレゼンテーションを行う。これをもって、弊研究所代表・原田武夫による解説とそれに対するレクチャーが行われるというものである。今週23日(月)が2024年IISIA読書会の最終回(第7回)であった。

 

(写真2:IISIA読書会の様子)

(参照:筆者撮影)

 

IISIA読書会の参加学生からは、以下の感想を頂いている。

「9月からの読書会を通じて、本をどのように読んでいくか、注目する部分はどこか(筆者が誰か、選ばれた本のつながりなど)など、読み方の面で成長できたと思います。 これからの読書会でも、考察するところに重きを置きながら、日頃から考えながら本を読む習慣も含めてつけていきたいです。」

 

「原田先生が話されたことを毎回吸収しきれているとは言えない。説明のテンポが早く内容ごとの接続も先生が思うより力不足な部分が多く、悔しさを感じながら勉強しています。」

 

「着眼点が分かってきたかと思いきや、毎回の読書会で自身の想定していなかった世界の構造が厳然と存在することを突きつけられる経験をしました。今期の読書会に参加する中で、世界の大きな流れに身を置きながら、私はどのように身を処すべきであろうかという思いを強く抱きました。」

 

学生にとって「圧倒的知」をシャワーのように浴びるIISIA読書会が、学生自身の知識不足を突きつけられる機会でありながら、さらに高みを目指すきっかけの一つとなっているようで、運営を担当する者として非常に嬉しく思う。

 

さて、少し前に「君たちはどう生きるか」という映画が話題となったが、弊研究所でもまさに同様のタイトルで勉強会を実施したことがある。何気ない日々をそのままモノクロで生きるか、発見の積み重ねを通じてカラフルな毎日へと自ら変容させるか。何を選ぶかは自分次第である。

 

【IISIA/RIJAG教育活動の年表】

2005年:学生寺子屋

2008年:弊研究所(IISIA)の社会貢献事業として発展。IISIAプレップ・スクールを実施。

2012年:弊一般社団法人(RIJAG)が主体となり弊研究所と共催でグローバル人財プレップ・スクールを実施。

2015年:IISIAプレップ・スクール

2018年:IISIAプレップ・スクール

2019年:IISIAプレップ・スクール

2020年、2021年:東京大学自主ゼミ開講

2022年:IISIA東大プレップスクール

2023年9月:四則和算サマースクール

2023年9月:IISIAサマースクール

2024年9月:IISIA読書会

2025年…?!

 

【参考文献】

・[原島 24] 原島博, 「原島博講義シリーズ 俯瞰する知 巻1 情報の時代を見わたす」, 工作舎(2024).

・[総務省]総務省,「第2部 基本データと政策動向」, 平成30年版 情報通信白書ICTリテラシーの向上, https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd266350.

※当ブログの記述内容は弊研究所の公式見解ではなく、執筆者の個人的見解です。

 

事業執行ユニット 社会貢献事業部 田中マリア 拝

 

本年は計18回の「“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側」シリーズをご覧いただき、誠にありがとうございました。来年も社会貢献事業部にてブログを執筆し、皆様と一緒に幅広い知見を深めてまいりたいと思料しております。

皆様の暖かいご感想、激励のコメントに心より感謝申し上げます。お一人お一人に対して、現在ご返信はできておりませんが、また折をみて、ご挨拶させていただきたいと考えております。引き続き、何卒よろしくお願い申し上げます。

◆本ブログのご感想・コメントはこちら(https://form.run/@bdg-sYGY4OE6bnrwAjSWIzBu)まで◆

 

【筆者プロフィール】

田中マリア:高校2年次と大学4年次にそれぞれ約1年のオランダ留学を経験。大学では、オランダ学と社会教育学を専攻し、卒業論文は「日本の初等教育の改善-モンテッソーリ教育からの示唆-」というテーマで執筆した。大学卒業後は、一般保育園にてフリー保育士としてパート勤務をしながら、国際モンテッソーリ教師資格(3-6歳)を取得。2024年4月より株式会社原田武夫国際戦略情報研究所ヘ入所。現在、社会貢献事業を担当する。

 

[関連記事](タイトルをクリックすると記事へ飛びます。)

・IISIA教育の歴史を振り返る(その1) (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.17))

「マネジメントのダボス会議」に出席して (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.16))

宇宙と反宇宙に迫る―東京大学共同研究室へ訪問― (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.15))

・シュタイナーの人智学とは何か (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.14))

・企業の社会貢献とピーター・ドラッカー (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.13))