宇宙と反宇宙に迫る―東京大学共同研究室へ訪問― (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.15))
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2024年6月、インド工科大学の博士課程の学生は、量子論の観点から、宇宙が創造される最も自然な方法は、時間の流れが正反対の関係にあるペアの存在であり、これは宇宙と反宇宙のペアの創造を示唆しているとして論文を発表した[Naman Kumar24]。彼は、これを実際に加速していると考えられる宇宙の膨張を説明するための仮説としていたわけであるが、他研究者(Boyle et al)が「宇宙がCPT対称性(Charge:電荷、Parity:パリティ・位置関係, Time:時間)に自発的に違反するのではなく、ビッグバン後の宇宙はそれ以前の宇宙のCPT画像であり、ペアである反宇宙を示している」と提唱したことも彼の仮説を後押ししている。これは宇宙論を概念ごと修正する可能性を示唆している。
弊研究所は「社会貢献事業」(詳細については、企業の社会貢献とピーター・ドラッカー -“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.13)-) を参照)の一つ、及び予見的ガヴァナンスの実現に向けた東京大学との社会連携講座に基づく取り組みとして、2022年より、弊研究所ファウンダー/代表取締役CEO・原田武夫が東京大学との共同研究に携わっている。なお2024年現在、弊研究所では以下2つの実験を支援している。
①「反宇宙モデル実証のための光量子を用いた量子ゆらぎ検証実験」
-反宇宙モデルにおける量子ゆらぎによる物質転送を実証するために光量子の量子ゆらぎを観察し、その制御方法を検証することを目的とする。
②「人工自我による身体知性にもとづく言語生成の実証実験」
-感情地図を応用した人工自我を基礎として、ロボット制御をChatGPTのような言語モデルと結びつけ、言語に基づいて構築される知性が身体性から構築されることを示すことを目的とする。
弊研究所の会員制サーヴィス「原田武夫ゲマインシャフト」にご入会いただいている方は、以上の共同研究について耳にされたことがあるのではないだろうか。本ブログでは、上記①「反宇宙モデル実証のための光量子を用いた量子ゆらぎ検証実験」の内容についてできる限りわかりやすく説明したいと思う。
第一に、弊研究所が財政支援させていただいた機材というものがある。それが実験装置である「フェムト秒レーザ発生装置」である。下の写真は、実際にレーザが放出されている様子を収めたものである。右側の黒い装置から青紫の光が放出されており、光の先にあるレンズを介して光が屈折し、最終的に写真中央に並ぶ2枚の白い板のうち、左側の端に青紫のレーザが当たっていることが分かるだろう。
(写真1:東京大学内の研究室)
(参照:筆者撮影)
現在は、以下3点が研究進捗である。
①レーザ光加工:レーザ光径をレンズを用いて1mm未満まで絞り込む
②2次高調波の出力増:絞り込んだレーザ光を用いることで2次高調波出力を10倍まで増加させる
③非線形結晶を用いた自発的パラメトリック下方変換を得る光路構築とその測定
今後は、レーザを出力した際に、それに相関する光量子の変化を観測するためのレーザ検知器(光子数測定装置)を実装していくフェーズとなる。2025年に到着予定のレーザ検知器の準備が完了すると、研究員及び補助スタッフ複数名体制で常時光量子の変化を観測することになる。
・・・共同研究員によると、「我々としては、宇宙とそれに対応する『反宇宙』が存在すると仮定しており、両者をもって『全宇宙』であるとする」とのことであった。先に紹介したインド工科大学の博士課程の学生や他研究者の発言とリンクがみられる。
筆者から素朴な疑問を共同研究員のおひとりに投げかけてみた。
「宇宙のすべての情報が一点に集まる可能性はあるのでしょうか。」
すると、回答はこうだった。
「ブラックホールは一般に“情報の消失点”であるとされるが、しかし同時に全ての情報が集まる焦点であるとも捉えられる。」
そして、彼はこう続けた。
「ブラックホールは全てを一方向に吸い込む場であるが、その情報が“ホワイトホール”から放出されるとき、その放出された先の空間を『反宇宙』と呼ぶ。反宇宙では、時間反転により物質→反物質、反物質→物質、重力→反重力、ダークエネルギー→反ダークエネルギー、さらに現宇宙から見たとき、時間方向が逆に進む(未来から過去へと流れるように見える)と考えられる。従って、『全宇宙=現宇宙+反宇宙』と考えると全宇宙の情報が消失することはなく、ブラックホールに飲み込まれた物質の情報はホワイトホールを通して反宇宙に移動するのみである。また反宇宙モデルでは、宇宙の始まりは反宇宙の終焉であり、宇宙の終焉は反宇宙の始まりであるため、“宇宙”は循環していると考えられる。」
・・・なんと!
所々知識不足で、理解が追いつかない部分もあるが、何を言わんとしているかの大枠は掴める。読者の皆様はいかがだろうか。
(写真2:東京大学の研究室にて(左:新谷栄悟先生、右:筆者))
(参照:所員撮影)
少し話を戻すが、「反物質」とは、英国出身の物理学者ポール・ディラックが1928年に理論的に予言し、その後の実験によって実際に存在することが確かめられたものである。「反物質」とは、いわば物質を鏡写しにしたような存在であるのだ。一見物質とそっくりであっても、帯びている電気の+と-が逆転している。物質を形作る原子は+の電荷を持つ原子核の周りを、-の電荷をもつ電子が飛び回っている。しかし、「反物質」は、-の電荷をもつ原子核の周りを+の電荷をもつ陽電子が飛び回っている。このように、物質と反物質は、電気の性質だけが反対で、その他は鏡に映したようにそっくりな存在である。また、反物質は、必ず物質とペアになって生み出される「対生成」という特徴を持ち、物質と反物質が出会うと両者共に消失してしまう「対消滅」という特徴も持つ。対消滅とはつまり、物質と反物質の質量がエネルギーに変わったということである。
138億年前、宇宙は巨大なエネルギーが爆発的に膨張するビッグバンによって生み出されたと考えられており、その際には大量の「物質」と「反物質」が対生成によって同じ量だけ生み出された。その後、宇宙が冷えていった際には、物質と反物質は全て対消滅していくはずであるが、我々人間を含む「物質」は今ここに存在する。この謎を解き明かす一つとして、電荷を持たない特別な素粒子である「ニュートリノ」の研究や、スイスに位置する欧州合同原子核研究機構(CERN)の反物質研究施設で行われている水素と反水素の研究等が各国で推し進められているのである。これらと同じ原理で、宇宙に対応する「反宇宙」存在の実験的証明を目的とし、実際に現宇宙と反宇宙間の物質移動を捉えるための実験を行っているのが、弊研究所が携わっている東京大学の社会連携講座なのである。
(図1:宇宙と反宇宙)
(参照:curiosmosより)
「反宇宙」のイメージとしては、ビッグバンを境界として鏡に映したように我々の存在する宇宙とは逆向きに存在している宇宙である。不思議なことに、「反宇宙」では時間軸、重力等も反対になる。しかし、共同研究内で上記図と異なるのは、図に見られるような左右の無限大点は存在せず、その近傍で「相転移」を起こし、ブラックホールからホワイトホールへの遷移が起こるというものである。また、そのような反宇宙とのゲートは、ブラックホール・ホワイトホールの他に、「宇宙初期(ビッグバン)」と「宇宙の終焉(ビッグクランチ)」が当てはまるだろうというものである。
以上のことから、共同研究における「反宇宙モデル」が与える新たな示唆としては、
①「全宇宙=現宇宙+反宇宙」と考えると、全宇宙の情報は消失しない。
-ブラックホールに飲み込まれた物質の情報は、ホワイトホールを通して反宇宙に移動する。
②一般相対性理論が反宇宙を含めた全宇宙で成り立つものだとすれば、ホワイトホールが全宇宙にあり、観測されてこなかったことはこれまでの事実と矛盾しない。
③反宇宙モデルでは、宇宙の始まりは反宇宙の終焉であり、宇宙の終焉は反宇宙の始まりである。
さて、今回はいつもとは異なる理系(?)の視点からのブログとなったが、いかがだっただろうか。全くの文系である筆者にとっては、正直扱うのが難しいテーマであったが、会員様にとって本共同研究が単に「壮大な研究」ではなく、少しでも具体的にイメージできるような“社会貢献事業”となっていれば幸いである。
※当ブログの記述内容は弊研究所の公式見解ではなく、執筆者の個人的見解です。
事業執行ユニット 社会貢献事業部 田中マリア 拝
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[参考文献]
・[Naman Kumar24] Naman Kumar,“On the Accelerated Expansion of the Universe” General Relativity and Quantum Cosmology (gr-qc), Gravit. Cosmol. 30, 85-88, 2024.