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人工知能(AI)、巳年天井なるか。(“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.21))

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2025年1月5日「日経ヴェリタス」の見出しはこうであった。

「2025『巳年天井』突き破る―市場アンケート 日米株、今年も最高値へ―」

相場格言では「辰巳天井」と言われ、辰年と巳年に株価が天井をつけやすいことを意味している。干支に纏わる相場の格言というものが他にも存在するらしい。読者の皆様はご存じかもしれないが参考までに置いておこう。

「辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぎ、戌(いぬ)笑い、亥(い)固まる。子(ね)は繁盛、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)跳ねる」 つまり、「辰年や巳年は株価が天井をつけ、午年は下落傾向。未年で辛抱したのちに、申年、酉年は値動きが激しくなる。戌年は笑いたくなるほどの良い相場。その後亥年は落ち着いた動き。子年は上昇相場になりやすいが、丑年でつまずき、寅年は寅が勢いよく走り抜けるように相場が荒れるが、卯年で相場は跳ねて上昇する」という意味である。

さて日経ヴェリタスが市場関係者72名を対象に実施したアンケートによると、今年の注目テーマとして多くの声が上がったのは「AI(68%)」であった。2024年の世界株高を牽引した人工知能(AI)関連への期待はまだまだ続きそうである。

「人工知能」「AI」という言葉は今ではニュースで見ない日はないほど、当たり前の用語となった。しかしこの言葉が世に流行し始めたのは極めて最近のことである。2022年11月にOpenAI社がChatGPTをリリースして以来、「人工知能(AI)」という言葉は社会に浸透していった。「AI(Artificial Intelligence)」という単語自体は、1956年ダートマス大学(Dartmouth College)で行われた会議にて、米国勢の研究者であるジョン・マッカーシー氏によりロックフェラー財団に出された提案書に登場している。人間の問題解決能力を真似するよう設計されたプログラム「Logic Theorist」に、「AI(Artificial Intelligence)」という言葉が用いられたのである。

人工知能(AI)の研究は1950年代から現在まで60年以上続いている。初期は記号推論(symbolic reasoning)という、事前に問題解決のルールをプログラミングすることに焦点が当てられたが、現実の問題解決には限界があり、いわゆる「AIの冬」が到来した。1980年代にはエキスパートシステム(特定の専門分野の知識を持ち、専門家のように事象の推論や判断ができるようにしたコンピューターシステムのこと)が一部の領域で成功するものの、人間であれば経験則から得られる暗黙知が表現できないなどの壁に直面し、AI業界の停滞期が再度訪れた。しかし1990年代から2000年にかけて機械学習(明示的にプログラムで支持をせずに、データを元に推論を繰り返し、そこから規則性やパターンを見つけ出す)が発展すると、特にディープラーニング(深層学習=人間の網目のような神経細胞の仕組みを模したニュートラルネットワークを進化させたもの)ブームがAI研究に大きな影響を与え、ChatGPTのような複雑なデータを理解し生成するAIへと繋がった。

(ちなみに、ネット通販サイト等を見ていると「この商品もいかがですか?」とおすすめが表示されることがあるが、これに使われているのは嗜好情報や利用傾向を学習し、購買に結びつきそうな商品を提示する「協調フィルタリング」という機械学習の代表的なアルゴリズムの一つであるそうだ。)

 

(図1:人工知能(AI)の歴史)

(出典:総務省「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」(平成28年))

ここまで見てくると、現在のAIブームに至るまでにはブームの波があり、ChatGPTやGemini、Canvaなど“生成AI”を活用したサーヴィス例や技術がAIの中では比較的新しく生まれたモデルのようである。つまり“AI”と言えば、これまで与えられたデータに対して正解か不正解かを識別するタイプの“AI”*=識別系AI(Discriminative AI)を指すことが多かったが、現代ではデータから新しいコンテンツを生み出す能力を持つ“生成AI”までその定義が拡大しつつあるのである。(*文字認識やAIカメラなどで見られるように、識別系AIは事前に大量のデータで学習し、製品の品質チェックや画像認識などの分野で活用される。)ただし注意したいのは、“生成AI”はディープラーニングを用いた技術の一種であり、ディープラーニングは機械学習の一部であり、その機械学習もまたAIの一分野でしかないということである。「AI」の定義は語る者によって変化するようだ。

(図2:AI・機械学習・深層学習の関係)

(出典:総務省「令和元年版情報通信白書」(平成28年))

冒頭の話題に戻るが、この「人工知能(AI)」への関心が世界的に高まっていることに異論はないだろう。2022年にChatGPTがリリースされてから、約2か月で1億ユーザーに到達したのを覚えているだろうか。熱狂的なブームは去ったわけではなく、人々の人工知能(AI)に向ける眼差しはまだまだアツい。それらの期待と同時に、今年1月18日、19日に実施された大学入試共通テストの教科に初めて「情報Ⅰ」が導入され、同分野へ求められる基礎知識が今後さらにボトムアップされていくことは容易に想像できる。この時代に遅れを取らないために、自律的な学びを取り入れていきたいものである。

 

【参考文献】

・[イワタ23] イワタヨウスケ, 「図解ポケット 最新生成AIサービスChatGPTがよくわかる本」, 秀和システム, 2023.

・[総務省19]総務省,「令和元年版情報通信白書」,URL: https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd113210.html.

・[日経23] 日経BPムック, 「ChatGPT&生成AI最強の仕事術」, 日経BP, 2023.

・[日経ヴェリタス25] 日経ヴェリタス2025年1月5日発行 第878号.

 

※当ブログの記述内容は弊研究所の公式見解ではなく、執筆者の個人的見解です。

 

事業執行ユニット 社会貢献事業部 田中マリア 拝

 

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【筆者プロフィール】

田中マリア:高校2年次と大学4年次にそれぞれ約1年のオランダ留学を経験。大学では、オランダ学と社会教育学を専攻し、卒業論文は「日本の初等教育の改善-モンテッソーリ教育からの示唆-」というテーマで執筆した。大学卒業後は、一般保育園にてフリー保育士としてパート勤務をしながら、国際モンテッソーリ教師資格(3-6歳)を取得。2024年4月より株式会社原田武夫国際戦略情報研究所ヘ入所。現在、社会貢献事業を担当する。

 

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