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三井物産マニラ支店長誘拐事件とドゥテルテ、そしてマルコス。(原田武夫の”Future Predicts”. Vol. 34)

最近、フィリピン勢が騒がしい。現職のマルコス大統領(Jr.)が前大統領を選出していたドゥテルテ一族を完全追放しようと躍起になっている。ドゥテルテ前大統領は国際刑事裁判所(ICC)へと移送され、現在、その裁きを受けつつある。「一国の前職大統領が超国家機関によって戦犯でもないのに裁かれる」という異常な事態を前にして、「一体何事か?」と心中穏やかではない向きも多いのではないかと思う。

この話、表向きはドゥテルテ前大統領が現職時代に強行した「麻薬撲滅のための大量虐殺」の是非を問う案件だと封に語られているが、その真相は実のところまったく違うところにある。これまで断片的に弊研究所の公開媒体で「このこと」について触れてきたこともあるのだが、折角の機会でもあるので、これを機にまとめて何が本当のところ問題なのかについて以下に記しておきたいと思う。

話は第二次世界大戦中に遡る。先の大戦中、我が国は帝国陸海軍を挙げて、東南アジア地域において華僑・華人ネットワークが蓄財していた大量の金塊を集めるのに躍起になっていた。そして第二次世界大戦がいよいよ我が国の「敗戦」と言う形で終わるにあたり、これらの金塊をどの様に処するべきなのかが大問題となったのである。

我が国はこの時、これら金塊を現地に埋蔵し、然るべき残地諜報者と現地協力者を置くこととした。「捲土重来」を期するためである。このことについての詳細は拙著『日華の金塊』そして『PAX JAPONICA』において詳述したとおりである。そしてこの時、現地協力者として選ばれたのが弁護士だったマルコス(父)だったというわけなのである。そして大概の金塊はミンダナオ島に埋蔵された。これら金塊はヴァチカン勢(フィリピン勢で圧倒的な勢力を誇るのがカトリックだ)の管轄下に置かれると共に、これを警護する武装集団が配備された。俗に「共産ゲリラ」と言われるこの武装集団において頭角を現した一族、これがドゥテルテ一族なのであった。

そして時は1980年代を迎える。具体的には1986年のことだ。当時、三井物産マニラ支店長であった若王子信行はこの埋蔵された金塊、すなわちいわゆる「Golden Lily」の話を聞きつけ、是非とも自社のためにこれを確保したいと考える様になった。そして同人は実際に「埋蔵地」と思しきフィリピン各地へと赴き、採掘のための準備をしていたのだという。しかし、果たせるかな、「金塊」にはありつけないまましばし時が過ぎていった。

そうした中、1986年11月15日午後3時頃(マニラ時間)のことだ。マニラ市郊外にあるゴルフ場からの帰宅途中、若王子信行は何者かによって拉致された。そしてややあってから「共産ゲリラ」が犯行声明を出したことで、大騒ぎとなった。現地当局や我が国関係者らが懸命に捜索し、しかも現地カトリック教会勢までもが動いたと言われているが、なしのつぶてであった。そして翌87年3月31日、ケソン市内の教会脇で目隠しをされた同人が放置されているのが発見された。時を前後して三井物産がこの解放のために英系コンサルティング会社経由で「身代金」を支払ったことを公表し、世論轟轟となった。・・・と、表向きはされる。

若王子信行はその後、同社札幌支店長に異動となる。しかしその2年後の1989年、すい臓がんのために逝去したとされる。享年55歳、今考えるならば余りにも早い逝去であった。

「マルコス、それにドゥテルテなどこの事件には微塵も出てこないではないか。一体何が関係しているというのか?」

読者は今、そうお考えになられているに違いない。そう、そうなのだ。「表向き語られているストーリー」においては、全くもってこれら2人は何ら関係が無いように見えるのである。

だが、真実は違う。―――この事件に際して、人質解放交渉のため、現地に派遣され、これに成功したのは我が国「国体」勢力の中核的な人物であった。無論、時の昭和天皇からの勅命を受けての動きである。そしてなぜ、このレヴェルでの動きになったのかといえば、若王子信行が触れてはならない「簿外資産」としての金塊に触れようとした結果、現地で拉致監禁されたからであった。そもそもこの「簿外資産」の金塊が現地で遺されてきたのは我が国「国体」の最高レヴェルにおける意思決定があってこそ、である。したがって「そのレヴェル」でのメッセージをもって伝令が向かわなければ、フィリピンの在地勢力としても動かなかったというわけなのである。そして若王子信行は無事に「救出」されることとなった。ただし、事の真相をその後、語る間もなくこの世を去ることになったわけであるが。

ここで人質解放交渉の中心的な人物は未だご存命なのであるが、かつてこう語っていたと耳にしたことがある。「今でもフィリピン勢には大量の金塊が埋蔵されたままだが、これらは純度が低く、事実上流通不可能な代物ばかりだ。しかしフィリピン勢はこれら金塊を流通させることで自らがグローバル社会のトップに躍り出ることが出来ると信じ込んでいるようだ。実際にはこれらの金塊についてまずは純度を高くすべく改鋳し、かつ打刻を正式にしなければならないのに、である。これを行えるとすれば処理のための認可施設があるのはパラオであるので、そこまで運搬してということになってくるわけだが、そのコストとは全く見合わないこいとは明らかだ。それなのにフィリピン勢はといえば、自らが世界のトップに躍り出ると信じて止まない。マルコスであれ、ドゥテルテであれ、このことに代わりはない。実に、哀れな限りだ。」

かつて「マレーの虎」が現地で埋蔵を指揮し、その後、掘り返されてクラーク米空軍基地から米財務省の金貯蔵庫(Fort Knox)へと運ばれた金塊の残滓は今、あたかも亡霊の様にフィリピン勢の政治的リーダーシップを翻弄し続けている。マルコスとドゥテルテの間における争いは、結局のところ、この亡霊の様な「金塊」を巡る利権争いに過ぎない。そうした中で自らが世界のトップになると信じて止まない彼らを果たして鎮めることが出来るのか。「戦後80年」を迎える今、石破茂総理大臣は来る5月の連休中、そうしたフィリピン勢を公式訪問すると最近聞き及んだ。こうした「大任」を果たして務めることが出来るのか、まずはとくと拝見させて頂くことにしようではないか、と今、私はそう思っている。

2025年3月29日 東京の寓居にて

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 ファウンダー/代表取締役CEO/グローバルAIストラテジスト

原田 武夫記す

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