トランプよ、汝何故に瑞穂の国を訪らはん。(原田武夫の”Future Predicts”. Vol. 54)
夕方のひと時、こうしてしばし窓外を眺め流れ徒然に筆をとっていると、すっかり秋めいてきたことに気づくわけだが、そうした中でも相も変わらず、国内外共に政治はというと七転八倒を繰り返している。しかし「不感症」とでも言うべきなのだろうか、次から次に、特に海の向こうの大統領氏からの「突飛な発言」を浴びすぎてしまったせいか、大抵のことでは驚かなくなっている自分がいることに気づくのは果たして私だけだろうか。
そうした中だからこそ、先日突然伝えられたロイター電には不思議と動じなかった自分がいる。曰く、「トランプ米大統領が近々、我が国を訪問することを企図し、既にそのための調整に入っている。現在進行中の自民党総裁選後、我が国国会で首班指名を受けた人物との会談に臨むべく、来月(10月)に韓国で実施されるアジア太平洋経済協力会合(APEC)を機に訪日することが検討されている」と。
一見すると何のことのない短信であるかの様に思えてしまう。しかも相手が米大統領、しかもあのトランプなのである。何があってもおかしくない以上、「そろそろニッポンに行きたい」と言い出したらばきかなくなるわけであり、政府関係者がぼやくついでにリークしてしまった、と考えればこのタイミングでの報道には不思議な納得感すらあるのだ。
だがしかし、それはあくまでも「民主主義というルールに則って選ばれるリーダーシップ」としての「政体」勢力における話に過ぎないことにお気づきだろうか。「生まれてこの方ずっとリーダーシップをとり続ける存在」としての「国体」またの名をRoyal Familiesの世界となると、全くもって話は変わって来るのである。まずはこのことに気づかなければ、あるいはこのことを知らなければ、今回のロイター電の持つ本当の衝撃を認識することが出来ないのだ。
「国体」とは何か?―――端的に言うならば、その本質は「祭祀」にある。古今東西、「国体」すなわち王族たちはその存在理由を「神」との特別な関係性に求め、事実その様なものとして説明してきた。そしてそのことは今もなお全く変わらないのであって、その意味での「祭祀」の日程が、我々市井に生きる者には想像もつかないくらい、びっしりと入っているのが彼・彼女ら「国体」勢力の日常なのである。
したがって我が国における「国体」の中心についても同じなのであって、1か月余り先の日程についてそうそう割けるものではないのである。これを「政体」の側がごり押ししようとすると大変なハレーションが生じることは、かつて習近平・中国国家副主席(当時)がショートノーティスで行った謁見の時の経験からして明らかなのだ。そしてそのことは当然のことながら、トランプ米大統領についても当てはまる。私たち下々との関係ではいくら粗雑な対応を通そうとも、「国体」勢力が相手となると全くそうはいかないのである。そうであることは何を隠そう、トランプ米大統領が一番知っているはずなのであって、そうではあっても何故に今この瞬間に我が国を訪問しようというのか、このことについて今こそ、私たちは熱心に思案すべきなのである。
個人的な見解を申し上げるならば、一見すると解けなさそうに見えるこの問いに対する答えを見出すための補助線は、先に行われた2度目のトランプ英国賓訪問に秘められていたと考えるのが妥当だろう。あの時、英国国王・チャールズ3世は同大統領を「破格」の扱いで迎えた。当然、トランプ米大統領としては大いに安堵し、次のステップに今こそ向かうべしと考えたに違いない。だからこそ、目指すはスメラギのいる瑞穂の国なのである。「ようやくその時が来た」というのが同大統領にとって率直なところであるはずだ。
しかし、実に難解なのが「宮中府中の別」であり、また「宮中」そのものなのである。「国体」とは、それが「コトワリ」なのであれば公然とそれ以外の全てを圧殺しなければならない定めを担っている存在なのだ。その意味で果たして、地球の裏側に位置する英国でその「国体」勢力が微笑みかけた、そのことの意味が本当に吉と出るのか否か、はたまたとんでもない「陰謀」の始まりなのかは、これからトランプ米大統領に降りかかる出来事を全て見渡さなければ分からないのである。
だからこそ、私たちもまた瑞穂の国に生きる者たちとして今こそ問わなければならないのである。「トランプよ、汝何故に我らが瑞穂の国を訪らはん」と。願わくばこの突然の訪問が「招かれざる者の訪問」にならないことを。ピエロとは、往々にして最もけたたましく、そしてまた同時に最も哀れなのであるから。
2025年9月28日 東京の寓居にて
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 ファウンダー/代表取締役会長CEO/グローバルAiストラテジスト
原田 武夫記す
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