「決定打」をなぜ誰も撃ち込まないのか?(原田武夫の”Future Predicts”. (Vol. 2.))
曰く、ついにイスラエル勢がイラン勢に対する「再報復」に出たのだという。「曰く」というのは、この話がどういうわけか、まずは米国勢の当局者より漏れ出たからだ。そしてまた「曰く」、今回の報復攻撃では核関連施設は巧妙に避けられていたのだという。実に奇妙な話だ。イスラエル勢にとってイラン勢が「宿敵」であって、殲滅すべしということであれば最初からそうした敵の急所中の急所を突けば良いからだ。しかしなぜかそうはしなかった。無論、ガザ地区のラファに対する攻撃を今にもしそうなイスラエル勢に対してグローバル社会で止まらなくなっている批判の声を前提とすれば、さしものイスラエル勢としてもこれ以上、戦局という傷口を広げるのは得策ではないと判断した可能性は極めて高い。だが、そもそもその気になればあらゆる手段でイラン勢の指導者そのものを馘首することすら可能なのが今のイスラエル勢の軍事力なのである。そうした窮極かつ合目的な手段を用いないで、なぜこの様な形に終始しているのかについては、率直にいって理解に苦しむとしか言いようがないのである。「決定打」を誰も撃ち込まない状況がそこではだらだらと続いている。
同じことはグローバル金融全体において今や不安定さそのものを招いているとしか言いようのない「金利政策」についても言えるのだ。とりわけ米国勢について。果たしてその経済は本当に改善しているのか、あるいは実のところむしろ悪化しているのか。表向きの論調は「半導体、AIを中心に米国勢がリードする体制は弱まるどころか加速度的に強化される一方である」と述べる。しかし直近でいうと、明らかに様々な勢力が動員されて「米ドルの買い支え」が行われているとしか言い様の無い事態が進んでいるのである。これは一見すると良い兆しの様に見えるが、その実、そうしないとラスト・リゾートであるはずの米国債が売りさばけなくなり、ついには米国勢全体が借金まみれで倒産してしまう危険性があることも示唆しているという点を忘れてはならない。「ドル高・円安になって日本株の株価上昇が続く」などと小躍りしている場合ではないのである。しかも、ここに来てむしろインフレが米国勢において止まらず、再度の利上げすらあり得るのではないかという議論すら噴出し始めているのである。加えて、米連邦準備制度理事会(FRB)はというと、最近の声明の中でやたらと「移民問題」「個人のクレジットカード債務問題」といったイシューを連呼し始めている。そう、何かがおかしいのである。米大統領選挙という「真実の時」を超える前後でそうした部分に溜まりに溜まった膿が噴出する危険性がある。その時、逃げ場を失ったグローバル・マネーは一時的な退避場所を求めて、我が国へと殺到するに違いない。だがしかしそれこそが「日本デフォルト」をついに片道切符とし、実体経済が物の値上がりに追い付かず、かといって流れ込むマネーを無限大に吸収しながら大成功するスタートアップ企業も我が国には存在しないのである。結果、悪性インフレが加速し始め、住宅購入で課された変動金利に困窮する個人の債務不履行を筆頭に企業、地方公共団体、さらには中央政府に至るまで我が国はデフォルトの連鎖に見舞われることになりかねない。
先日面会した香港の準「国体」勢力の女性リーダーシップと東京で会話する際にも、話題になった。「これから何かが起きるとして、それがなぜ今年(2024年)6月になるのか。その理由を知りたい。」
戦争であれ、経済・金融であれ、皆が「何か」を待ち続けている。その際、「何か」を知っているのはほんの一握りなのであって、それ以外の大半の者たちは結局のところ、詳しく理由は知らず、ただひたすら恐怖におびえながら「その時」を告げる命令を待ち続けているに過ぎないのだ。そうした構造があらためて世界を覆いつくすことで、事態の真相はより隠蔽され、混濁し、周囲からは「その次」が全く見えなくなり始めている。無論、来る6月にそれら全てが起きるわけではない。しかし確実に言えるのは一方では深刻な事態が生じていることを示す「傷口」がはっきりとその時見え始めるのと同時に、他方ではこれを縫合し、もって人類社会全体の延命を実現してくれるかもしれない存在が誰なのかもしっかりとそこで示されるということなのだ。いやもっと正確に言うと、後者の意味での流れはこうした存在そのものがついに自らの力で切り開くものに他ならないのである。だからこそ、そこにあるのは「意志の力」なのであって、さらにいえばそうした「意思」を在らしめている全ての偉大なる力のすべてであるというべきなのである。
その意味で「決定打」はやがて6月頭に打ち込まれることになる。こうした意志の力を持ち合わせた者によって、ある日突然に、である。同時にそれは人智を超える事態の展開をも事実上伴うことによって次元の違う世界へと人類全体を誘うことともなる。繰り返し言おう。「決定打」は程なくして撃ち込まれる。そのタイミングは来る6月頭だ。そのことを忘れずに、全てを見渡し、備えを万全にしていきたいと思う。
2024年4月20日 東京・丸の内にて
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 代表取締役CEO/グローバルAIストラテジスト
原田 武夫記す