「マネジメントのダボス会議」に出席して (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.16))
※社会貢献事業ブログをお読みいただき、いつもありがとうございます。
今後のサーヴィス向上のため、ブログのご感想をお寄せいただきますようお願い申し上げます。アンケートはこちら(https://form.run/@bdg-O2y8fV4WX7j3z4qdGecD)。 お寄せいただくお言葉は大変励みになります。何卒よろしくお願いいたします。
・・・
先日(7日)、弊研究所の社会貢献事業部は、会員制サーヴィス「原田武夫ゲマインシャフト」スタートアップ以上の会員様限定「2024年IISIA・ヨーロッパ出張報告会」を実施した。(実施報告はこちら:https://bit.ly/4g7klyb)本ブログでは、同報告会の内容を厳選し、読者の皆様にお届けしたいと思う。
はじめに、2024年度、社会貢献事業部が行った海外出張は以下のとおりである。
- 4月22日(月)、23日(火)・・・「世界経済水フォーラム」出席 inオランダ・ロッテルダム
- 4月24日(水)、25日(木)・・・「国連大学AI会議」出席 inマカオ
- 10月14日(月)・・・「グローバル・グリーン成長研究所(GGGI)会議」出席 in韓国・ソウル
- 11月12日(火)・・・「国際刑事裁判所(ICC)」表敬訪問 inオランダ・ハーグ
- 11月14日(木)、15日(金)・・・「第16回グローバルピータードラッカーフォーラム」出席 inオーストリア・ウィーン
以上のように、弊研究所は国内に留まることなく、国外で行われる国際会合等を通して独立系民間シンクタンクとしての幅を広げようと活動している。昨月11月の出張は、弊研究所が掲げるヴィジョン“Pax Japonica”を実現するための、国外での人脈構築という点が大きな目的であった。11月12日にはオランダ・ハーグにある国際刑事裁判所(ICC)へ表敬訪問し、11月14日及び15日には、オーストリア・ウィーンで開催された「第16回グローバル・ピーター・ドラッカーフォーラム(以下、ドラッカーフォーラム)」に参加した。ドラッカーフォーラム当日は、68か国から500名以上の方々が参加しおり、人脈構築はもちろん、世界の経営者、経営学者らが注目するトピック、そして今後必要となるスキルが何であるかを探るための参加であった。
国際刑事裁判所(ICC:International Criminal Court)は、1998年7月にローマで開催された国連外交会議(ローマ会議)で設立条約(ICC規程)が採択されたことにより創設された。ICCの所長は、本年3月から日本人の赤根智子裁判官が務めている。締約国は124か国で、年明け1月にウクライナが加盟することで125か国になる見込みである。
(写真1:国際刑事裁判所)
(参照:国際刑事裁判所ウェブサイトより)
また、ICCは以下4つの犯罪のみに特化した裁判所である。
①ジェノサイド
②人道に対する犯罪
③戦争犯罪
④侵略犯罪
なお、ICCが捜査を開始するには、以下のうちいずれかに該当する必要がある。
①締約国からの依頼
②国連安全保障理事会からの依頼
③ICC検察官の発議と裁判官の認可
さらに、締約国の領土内、または締約国の国民によって犯された犯罪も捜査を実施するための条件となっている。
また、ICCを知るために必要な要素は以下4つである。
①個人の刑事責任が問われること
②上記4つの特定犯罪に特化していること
③国際条約で創設されていること
④国内裁判所を補完するものであること
特に、④「国内裁判所を補完する」とは、各国が国内で裁き切れないものをICCが請け負い、捜査を開始することがあるため、「国内裁判所の援助をする」という意味で示されている。表敬訪問当日は、この部分が複数回述べられており、印象的であった。
オランダ・ハーグには、名称の似ている国際司法裁判所(ICJ:International Court of Justice)も存在するが、ICJが国連の一部であるのに対し、ICCは独立した機関であるため国連の一部ではない。しかし、国連とはローマ規定に基づいて協定を締結し、継続的な協力関係を築いているのも事実である。筆者が現地を訪問すると、2013年ICCに対して授与された第2代国際連合事務総長ダグ・ハマーショルドのメダル(国連平和維持要員に授与される最高の栄誉)が展示されており、国連との繋がりも大きいとみえる。
また、今ニュースで大きく取り上げられているプーチン大統領への逮捕状や、過去にネタニヤフ首相に出された逮捕状はICCからのものであり、日に日にICCへの注目度は高まっていると言えるだろう。今回、このような世界的報道がなされる前に訪問できたことは運が良かったと捉えており、今後も社会貢献事業部としてしっかりと人脈構築をしていく所存である。
次に、11月14日及び15日には、ハプスブルク家の旧王宮として知られる「ホーフブルク宮殿(Hofburg)」で開催された、「第16回グローバル・ピーター・ドラッカーフォーラム」に出席した。テーマは“The Next Knowledge Work-Managing for New Levels of Value Creation and Innovation-(次なる知識労働-新たな価値創造と革新-)”である。
主催団体であるPeter Drucker Society Europeは、ドラッカー生誕の地であるオーストリアに、ピーター・ドラッカー生誕 100 年となる 2009 年に創設され、同年に第1回グローバルピータードラッカーフォーラムが開催された。またこのドラッカーフォーラムは、毎年開催されるマネジメント会議であり、「マネジメントのダボス会議」と称されるものである。今回のフォーラム参加は、実は弊研究所としては3回目であり、前回は2019年に弊研究所代表・原田武夫と所員が参加している。
(写真2:ドラッカーフォーラム会場の様子)
(参照:筆者撮影)
ちなみに、弊研究所が発行してきたIISIAマンスリー・レポート2013年9月号では、コラム【原田武夫の読書散歩(その47)pp.19-23】の中で、2012年、ダイヤモンド社から出版された「経営の真髄―知識社会のマネジメント―(上)」という、ピーター・ドラッカーの本を取り上げている。(IISIAマンスリー・レポート2013年9月号のご購入はこちら:https://haradatakeo.com/ec/products/21938)
そこで引用されたドラッカーの言葉は、このようなものである。
組織が皮膚から骨格へと転換すべき段階はどこか。従業員の数で見るならば、300人から1000人の間のどこかであろう。-中略- 研究所では20人から25人の間のどこかである。マネジメントを欠くとき、組織はマネジメント不能となり、計画は実行に移されない。最悪の場合、計画の各部分が、それぞれ勝手なときに、勝手なスピードで、勝手な目的と目標のもとに遂行される。あるいは、ボスに気に入られることのほうが、成果をあげるよりも重要になる。たとえ製品が優れ、従業員が有能かつ献身的であっても、またボスがいかに強大な力と魅力を持っていても、組織は、マネジメントという骨格を持つように変身しないかぎり、失敗を重ね、停滞し、坂を下り始める。
また弊研究所代表・原田武夫は、同マンスリー・レポート内で「経営者にとって究極の業であるこの「マネジメント」において行く付き先は人財(human resource)との真正面からの対決でしかない。」と執筆しており、今回、ドラッカーフォーラム内でHR(human resource)と何度も耳にしたのを思い出した。
次に本フォーラムの概要であるが、こちらは2日間に分かれており、当日のスピーカーは以下のとおりである。
- Thinkers 50 #1: Amy Edmondson
- Thinkers 50 受賞:Gianpiero Petriglieri
- トロント大学Rotman School of Management教授、元学長:Roger Martin
- Harvard Business Review Press編集長:Ania Wieckowski-Masinter
- Visaグローバルイノベーション長:Valla Vakili
- OECD常任取締役:Josee Touchette
- UNIDO DS、AIシニアアドバイザー:Ashraf Abushady
- オックスフォード大学進化心理学教授:Robin Dunber …etc.
Thinkers 50とは、「経営思想のアカデミー賞」とも呼ばれ、隔年で発表されるランキングは世界に大きな影響を与えたマネジメント思想家を広く紹介する取り組みである。ドラッカーフォーラムには、この「世界で最も影響力のある思想家」であるAmy Edmondson教授や、同じくThinkers50に選出されたGianpiero Petriglieri教授などが参加しており、非常に豪華なスピーカー陣であった。
(写真2:セッションの様子)
(参照:筆者撮影)
フォーラム当日の会場は3つに分けられ、同時並行でパネルディスカッションやディベートが行われた。参加者は、興味関心に沿って視聴講演を選ぶ。筆者も28セッションの中から弊研究所の分析と関係が深いと推測されたセッションを厳選し、ディベートやセッションを拝聴した。
それらをまとめて、本ドラッカーフォーラムで注視されていたと感じるのは、“We are living in the Golden Age of Knowledge Work(我々は知識労働が輝く時代に生きている)”ということである。また今回筆者がピックアップした重要トピックは、以下3点である。
1.Human and AI(人間とAI)
2.Innovation and Creation(革新と創造)
3.People First, Finance Second.(第一に人間、財務は二の次)
つまり、「AIが普及してきた時代だからこそ、人間である我々がフォーカスすべきは何か」「革新と創造をするためにどのようなスキルが必要か」「企業は、第一に儲けを考えるのではなく、そこで働く“ヒト”の心理的・身体的安全を確保してこそイノベーションが生み出せる。それが企業の成功である」という論点でセッションが進められていたと強く感じている。
最後に、Thinkers 50第一位に輝いた、ハーバードビジネススクール教授Amy Edmondsonの言葉を紹介しよう。
(写真3:Amy Edmondsonのスピーチの様子)
(参照:筆者撮影)
予防可能な失敗(=愚かな失敗)を防ぐために、我々は賢明なリスクを冒して、マネージャーとして、同僚として自分の役割を確実に果たすことが必要である。働く者は、企業に対して心理的安全性を求めるわけだが、これは「快適さ」とは異なる。特に予防可能な失敗が起きると判断した場合、恐れることなく必要なタイミングで、自身の意見を発信する意欲を持つことが重要である。
また、以下のように続けた。
そのような賢明なリスクを冒した際に生まれる“失敗”を、Amy Edmondson教授は“賢い失敗(Intelligent Failures)”と呼ぶ。なぜなら、失敗は自身への投資であり、学習に繋がるからである。偉大なマネージャー、新しいものを生み出す知識労働を助けるのが、この賢い失敗による経験である
我々は世論がしばしば企業VS従業員、マネージャーVSその他従業員といった構造を吹聴することに気づく必要がある。そこには常に両者を闘わせるという枠組みができているが、これでは上手くいかない。良いマネジメントとは、これらを越えそこで生きる人々のことを考え持続可能なコミュニティへと成長させるものである。協力すること、顧客・社会・世界のニーズに基づいてデザインすること、そしてそれをどのように生産するのかという思考が合わさると、複雑であるものの実際には扱いやすい課題と変容する。
フォーラムの最後では“We should know more about Human Being, and work for talent(人間についてもっと知り、才能のために働くべきだ)”と述べ、会場では拍手が湧いた。
このような内容の濃いセッションがなされたのが、今回のドラッカーフォーラムである。実は、当日のスピーチの一部はYouTubeで公開されており、やはり注目は、上記Amy Edmondson教授や、同じくThinkers 50に選出されたGianpiero Petriglieri教授が登壇されたオープニングセッションである。彼らから発せられる言葉の力をぜひ感じていただきたい。
(動画1:ドラッカーフォーラムの様子)
(参照:YouTubeより)
最後に、本ドラッカーフォーラムで、“働く者”に必須となる要素として取り上げられたのが、「新しいスキルを身につける。新しい問題を解決する。貢献の拡大。収入を増やす。」であった。
ご存じの方や関係者の方もいらっしゃるかもしれないが、先日11月3日(日)、東広島市及び国立大学法人広島大学(教育学部健康スポーツ学科)のご要請により、弊研究所代表・原田武夫は「広島大学75+75周年・東広島市制施行50周年記念特別講演会」において「世界一やさしいリスキリングとアントレプレナーシップの授業」と題し講師として登壇した。
本講演会では、ドラッカーフォーラムでも“働く者”に必須となる要素として明示された「スキルアップ」すなわち、「リスキリング」や「アントレプレナーシップ」についての基本についてお話しさせていただいたところであった。従って、講演内容は、遠いヨーロッパで行われた「マネジメントのダボス会議」でも取り上げられるほど、今非常にアツいテーマであったことが明らかとなった。なお、本講演会の様子はYouTubeでも無料公開しているため、是非一度ご視聴いただきたい。
(動画2:世界一やさしいリスキリングとアントレプレナーシップの授業
(講師・弊研究所代表・原田武夫))
(参照:YouTubeより)
今回の「2024年IISIA・ヨーロッパ出張報告会」は、弊研究所が行う社会貢献事業(詳細については、企業の社会貢献とピーター・ドラッカー -“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.13)-) を参照)の一環として実施した。
弊研究所としては、引き続き、国内外における主要機関とのコミュニケーションを精力的に行っていく所存である。今回の出張もまた、これを後押しするためのものであり、これが“Pax Japonica”の実現に繋がる弊研究所の役割であると考える。
※当ブログの記述内容は弊研究所の公式見解ではなく、執筆者の個人的見解です。
事業執行ユニット 社会貢献事業部 田中マリア 拝
最後までお読み頂きありがとうございます。
いかがでしたでしょうか。本ブログのご感想をこちらのアンケートへお寄せいただけますと大変励みになります。
また、弊研究所公式X(https://x.com/iisia)では毎営業日投稿をしておりますので、最新動向のチェックにご活用いただけますと幸いでございます。
[関連記事](タイトルをクリックすると記事へ飛びます。)
・宇宙と反宇宙に迫る―東京大学共同研究室へ訪問― (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.15))
・シュタイナーの人智学とは何か (“情報リテラシー”教育の発展とその向こう側(Vol.14))