「アラブ人と日本人が来たらそのマーケットはおしまい」という格言。(原田武夫の”Future Predicts”. Vol. 8)
今、日本株が再び上昇を続け始めている。つい先日は「外国勢が日本株から離れ、中国株に舞い戻っているのではないか?」などとまことしやかに喧伝されていたわけであるが、何のことはない、要するに私たち日本勢の個人投資家たちが先の高騰局面で「信用買い」を続けたものの、最終的には根負けをして売りに次ぐ売りという動きになるのを彼らは待っていたというわけなのである。そして再び「外国勢による日本株の買い越し」が今、喧伝されている。正に「歴史は繰り返す」というわけなのである。
新NISAが追い風になっているのは言うまでもない。聞くところによると、これまでは投資に慎重であったはずの若い世代が新NISAに我が国においてまたぞろ参画し始めているのだという。「18~20年も投資をしていれば元本割れをする確率は低くなる」という謳い文句がこれら若い世代の胸には響くのだろう。誰しもが己のカネには執着するものである。しかも一定の金額を少しずつでも買っていけばそれで豊かな未来が確保されると言われるのであると、誰しもがこの話に乗らないわけがないのだ。そしてまたふと見ると、経済紙は連日の様に「XX株がY年ぶりに高騰」といったタイトルの記事を連発している。街角景気が決して良くないにも拘わらず、老舗の大型株は連騰に次ぐ連騰を重ねている。「団塊の世代」以上の方々で三井・三菱といった旧財閥系の企業にお勤めであった方、あるいはその配偶者の方はかねてより保有されているこれらの企業の株(かつては自社株を持たされるのが普通であった)の含み益が実に1億円を超えているという方がざらにいらっしゃるのではないかと拝察している。誰も表向きは言っていないが、要するに「バブル」なのである。かねてより、マーケットの”猛者”たちの間では「日経平均株価は現在までの異次元緩和で放出された流動性(liquidity)を合算すると5万円以上は行くはず」と語られており、弊研究所もこの見込みを支持してきた経緯がある。日経平均株価は既に41000円に迫ろうとしている。50000円になるのは時間の問題であると考えている。
しかし、是非だからこそここで警鐘を鳴らしておきたいことがある。それはマーケットにおける次の様な格言だ。
「アラブ人と日本人がやってきたらばそのマーケットは終わりだ。」
私は事あるごとに弊研究所のクライアントの皆様にこの格言を投げかけてきた。今回もあらためてそう皆様に申し上げておきたいと思う。しかるにそういわれると必ずや読者の皆様はこう考えるのだと思う。「実際に日本株は上昇しているわけであり、しかも”政策あるところ売りなし”なわけであるから、貯蓄から投資へと大方針を掲げる我が国政府の下で、日本株が崩落することはあっても、暴落、瓦落などあり得ないのではないか。」
確かにこれまでは、何とかやり過ごせてきた。なぜならば「ニッポンがダメならば海外へ投資をすれば良かった」からである。事実、新NISAで投資を始めた方々は事実上、「オルカン(=all countries, すなわち海外分散投資型投資信託)」あるいは「S&P500連動型投資信託」を大半が買っていることは読者もご存じなのではないかと思う。つまり、そもそも貯蓄から投資へと言われても、他ならぬ私たち日本勢こそが祖国・ニッポンを一番信用していないのであって、だからこそ「個人投資家が我が国上場企業株に投資→当該日本企業が事業投資を活発化させ、収益力を向上させる→当該企業の従業員に与えられる賃金が増える→当該従業員=個人投資家がまた日本株を買う」というサイクルが全く回らなくなっているのである。むしろそこで生じているのは我が国から諸外国、特に米国勢への「国富」の大量流出である。ものの見事に私たち日本勢は「罠」に嵌ってしまっている。
だがしかし、これでストーリーが終わりというわけではないのだ。先週(6月30日から7月4日まで)、スイス・チューリッヒを訪れ、同地で開催された中央銀行関係者とFintech関係者を中心とした会合に出席してきた。詳しくは5日にリリースした音声レポート「週刊・原田武夫」特別号(クリックして頂けると当該特別号の案内ページにジャンプします)で述べておいたが、要するに現状、すなわち「日本株が再び高騰、そしていよいよバブル最終局面へ」という流れは俯瞰しなければ、実のところそれ自体が罠であるということをここでは声を大にして申し上げておきたいのである。非常にラフな言い方をするならば、有価証券というこれまでの金融商品の中でも「メイン中のメイン」が今後、物の見事に崩れ去っていくのである。確かにこれまでそうしたプランは繰り返し語られてきたわけであるが、今回のチューリッヒでの会合出席を通じ、金融の最前線で物事を動かしている方々と直接会話をして痛感したのである。事態は私たち日本勢の想像をはるかに超える次元とスピードで動いているのであって、そもそも「日本株」はおろか「有価証券」という狭い従来型の枠組みで考えること自体が危険であり、また「罠」でもあるのである。「枠組み」全体が突然、変わり、全く別のものがそこでの主体となるのである。そして有価証券そのものは、価値を失い、奈落の底へと舞い落ちていくこととなる。
チューリッヒからの帰路、あえてミュンヘン空港に立ち寄った。その時、ラウンジで好物の「白ビール」を傾けながら、あらためて思ったのである。「アラブ人と日本人が来たらそのマーケットは終わりだ。」
生贄になる前に一人でも多くの同胞が「近未来の真実」に気づくことを心から祈念している。遅くとも「3年以内」に何人の同胞・日本人が”このこと”に気づくことが出来るのかが、勝負だ。
2024年7月7日 酷暑の東京・丸の内にて
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 ファウンダー/代表取締役CEO/グローバルAIストラテジスト
原田 武夫記す
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*弊研究所代表・原田武夫書き下ろしによる「原田武夫の”Future Predicts”.」。いかがでしたでしょうか?この話の「続き」を知りたい方、とにかく”もっと知りたい”と思われる皆様のために、「2024年夏・IISIAセミナー」を来る7月20日(土)に東京・有楽町の国際フォーラムにて開催いたします。第2部はこれまで弊研究所のセミナーにお出で下さったことの無い方々を対象とした無料セミナーです。詳細とお申込みは今すぐコチラよりどうぞ(クリックすると該当サイトにジャンプします)。