【世界水フォーラムプロジェクト】なぜ今下水疫学なのか - IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 - haradatakeo.com
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【世界水フォーラムプロジェクト】なぜ今下水疫学なのか

2021年は、人類にとって大きな節目であり、「ロックダウン」により街から人は消え、国境も封鎖されました。こうした危機が再び静かに足音を立てて我々の生活を脅かそうとしております。先日、「疾病X」というコードネームが世界保健機関(WHO)のリポートの中に記載されました(参照)。報告書によると、「疾病X」と名付けた感染症は次のパンデミックを引き起こし、いつ発生しても不思議ではないと警告されました。

<「疾病X」に言及し、世界パンデミック条項への合意を求めるペドロス事務局長>

(出典:Fox News

感染症の専門家間においてもグローバルレヴェルで活発な議論がなされており、「疾病X」は新型コロナウイルス感染症以上の致死性をもたらし、全世界で5000万人以上が犠牲になる可能性すらあるとの指摘が成されております。

昨今では新型コロナ 変異株「JN.1」米欧勢を始め各地域で感染を強めており、新たな脅威として警戒されております。この変異株「JN.1」がコードネーム「疾病X」かは定かではありませんが、2021年のパンデミックを振り返ると、感染動向を追えず、PCR検査においても利権化とまで批判されるに至りました(参照)。

こうした現状を受け、今後感染力の強い変異株などが世界に拡散された場合、我々は自分自身と、周りの大切な方々を守ることはできるのでしょうか。

弊研究所の社会貢献事業では、「Pax Japonica(パックス・ジャポニカ)」を掲げ、①予見的ガヴァナンスの見地に立ちながら、②リスクフリーな環境整備を行いつつ、③Public Engagementを伴う先端技術の社会的実装を実現して、④「グランド・チャレンジ」の解決をグローバル社会全体に転移させていくプロセスのことと定義しております。

このまま迎える「悲惨な未来」を「理想とする未来」に変えるべく、多くの方々も巻き込みながら先端科学技術を用いてグローバル課題の解決に取り組んでおります。今回は上記の「Pax Japonica(パックス・ジャポニカ)」の実現に向けた一つのプロジェクトとして、「下水」をヒントに取り組みを紹介したいと思います。

「下水」というのは、上水と比べて忌避される傾向にあり、文字通り地下に整備され日の光を浴びることはありません。しかしながら下水道の歴史を振り返ると、約4000年前のインダス文明の時代において雨水と汚水を別々に流すための下水道が整備され、我が国においては明治時代に下水が整備され人々の公衆衛生の改善や、社会課題を解決してきました(参照)。

<世界最古モヘンジョ・ダロの下水処理システム>

(出典:沢田建設)

それでは下水が感染症とどう関係があるのか。グローバルとりわけ米欧勢では、下水を使い新型コロナウイルスの感染動態を見る研究が進んでおります。「下水サーベイランス(Waste Water Surveillance)」と言われる検査方法で、従来のPCR検査を使わずに、ある一定の範囲内における感染動態を察知できます。

<既存の臨床検査との比較>

(出典:塩野義製薬HPより筆者が編集)

既存のPCR検査における感染動態の察知と異なる点は「経済的効果」と「察知できる範囲」である。費用という点では、一人一人に対して検査するのではなく、病棟や地域ごとの下水を採取することによりコストが安価で済むメリットがあります。また、PCR検査では無症状感染者や変異株が察知できませんが、下水疫学調査では察知が可能です。こうした取り組みは我が国ではまだ社会実装に至っておらず、神奈川県はこの下水サーベイランスが実施されている少ない都道府県の一つで、相模川流域で感染動態の調査を実施しております。

<下水中新型コロナウイルス量と流域新規感染者及び定点医療機関当たりの報告数>

(出典:神奈川県庁HP)

このグラフでは、2021年11月から2024年1月における実際の感染動態と下水サーベイランスで得られた数値を重ね合わせたもので下水サーベイランスの調査結果と実際の感染動態が大方重なっていることを示しております。この下水サーベイランスは社会実装に向け課題が多い我が国ですが、弊研究所では研究活動を支援し、世界水会議が開催する「第10回世界水フォーラム」において提言する予定でございます。

“疑いは知の始まりである(dubium sapientiae initium.)”
かつてフランス哲学者のルネ・デカルトが遺した有名な言葉ですが、身近なものほど使い方によっては社会課題を解決するカギへと変容する可能性を秘めております。

万が一、この下水サーベイランスの実装が進めば、感染症の研究・臨床担う新設の「日本版CDC」にも繋がる重要なプロジェクトでもあります(参照)。次回以降のコラムを通じて、読者の皆様と共に理解を深めながら、上記に係る活動を報告致します。

引き続き、ご支援・ご協力の程、宜しくお願い申し上げます。

社会貢献事業担当 岩崎 州吾 拝