「OPEC」から「OMEC」へ~国際組織の栄枯盛衰が示すグローバル社会の変転~ (IISIA研究員レポート Vol.85) – IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 – haradatakeo.com
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「OPEC」から「OMEC」へ~国際組織の栄枯盛衰が示すグローバル社会の変転~ (IISIA研究員レポート Vol.85)

ロシア勢によるウクライナ侵攻が長期化する中、自らの政治的目的を達するためにエネルギー資源を武器に行動する力を持つ同国勢は、世界的なエネルギー市場が脆弱性を抱えていることを浮き彫りにしていると言えよう(参考)。

アメリカン大学のジェフ・D・コルガン准教授は、「原油埋蔵量の所有をめぐる『資源戦争』の脅威はしばしば誇張されるものの、石油が戦争の主要な原因になってきたと明らかにしている。去る1973年以降の国家間戦争の4分の1から2分の1は、一つ以上石油関連の因果関係メカニズムに関連している。国際安全保障にこれほどの影響を与えたものは他にはない」という見解を示している。そのメカニズムとは具体的に、(1)「資源戦争」:国家が力によって埋蔵された原油資源を獲得しようと試みること、(2)「石油侵略」:石油がサダム・フセインやホメイニのような攻撃的な指導者を国内の反対勢力から遮断し、危険な外交的冒険主義に積極的に着手させる、(3)産油国における内戦の表面化、(4)「反乱への資金提供」:イラン勢がヒズボラ勢にオイルマネーを注ぎ込むこと、(5)「石油市場を支配すると見込んで引き起こされた紛争」:1991年のクウェート勢をめぐる米国勢のイラク戦争など、(6)「石油輸送ルートの支配をめぐる衝突」:輸送レーンやパイプラインなど、(7)「石油関連の不平不満」:石油国家における外国勢からの労働者の存在は、アルカイダのような過激派集団による地元民の勧誘を促している、(8)石油関連の問題が多国間協力の障害になるケース、といった事例を明らかにしている(参考)。

こうして長らく、戦争の主要な原因になってきた石油であるが、ロシア勢への依存度を減らすために低炭素エネルギーへの迅速な切り替えがより加速していくと見られている。例えば、欧州勢(EU)は化石燃料の消費でロシア勢への依存を減らす方法として、来る2030年までの環境目標達成のための投資に追加する形で再生可能エネルギーの導入、エネルギー効率化の加速、天然ガスの代替調達先を確保するなどの措置に1950億ユーロを投資するという計画を今月(5月)中に示す見込みであるという(参考)。また、バイデン米政権も電気自動車の普及など低炭素エネルギー移行のために必要な重要鉱物の国内生産を促進している。同政権が冷戦期でもある去る1950年に制定された国防生産法(DPA)を発動することで、リチウム、ニッケル、グラファイト、コバルト、マンガンなどの鉱物がDPA対象品目なり、7億5000万ドル(約910億円)の資金が鉱山会社の下で活用できることになるという(参考)。

(図表:米国勢における鉱物資源の輸入依存度)

(出典:Bloomberg

 こうした事情から、世界の新しいエネルギー・システムは「OPEC(Organization of the Petroleum Exporting Countries、石油輸出国機構)」から「OMEC(Organization of Mineral Exporting Countries)」へ移行する可能性があるとの指摘もあることは注目に値する。OMECは世界的コンサルティング企業であるKPMGとユーラシア・グループが新たに考案した造語で、こうしたグループはまだ存在しないものの、地政学的なパワーは石油を支配する諸国勢から重要な金属を支配する諸国勢へと移行する可能性があることを示したものである。今後10年以内に炭素排出量のネット・ゼロを目指すという目標を達成するために、発電からの炭素排出を減少させ、石炭に依存している製造業や運輸業で脱炭素化が求められている。再生可能エネルギー技術を大規模に展開する必要がある中で、世界におけるこれら資源の埋蔵量は需要予測を満たすのに十分であるにもかかわらず、将来の供給は大きなリスクに直面しているとKPMGは指摘している。つまり、これら「戦略的資源」へのアクセスや使用が広範な経済発展や技術革新、エネルギー転換にとって重要となることから、国家安全保障の名の下に政治化される可能性があり、こうした潜在的な需給ギャップや制約により、幅広い産業がこれら資源の生産や使用に関する陸上、海洋、経済におけるリスクにさらされることになるということである(参考)。

(図表:鉱物資源の採掘)

(出典:エネルギー庁

 ではOMECとはどのような組織となりうるのだろうか。OPECとOMECの大きな違いについてKPMGは、OPECのような価格操作カルテルを結成しようとする試みではなく、積極的な気候変動目標を持つ国と、重要な鉱物にアクセスできる企業との間の協力であるべきだということであり(参考)、脱炭素化時代を見据えて、世界的に影響力を有する組織として存在感を発揮する可能性は十分にあるとしている。「ウクライナ戦争」が継続し、米欧勢が既存の国連などを含んだ国際的なスキームそのものをロシア勢に不利な形で変更することで対抗し始める可能性もあること、また国際通貨基金(IMF)の役割についても疑義が生じていることも一部で伝えられる中で(参考)、グローバル社会を理解する上で、今後どのような国際組織が形成され、力を有することになるのか、その動向により一層注目していくべきではないだろうか。

グローバル・インテリジェンス・グループ リサーチャー
倉持 正胤 記す

 

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