議長国がイタリアなのは何故か? ~B20 Italy 2021報告~
去る1月21日にB20が正式に開幕した。B20とは「G20ビジネス・サミット」のことだ。我が国における知名度はそれほど高くはないものの主要な多国籍企業の経営トップを含むG20諸国から1,000名以上の企業コミュニティの代表が参加する。G20首脳たちが議論すべき政策提言を「産業」面から行う文字通りG20を支える存在である(参考)。
ここで重要なのはG20もB20も本年(2021 年)イタリア勢が議長国であるということだ。
さらにヴァチカン勢主導の「インクルーシブ・キャピタリズム」も今年開催される。「資本主義(キャピタリズム)」が本来「ごく一部の限られた人たちのため(exclusive)」であったのに対し「すべての人々のため(inclusive)」の「資本主義」という新たな定義を提唱しているものだ。主要メンバーはマーク・カーニー国連気候変動特使(前英中央銀行総裁)、リン・フォレスター・デ・ロスチャイルド、ダレン・ウォーカー(フォード財団 会長)などである。
世界経済の中核をなす国々とプレーヤーたちが集い、これからの世界の枠組みを打ち出す場になっているのである。それらがいずれもイタリアで起ころうとしている。このことからも同国の動向が注目に値することはすぐにお分かりいただけるのではないかと思う。
(図表:イタリア)
(出典:G20 Italia 2021)
今年のB20議長はイタリア産業界の重鎮エマ・マルチェガーリア(Emma Marcegaglia)である。彼女を知らないイタリア人はほとんどいない。イタリアでは女性会社役員の割合がわずか6パーセントと欧州勢(EU)の中でも最低レベルの一つとされている中イタリア版経団連ともいえるコンフィンドゥストリアの会長を務め、CEOである家業の鋼鉄会社マルチェガーリアは5か国で7,500名を雇用するグローバル・カンパニーである。長年イタリアのメディアにおいても存在感を示してきた(参考)。
今回のB20の開幕のスピーカーにはジョン・ケリー米大統領特使(気候問題担当)、ラリー・フィンク氏(ブラックロックCEO)、デビッド・サッソリ氏(欧州議会議長)、デビッド・ビーズリー氏(世界食糧計画事務局長)、デビッド・ウォーカー氏(WTO総会議長)、ダリオ・スカンナピエコ氏(欧州投資銀行副総裁)、マイケル・R・ブルームバーグ氏(ブルームバーグL.P.創業者)等が名を連ねた。
米大統領就任式の翌日の開催である。トランプ「前米大統領」の4年間に対する「反動」のようなオープニングだったと言えるかもしれない。バイデン「新米大統領」が「パリ条約」への復帰を発表した直後だったこともありスピーカーたちからは「アメリカが帰ってきた」のフレーズが連呼された。
(図表: 2021年B20イタリア)
(出典:B20 Italy 2021)
頻出した共通のキーワードは「多国間主義(multilateralism)」である。マルチェガーリアB20議長もこのワードを出し「我々は『保護主義』や『ナショナリズム』に対抗する(against)」とオープニングを締めくくった。
今年のB20のテーマは“Reshape the Future: Include, Share, Act(未来を再構築する:包含する、共有する、行動する)”である。
弊研究所は去る2015年からB20に参加してきた。今年も「デジタル・トランスフォーメーション」のタスクフォースのメンバーとして10月にローマで開催される最終サミットでのG20への提言まで関与していく。
今回のG20及びB20がパンデミックを受け大きな転換を求められること、さらには議長国がイタリアであることに重要な意味があると捉え、とりわけG20/B20そのものの在り方に関する新たな提案がなされるのかに注視してまいりたい。
グローバル・インテリジェンス・ユニット Senior Analyst
二宮美樹 記す
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