トランプが仕掛ける決済系バトル 対する中国勢の報復は?(IISIA研究員レポート Vol.4)
米国勢が着々と中国共産党「封じ込め」を進めている。
トランプ米大統領が安全保障上の問題からTikTokに対する2つの大統領令に署名した。1つは8月6日(米東部時間)に米国勢を拠点とする親会社であるByteDance、さらにはWeChatを運営するTencentとの取引を45日後に禁止するもので、もう1つは同14日にByteDanceに米国勢の中におけるTikTokの事業を90日以内に売却するよう命じるものであった。これに対してTikTokとその親会社であるByteDanceは同24日、トランプ米大統領政権をカリフォルニア州中央地区連邦地裁に提訴した。
(図表: トランプ米大統領)
(出典: Wikipedia)
TikTokへの制裁が完了したら、次なる対中封じ込め策として米国勢は中国勢“越境するテクノロジー主体”であるAlibabaに向かうのではないかという見方がある。米国勢の狙いは最終的に中国勢のデジタル通貨を暗礁に乗り上がらせることではないかと考える。事実、米ドルの基軸通貨体制による支配に対して中国勢は人民元のデジタル通貨化によって世界の覇権を狙ってきた経緯がある。
COVID-19によって「他人が触ったお金を触る必要がない」いわゆる「非接触型(コンタクトレス)決済デジタル決済がますます加速していく。
(図表: 香港証券取引所)
(出典: Wikipedia)
そうした状況の中で、いよいよ米中勢にとって決定的な“角逐”の「引き金」になりうるニュースが出た。
中国のAlibaba Groupの関連会社であるAnt Groupが香港と上海で新規株式公開(IPO)を申請したのだ。これによって200億ドル以上が調達される見込みである。Ant GroupのIPO規模はここ数年で最大の一つに数えられるものだ。
そうした「反攻」に対して米国勢がいかなる措置を講じるか。これに対し中国勢はさらなる対抗策を取るのか。考え得る次なるターゲットはGAFAのはずであり、中でも中国市場が成長と成功の原動力になっており、最も「中国依存」の強いAppleが対象になるものと弊研究所は考えている。
その反撃は「いつ」になるか。注視してまいりたい。
グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー
二宮 美樹 記す