歴史は二度繰り返す。ただし、二度目は「喜劇」として(原田武夫の”Future Predicts”. Vol. 68)
「こちらが満を持して日本刀を抜いたらば、先方は巨大な青龍刀を抜いて襲い掛かってきた」—―—現下の我が国における”政局”見ると、そんな光景が目に浮かぶようだ。高市早苗・総理大臣は明らかに自らが属する多くの同僚たちと相談することなく、ほんのわずかの手勢と共に「総選挙」に臨むことを決意した。それで事態が収まるとは誰しもが思ってはいなかったが、それでも当人はといえば「自らに対する高い支持率で何とか乗り切ることが出来る」とかなり本気で思っていたことであろう。
しかし、そうは問屋が卸さなかった、のである。かつての与党「公明党」は事もあろうに(と、少なくともこれまでの流れでは思われた)「立憲民主党」と合同会派どころか、さしあたり衆議院限定ではあるものの「新党」結成まで打ち出したのである。明らかにかつての「新進党」を意識した動きなのであって、ここに今の自民党内における非主流派、とりわけ散々な目にあって総裁の座から引きずり降ろされた石破茂・前総理大臣とその周辺の自民党所属議員らが加わるとするならば、正に「第二の新進党結成」ということになってくるのである。こうした一連の流れを見るにつれ、当時の「亡霊」が目に浮かんでくる。そう、「闇将軍」の座を受け継いだ小沢一郎・元自民党幹事長、その人である。誰しもが「この人は永田町では意味を失った」と信じ込んでいたわけであるが、決してそうではなかったのである。やはり「政体」の世界においてはとにかく「生き残る」ことが大事なのである。政治的にも、また”生物学的”にも、だ。
「この出来事」に直面し、大いに当惑したのは高市早苗・総理大臣その人であったはずだ。なぜか?———高市早苗、その人こそ、この「新進党」を通じて政治における居場所をようやく見つけられた人物だったからである。しかしながらその後、多くの先輩同僚たちが”政局”の中で右往左往しているのを横目に見つつ、メディアの前で一人颯爽と「離党」を宣言。新たな居場所としての「自民党」へと入党し、その後の政治的キャリアを築き始めたのであった。あの時は正にこうした「新進党」の男性先輩同僚議員たちは「してやられた」と想ったことであろう。しかし、である。「歴史は二度繰り返す」のである。今回の「中道改革連合」という名の”新・新進党”が結成されることにより、他ならぬ高市早苗・総理大臣こそ、窮地に追い詰められたというわけなのである。党内からは「調整せずになぜ総選挙に踏み切った」との怒号が飛んでいるのが目に浮かぶ。他方で「連立」相手であった日本維新の会も必死であり、「大阪ダブル選挙」も同時に行いつつ、関西では選挙区調整を自民党との間で全く行わないのだと聞く。さらに言うならば、不満を抱く一般市民層、特に女性を中心とした「サブスク政党」である参政党が「今回は20議席獲得だ」と鼻息が荒い。そしてイデオロギー的には近いかもしれないが、若者層へのSNSを通じたアピールでは自民党をはるかに凌駕する(と言われている)国民民主党も容赦しないのである。結果、高市自民党は孤独な総理・高市早苗と離党者が出て屋台骨が崩れ始める(いわゆる)自民党とに空中分解することとなる。2月上旬にはそうした「倭国大乱」の構図が誰の眼にも明らかとなる。
「歴史は繰り返す。ただし二度目は喜劇として」———かつて左翼の賢人はその様に記した。社会統計学を少しかじった読者諸兄であればご存知のとおり、正に「フラクタル・冪(べき)」というべき現象が我が国の、目の前で起きている。しかし、だからこそ筆者には「あの時」と”違っていること”が気になってならないのである。それは、”あの時”は昭和天皇崩御(1989年)の直後であったということ、そして”今”は益々健やかな今上天皇がそこに在られるということだ。そして今年に入って行われた「歌会始」において、今上天皇は次の様な御歌を詠まれたと聞く。
御製
天空にかがやく 明星眺めつつ 新たなる年の 平安祈る
明星とは「金星」を指す。そして金星が何を意味しているのかを知れば、ここでの御真意を立ちどころに忖度することが出来る。つまりそういうこと、だ。「倭国大乱」となるからこそ、「新たなる平安を祈る」と締められているというわけなのだ。
かくなる状況になっても、まだ「これまでと同じで大丈夫」と決め込んでいる、inertia(慣性)の住人である方々とはここで決別しなければならない。なぜならば「ここで終わり」ということは、「この次の世」も首をもたげ始めるからだ。しかしそこでの我が国は恐ろしく苦しい状況に置かれることも目に見えている。そうであるからこそ、少しでも「平穏」「安心」を求めて何が最善の選択肢なのか。そのことを我が国においてだけではなく、グローバル社会全体に問い、そして実際に行動していく、そういう一年にしたいとあらためてこの御製を唱えながら強く想った次第である。いずれにせよ、ここから、だ。そのことを噛み締めて、前に進みたい。
2026年1月17日 東京の寓居にて
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 ファウンダー/代表取締役CEO/グローバルAIストラテジスト
原田 武夫記す
(*弊研究所では上記のとおりの「新しい歩み」を”今・ここ”から始めるにあたって、共に歩みを進めて頂ける方(スタッフ職)を募集しています。くわしくはこちらをご覧下さい。)