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「2つの保障(security)」は誰が総理になっても我が国から無くなる。(原田武夫の”Future Predicts”. Vol. 55)

早いものでこのブログ・シリーズも55回目を迎えた。思えば我が研究所を当初、任意団体で立ち上げようと決めた時、今は神戸に暮らすその後継者を通じて、米国勢の「奥の院」であるセファラディのリーダーたち(American Sepharidc Elites)たちにこう言われたのである。

「タケオ、あなたの問題意識は分かる。しかし、一番大変なのは他でもない、あなたの国に暮らす日本人たちにそのことを理解してもらい、そして動いてもらうことなのだよ。それはほぼ不可能と言って良いことであり、やるだけ疲れることでもある。あなたがどうしてもそれをやるというのであればどうぞおやりなさい」

毎週こうやって公式ブログを通じて発信をし、あるいは公式YouTubeチャンネルを通じても発信をしているわけだが、その度にあの時のことを思い出す。そして自問自答するのである、「さて、状況はあの時と比べて変わったのか?」と。

本日(4日)、我が国では自由民主党総裁選を巡る投開票が行われる。それを巡ってマスメディアは懸命に「盛り上げよう」と必死であったわけだが、同時に滑稽なほど「予定調和」に対するシラケが漂っていたことも事実だ。どちらに転んでも「結局は何も変わらないだろう」という諦めがそこでは強く感じられる。事実、有名な任侠映画になぞらえて「変化なき戦い」なるYouTube動画がバズっているとも聞いた。筆者も拝見したが、実によく出来ていると感じた。そう、当事者たちは「盛り上げ」に必死だが、不思議なほどに「シラケ」がぬぐえない。これが我が国における変わらぬ現実なのである。

外務省を自らの意思で出奔してから早いもので20年の月日が経った。その間、実に多くの出会いに恵まれ、その度に多くを学ばさせて頂いた。その中で一つはっきりと知ったことがあるのである。例えば「ベルリンの壁の崩壊」。これはその直前になぜかハンガリーとオーストリアとの間の国境地域に東ドイツ(当時)の市民たちが「ピクニック」に行き、ハンガリーの国境警備隊がバリケードを解除したところから始まったわけであるが、筆者はその後、そのための「資金」はヴァチカン勢がポーランド勢経由で東ドイツ勢に引き渡したと、直接これに携わった我が国のとある金融マンOBから聞いた。そして、その後の一切の展開も、実のところ米国勢のリーダーたちが考え出したものであり、その功績で例えばライス米国務長官はその後「国務長官」としてのステータスを褒美として与えられたとも聞いた。つまり、「この世に偶然など存在しない。全ては必然だ。私は賭けても良い」(F.D.ローズヴェルト)というわけなのである。

そう考えてみると、結局、今起きていることも同じく、あらかじめ考え抜かれたことの一断面に過ぎないはずなのである。そしてまた「これから起きること」もまたそうなのであろう。しからば「ここから」一体何が起きるのであろうか。とりわけ我が国を巡っては結局、何が生じるのであろうか?

この問いかけに対する「答え」として筆者はこう考えている。「これから起きること。それは我が国において2つの保障(security)が消失することだ」

すなわちこういうこと、だ。———トランプ米大統領が来る27日にまず来日する。そこで我が国に対して(誰が総理大臣になろうとも)「防衛費を対GDP比で3.5%にまで引き上げろ」と要求する。我が国の側はというと、政治家たちはいずれも軍需産業から裨益しようと鼻息を荒くしていることもあり、これに応じる。しかし、その額、実に20兆円余なのである。財務省はこれを「赤字国債の乱発」で対応しようとするが、世界的な金融のリバランスの中で下手をすると我が国の長期金利急騰という最悪な事態になりかねないという観測が流され(日銀は間もなく「利上げ」するのである!)、これは出来ないということになる。それではどうするのかというと、もはや他に手段はない以上、既にあるパイから切り分けろということになる。そして「聖域」とされてきた領域、特に社会保障費(social security)にメスを入れざるを得なくなるのである。他方、そうこうしている間に世界情勢は文字どおり、戦乱で大混乱となる。我が国はそうした中で防衛費の増額もままならないまま、国論は荒れに荒れ、政治的リーダーシップはますます不安定になる。そこに「核大国」と自称し始めた北朝鮮による示威行為がロシア勢をバックにして始まり、かつ台湾を巡っては一部の中国人民解放軍が暴走。我が国は悪夢の「東アジア有事」に巻き込まれることになるわけだが、もはや国庫は尽きているのである。「国家安全保障(national security)」はそうした中で空文化し、我が国からは2つの保障(security)が消えたことが明らかとなる中、大混乱、さらには「倭国大乱」の時代が再来することとなる―――。

「進むべき道はない。しかし進まなければならない。」(ルイジ・ノーノ)

今日(4日)という日は、この「既に見えている方向」へとまた一歩、我が国が前に進む時である。そのことを噛み締めながら、前に踏み出したい。なぜならば「国破れて」も、「山河」は残るのであるから。そしてそうである時、私たちヒトは「本当に大事なこと」とは何か、ようやく気付くのであるから。

2025年10月4日 軽井沢で雨の木立を見つめつつ

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所 ファウンダー/代表取締役CEO/グローバルAIストラテジスト

原田 武夫記す

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