知られざるマイクロ波の世界―殺人光線か次世代エネルギーか?(IISIA研究員レポート Vol.30)
米国勢の中央情報局(CIA)が昨年(2020年)末にマイクロ波攻撃の疑いに対処するためのタスクフォースを開始した旨“喧伝”されている(参考)。
(図表:マイクロ波を利用した多重無線通信設備)
(出典:Wikipedia)
マイクロ波を人体に対して照射すると不安や恐怖といった精神的症状やめまい、強い倦怠感、吐き気、不眠といった身体的症状をもたらすことができる。
マイクロ波は容易に建築物などを透過するためアンテナなどを用いて広範囲を照射することができ、さらに照射された個人や集団は必ずしも照射されたことに気がつかないため兵器としての利用可能性が取り沙汰されてきた。
去る2016年にはキューバ勢に駐在していた米国勢外交官とその家族及びCIA職員ら44名が頭痛や吐き気、耳鳴りといった症状により帰国することとなり、翌年(2017年)にも中国勢の広東省にある米国領事館において外交官とその家族15名に同様の症状が現れ帰国することとなった。これらの症状は「ハバナ症候群」と呼ばれその後報道が途絶えていたものの、昨年(2020年)末、米国科学アカデミーが「ハバナ症候群」について「指向性」エネルギー兵器であるマイクロ波を使用した可能性及びロシア勢においてこの種の研究が行われていることを指摘した(参考)。
更に昨年(2020年)11月には中国勢がインド勢との国境を巡る“角逐”においてマイクロ波兵器を利用した旨、英国勢が“喧伝”していたのである(参考)。
米国勢が今次タスクフォースを開始した背景には中国勢との将来的な“角逐”があるのだろうか。
これに関連してもうひとつ注目したい動きがある。
今次タスクフォースの開始が報じられた前日、(2021年)2月24日付のThe Jerusalem Post誌で米国防総省が宇宙太陽発電システムのプロトタイプのテストに成功した旨“喧伝”されていたのである。
宇宙太陽発電システム(SSPS)は1968年に米国勢のPeter. Glaser博士により提唱されたもので、宇宙空間で太陽エネルギーを集め、そのエネルギーを電気に変換し地球上に伝送するシステムである。そしてこの電気エネルギーを地球に向けて伝送する際、電気エネルギーは一旦マイクロ波に変換され地球上に設置した受電アンテナ(レクテナ)で受け取った後で電力に再変換するのである(参考)。
この構想が第1次オイル・ショックの後に特に注目を集めたことに象徴されるように化石燃料に頼らないエネルギー確保策として捉えられた。
しかし財政上の問題や政策上の方針により国としての継続的な研究を行っているのは現在では我が国のみであるとされていた(参考)。
今次「マイクロ波攻撃」、それも中国勢がそれを実用化したというニュースの“喧伝”のタイミングで表立って宇宙太陽発電システム開発を進めてこなかった米国勢がそのテストに成功していたという点に鑑みれば、マイクロ波攻撃に対するタスクフォースはむしろ、この宇宙太陽発電システムの実用化にあたり健康被害が確認された際の対応として開始されたものとも考えられる。
米国勢を中心に宇宙太陽発電システムの実用化とその裏での健康被害が多発することになるのか。引き続き注視していきたい。
グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー
佐藤 奈桜 記す
前回のコラム:熱狂の仮想通貨-イーサリアムの死角―(IISIA研究員レポート Vol.28)
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