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コロナ後に向けた「わたしたちの街」と我が国の豊かさ (IISIA研究員レポート Vol.43)

世界で「最も住みやすい」都市として、オセアニアと日本がトップに上がった(参考)。

新型コロナ・パンデミックの影響でこれまでの欧州勢優位であったトレンド(順位)がひっくり返った形となった(参考)。

英エコノミスト誌が毎年発表している「The Global Liveability Index 2021」(「住みやすさ」のグローバル・インデックス)によると、12位に転落したウィーン(オーストリア)に代わり、オークランド(ニュージーランド)が1位となり、次いで、大阪(日本)、アデレード(オーストラリア)、東京(日本)、ウェリントン(ニュージーランド)とアジア太平洋地域の街が並んだ。

1位 オークランド (ニュージーランド)  96.0

2位 大阪 (日本) 94.2

3位 アデレード (オーストラリア) 94.0

4位 ウェリントン (ニュージーランド) 93.7

4位 東京 (日本) 93.7

(図表:ニュージーランド・オークランド市)

(出典:Wikipedia

今回の世界の中における「住みやすさ」の平均スコアは、パンデミック前の平均スコアと比較して7ポイント低下。国境の閉鎖によって守られた都市、健康危機への対処能力、ワクチン接種キャンペーンの展開速度などが、ランキングに大きな変化をもたらした。欧州やカナダの多くの都市が、文化やスポーツのイベントを制限したり、学校やレストランを閉鎖したりして、ランキングを下げた。

東京、大阪といったすでにネームバリューがあり、自動的に人が集まるような大都市とは違い、人口減少という問題に直面している街は多い。

「人口増加」には「規模(size)」と「密度(density)」という2つの基本的な要因があるという。

カンザスシティ連邦準備銀行のエコノミスト、ジョーダン・ラパポート(Jordan Rappaport)博士らが発見したところによれば、「人口増加は、人口50万人程度までは(都市の)規模と正の相関があり、50万人から300万人までは規模の増加とは無相関となり、300万人以上になると規模の増加と負の相関関係」というパターンがある(参考)。

他方で、人口急増に伴う「混雑(congestion)」という問題もある。

たとえば、都心への利便性が良く、タワーマンションが10棟以上立ち、商業施設も増加したことで、「住みたい街」として人気が高まり、上位の常連であった武蔵小杉では、駅の改札に入るために住民は毎朝行列に並ばなければならないという事態まで生じた(参考)。2021年「住みたい街」のランキングでは14位と大幅に順位を下げている(参考)。

「美のプレミア(割増金)」(beauty premium)と経済学者らが呼ぶ有名な現象がある(参考)。

「容姿端麗な人ほど収入が高く、キャリアで成功する傾向がある」というものだが、「街づくり」にもそれが当てはまるという研究結果が出された(参考)。

(図表:カナダ・ケベック市)

(出典:Wikipedia

フィラデルフィア連邦準備銀行のジェラルド・A・カルリーノ(Gerald A. Carlino)博士とマサチューセッツ工科大学(MIT)のアルバート・サイス(Albert Saiz)博士が2019年に発表したもので、都市(cities)や街区/区域(neighborhoods)に大きな「美のプレミア」が存在していたというものだ(参考)。

「都市の美しさ」は、「税金の低さ」と並んで、都市全体の人口増加の最も重要な予測因子となっていた。

「絵のように美しい(picturesque)」場所が他の都市の2倍ある都市では、1990年から2010年にかけて、人口と仕事の増加率が10%以上となった。

「絵のような美しさ(picturesqueness)」において上位25%の都市は、下位25%の都市に比べて、大卒者数の増加率が3%近く高かった。

そして、「絵のように美しい」都市の上位4分の1では、下位4分の1よりも住宅価格が16%高くなっていた。

(図表:神戸)

(出典:Wikipedia

さらに「街の美しさ(city beauty)」は「大きさ(size)」の影響は受けないこともこの研究で明らかになった。小さい規模でも、中程度の規模でも、公園や歴史的建造物がより多く、水辺や山が近くにあり、空が澄んでいて雨が少ない場所を人は同等に「美しい」と感じる傾向があった。

街の「構造」は「イノベーション」にも関係がある。

20世紀初頭のアメリカで「都市計画(urban planning)」の分野に変革をもたらしたジェーン・ジェイコブス(Jane Jacobs)は、都市の密集した地域に住むことが、ダイナミックなイノベーションを掻き立てると主張した。

昨年(2020年)末に彼女の言葉が正しかったことを示唆する研究結果が発表された(参考)。

この研究によれば、道路の密度や接続性(connectivity)が10%向上すると、イノベーションが0.05〜1%増加していた。

これは、雇用密度が10%増加すると、一人当たりの特許件数が10年間で2%増加し、高速道路の接続性が10%増加すると、都市圏全体の特許件数が5年間で約2%増加するという先行研究とも一致するという。

世界各国における経済が回復していく中で、これから我が国への海外渡航者の増加に拍車がかかる。そのとき、東京と大阪以外の我が国の美しさも目にして欲しいと望む。

グローバル・インテリジェンス・ユニット Senior Analyst

二宮美樹 記す

前回のコラム: 「コロナ・リッチ」と再燃する“富裕税”という刻印

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