【緊急コラム】米軍艦艇がイラン無人機を撃墜 ~戦争なのか?~
*本稿は去る4月に入社しました、防衛省・自衛隊幹部を務めあげた島村修司が、専門家でないと分かりにくい軍事事情について、現場の視点を織り交ぜながら分かり易く伝える不定期コラムです
*ホルムズ海峡において米軍艦艇がイラン無人機を撃墜した旨、報道されました。
これを受けて「IISIA Defense Brief」の号外を発出させて頂きました。今回、その一部を特別に皆様にも公開致します!本商品の詳細は以下のURLを要チェック!!:
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はじめに~米軍艦艇がイラン革命防衛隊の無人機を撃墜~
米国政府は7月19日、ホルムズ海峡を通過中の米海軍強襲揚陸艦に警告を無視して近接したイラン革命防衛隊の無人機を撃墜した事実を公表した。この撃墜事象発生は1日前のことであり、直ちに米軍/イラン軍間の本格的軍事紛争を誘発する緊要性があったとは考えづらく、一方でこの事象を活用してイランの違法性と国際経済活動への脅威を国際社会に訴え、米国が現在提唱している「有志連合」構築にむけた協賛を得る米国の企図が窺える。他方で密輸タンカーの拿捕事実をイラン革命防衛隊が公表したことは、無人機撃墜事実の公表によって醸成される可能性のある国際社会の対イラン批判を緩和する対抗措置であると考える。いずれにせよこの両者間の応報のみでは大規模軍事衝突に突入する蓋然性は低い。
戦争の可能性 ~戦争に突入する可能性はあるのか~
米国以外の外国籍タンカーをイランが拿捕したことはイランに対する国際社会の疑念と反発を招く蓋然性が相対的に高く米国の主張に対し優位性を与え得る。したがって米国の同盟国を中心に中東のエネルギー資源への依存度の高い諸国の協賛を得た上で有志連合構築が短期に達成される蓋然性は高まったものと考える。有志連合が実現すれば米国は軍事的にイラン本国への戦力投射に集中できる訳であり、対イランの軍事的姿勢をより攻勢的なものに転ずる蓋然性が高い。したがって、米国/イランの大規模軍事紛争に突入する蓋然性は有志連合が構築された時点で激的に高まるものと分析する。
おわりに ~戦争突入の時期を考える時の指標は何か~
米国務省からは既に我が国を含む関係国の在米公館に対し、近日中に開催する「有志連合」に関する説明会への招聘が行われた模様である。「有志連合」の構築は今回の事象を受け比較的短期の内に達成されるものと推察するが、同時に、「イラン勢の核問題を巡る7か国合意」問題を解決し今次緊張状態を解消するための欧州諸国を中心としたイランとの協議は継続中であり、来月(8月)末または来る9月上旬頃までの間は、新たな軍事的衝突が生起しない限り両国で大規模な軍事紛争に突入する蓋然性は低い。しかしその時期までに関係国で打開策が見いだせない場合、イランはウラン濃縮度を更に上昇(20パーセント以上)させ核兵器開発の姿勢をより強めることとなるため、これに反発する米国がイランの核施設に対するサイバー攻撃や限定的な軍事攻撃を加える蓋然性は一気に高まるものと思料する。したがって、来月(8月)末または来る9月上旬が軍事衝突に向かう「レッド・ライン」であるものと分析する。
(終わり)
今後の推移について株式会社原田武夫国際戦略情報研究所は軍事作戦の専門的知見に基づく分析評価を不定期にお伝えして行きます。
*IISIA Defense Brief」の詳細は以下のURLを要チェック!!:
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島村修司(しまむら・しゅうじ)
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所グローバル・インテリジェンス・ユニット ゲスト・ リサーチャー。1981年防衛大学校電気工学科卒業。1981年より2015年まで防衛省・海上自衛隊に勤務。同期間中、英国陸軍教育機関、英国海軍参謀大学、ロンドン王立大学(安全保障修士)留学。米国海軍大学連絡官、同戦略部研究員、米国海軍戦闘開発コマンド交換士官、日米防衛当局間協議等に従事。2017年衆議院議員公設第一秘書。2019年4月より現職。