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国際手配犯 英国勢から初の引き渡し 大逃亡劇の主役・ゴーン被告との違いは

我が国の国際捜査にとって後押しとなるのだろうか。東京都渋谷区の高級宝石店で去る2015年11月、貴金属約1億600万円相当が奪われた事件で、警視庁と英国勢の捜査当局が、国際手配された英国籍の男3人の身柄引き渡しに向けて協議をしている。我が国の政府は英国勢と犯罪人引渡条約を締結していない。実現すれば、締結していない国から相手国民の引き渡しを受ける警察として初のケースとなる。

事件は、渋谷区神宮前4丁目の商業施設「表参道ヒルズ」内の「ハリー・ウィンストン」で発生した。客を装った男3人が警備員を殴り、ショーケースを壊して指輪など46点を奪うという実に荒っぽい手口だった。警視庁は、防犯カメラ捜査などから逃走した3人をケリー・ダニエル・リー容疑者(41)とチャッペル・ジョー・アンソニー容疑者(33)、事件当時19歳の男(23)と特定する。しかし、いずれも事件2日後に出国してしまっており追及は途絶えてしまう。その後警視庁は2017年10月、強盗致傷と建造物侵入容疑で逮捕状を取って、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて手配していたのだ。

(図表 強奪された宝石のショーケースを調べる警視庁の捜査員)

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(出典:産経新聞)

我が国が犯罪人引渡条約を締結しているのは米国勢、韓国勢の2か国だけである。それ以外の外国人が逮捕前に母国に逃れた場合に身柄引き渡しは困難であって、代理処罰、つまり国外犯処罰規定による訴追を要請するケースが一般的となっていた。

ではなぜ今回、未締結国である英国勢が引き渡しに応じたのだろうか。関係者によると、英国勢の司法制度には自国民でも犯罪を行った国や地域で処罰されるべきだとの理念が根底にあって、捜査当局は今回の協議に理解を示したという。またそもそも、我が国の警察が英国勢と引き渡し条約を結んでいないのにも理由があるようだ。

関係者によれば、犯罪引き渡しで最も重要な要素は相手国の逮捕権の運用実態だという。独裁的な国家ではそもそも恣意的に運用されている可能性がある。我が国が条約締結している他国勢が少ないのは、それらを見極めて慎重になっているためと考えることができる。
今回、英国勢が引き渡しを認めたのも、我が国が厳密に逮捕権を運用している、つまりは“法に則り的確に捜査を行っている”ということが認められたということの証左である。

他方で先般、日産のカルロス・ゴーン被告の大逃亡劇が世界中の耳目を集めた。中東・レバノン勢に逃げ込むよう計画したのは、レバノン国籍を持つ夫人のキャロル容疑者だとも“喧伝”されている。そして実際に逃亡劇で暗躍したのは米国勢の元特殊部隊員であった。

国を跨いでの逮捕権という究極の権力行使、運用の在り方について改めて考えされられる一方、ゴーン被告のようなケースにはどう対処すべきなのか。我が国の国際捜査の課題でもあろう。

グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー
羽富 宏文 記す

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