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イスラム国と「北海道テロ」に襲われる日本 (連載「パックス・ジャポニカへの道」)

イスラム系武装集団による惨劇の度合いが日増しにエスカレートしている。いわゆる「イスラム国(IS)」によるフランス・パリでの同時多発テロ(13日)に続き、マリの高級ホテルで今度は「アルカーイダ」によるテロが発生した(20日)。事態は緊迫の度合いを増してきている。

我が国ではどういうわけか「次は米国、しかもニューヨークが標的となる」という見方が強い。しかし私は現段階において次の2つの理由から、その可能性はむしろ低いと考えている

第一に、マーケットの定量分析に基づく所見である。実のところ、先月(10月)の頭の段階から、パリでの惨劇が発生した13日から16日頃までの期間に、ユーロ価が崩落する可能性が高いことがあらかじめ判明していた。そのことから考えられるのは「欧州勢のいずれかが“デフォルト(国家債務不履行)”危機に陥る」か、あるいは「イスラム・テロが欧州勢で発生するか」のいずれかであると弊研究所では分析し、その旨を調査分析レポートであらかじめ提示していた次第である。その後、”事実がこの分析に追随する“ことになったのであった。

このこととの比較でいうと重大な事実がもう一つある。それは同じく「ユーロ価の著しい崩落」が今週(22日週)のある段階で生じることが、同じく定量分析に基づき今月(11月)初旬から既に明らかになっているという点である。今回についても現状を見る限り、金融マーケットにおける激変は想定しづらい状況にある。そのことを踏まえれば、想定出来るのはやはり「イスラム・テロが欧州勢において発生する」というオプションなのである。ちなみに米ドル価について、ヘッジファンドら”越境する投資主体“たちはこうしたポジショニング(ユーロ崩落=円高転換を前提とした売買行動)をとってはいない。したがって「次回はニューヨークではない」というわけなのだ。

第二に、パリでの同時多発テロ事件を受けて動揺しているのは他でもないカトリック勢だという点である。イタリア・ローマにおいてヴァチカン勢が狙われているとの前提でアラートとなっていることは我が国でも報じられているが、もっと過敏な反応を示している国があるのである。同じくカトリック勢であるポーランドだ。先日、ポーランドでは「イスラム過激派によるサリンを用いた攻撃が行われた場合」を想定した演習すら行われた。余りにも個別具体的な想定である点に注目しておきたい。

一方、米国勢は多民族多宗教国家である。とりわけニューヨークは「人種のるつぼ(melting pot)」なのであって、これをカトリック勢の拠点ということは出来ないのである。このこともまた、「次回はニューヨークではない」と主張する根拠となり得るというわけなのである。

「猛毒サリン」―――やや突拍子もないように聞こえるが、いわゆる「イスラム国(IS)」に至るまでの軌跡を辿ると実はサリンを巡るストーリーが出て来ることの留意しておかなければならない。シリア勢のアサド政権に対する「反体制派」は2013年の段階でサリン・ガスを実戦に用いていたという国連関係者による証言があるのだ。そしてこのシリア勢の「反体制派」はその後どういうわけか「イスラム国(IS)」の中核勢力になり果てた。つまり、普通に考える限り、この「反体制派」を経由して猛毒サリンは「イスラム国(IS)」の手に渡ったと考えるべきなのである。

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そして近々、テロの「実戦」において猛毒サリンが使われた事案といえば何といっても我が国における「地下鉄サリン事件」(1995年)なのである。同じくファナティックとはいっても当時、このテロを行ったのは宗教集団「オウム真理教」の信徒たちであった。確かにイスラム教原理主義と宗派が違う。だが、20年前の「地下鉄サリン事件」と今これから(恐らくは欧州勢の諸都市において)発生するであろう「サリン事件」の間には、いわば大きな意味での類似性があり、互いにフラクタルの中にある“相似象”である可能性が高いというべきなのだ。そしてそうである以上、我が国は20年前の惨劇を如何に処理したのかと欧州勢を筆頭とした国際社会全体から、否応なく注目を浴びることになる。

率直に言うと、私はこうした展開が見られた後のいわば「第2フェーズ」において、他ならぬ我が国も「イスラム国(IS)」及びそれに類似したイスラム系武装集団とそのシンパらによる激烈なテロのターゲットになる可能性が高いと考えている。昨年(2014年)10月に26歳の北大生らが「イスラム国(IS)」への参加を企図し、私戦予備・陰謀の罪状で検挙されたことは記憶に新しい

もっともこうしたイスラム系武装集団による我が国への浸透はつい最近始まった話ではないことに留意しておく必要がある。例えば2004年の段階で「アルカーイダ」の人的ネットワークが我が国に潜伏しているとして捜査当局による強制捜査が行われた経緯がある。その後、直近では「アベノミクス」による円安で外国人観光客が殺到し、日本中の宿泊施設で溢れかえっている現状を鑑みれば、我が国公安当局にとって最も厄介な状況が到来していることは容易に想像がつくのである。

もっとも現在、我が国の公安機関、とりわけ公安調査庁の最大の関心事は「安保法制」に反対する若者集団であるSEALDsだ。そのコア・メンバーについては既に本人はもとより、その家族の一人一人に至るまで思想と行動が監視されているという非公開情報がある。来年(2016年)7月に実施が見込まれている参議院選挙に向け、この団体とそのシンパたちによる動きが決定打になることは間違いないからである。そのため、安倍晋三政権は公安当局に命じ、その挙動を逐一監視しているというわけなのである。

無論、SEALDs自体は「民主主義の擁護」を主張する団体であり、ここで取り上げているイスラム系武装集団とは縁もゆかりもない。だが問題は、そうした組織としてのミッションを必ずしも理解せず、ただひたすら、自らの厳しい境遇だけを根拠にその活動の周縁に参画しているような層なのである。彼ら若者たちが最初はこうした高邁なミッションに賛同しているかのように見えつつも、その実、「抵抗の為の抵抗」を行うことによる己のカタルシスの解消こそが目的なのであって、最後は何等かの暴力路線へと加担し、過激派となっていくのは、1960年代をピークとしたかつての学生運動の例からしても明らかなのである。いやむしろ、そうした意味で動揺した若者たちに対するアピールをイスラム系武装集団の側が既に密かに開始していると見るべきなのであって、着実にその輪は広がっていることを想定しておくべきなのである。

我が国の公安当局もそうした事態の展開を想定している可能性が高いことは、今月(11月)19日に北海道・旭川市で「サリンによるテロ事件」を想定した演習が実施されていることからも明らかなのである。かなり大規模な演習を実施しており、しかもこのタイミングにおける実施であることから、上述の「北大生による私戦予備・陰謀事件」と「イスラム国(IS)がサリンを強奪している可能性」がクロスするところであり得べき懸念に備え、行われたものである可能性があると私は考えている。

更に敷衍して言うならば、昨年(2014年)1月から4月にかけて、北海道・札幌では連続してボンベ爆発事件が発生した。その容疑者として「主婦」が逮捕されたが、容疑を否認。未だに真相は明らかにされていない。ちなみにこの時用いられた爆発物は、いわゆる「左翼過激派」が用いたタイプではないのであって、仮にこの容疑者である「主婦」が実行犯であったと仮定したとしても、左翼過激派という典型的なテロリストたちとは異なる、全く新しい勢力がこの「主婦」に仕込んだということになってくる。そこに当然、一つの可能性として思想性こそ薄いものの、形式的にはイスラム系武装集団のシンパの可能性というのが出て来るというわけなのである。いずれにせよ、この事案が発生する直前に、私自身、「我が国の北方においてテロ事件が発生する可能性が高い」との西側情報機関からの非公開情報の伝達を受けていたことを改めて述べておきたい。

以上まとめて述べるならば(1)早ければ今週(22日)週のある段階で「イスラム国(IS)」などイスラム系武装集団によるカトリック勢としての欧州勢に対するテロ攻撃が、毒ガス・サリンを用いた形で行われる可能性がある、(2)仮にそうなった場合、次にハイライトされるのはかつて「地下鉄サリン事件」の惨劇を被った我が国となる、(3)その上で我が国では「北方」においてテロが発生し、大混乱となる危険性が出て来る、ということだ。

最後に。もっともこの様に「イスラム原理主義」がハイライトされるからといって、”本当の敵“を見誤ってはならない。それはこの様に身代わりを前面に押し出すことにより、その実、自らが「今起きていることの全ての原因者」であるとの糾弾をかわそうとしている勢力に他ならない。先回、そして今回、と2度にわたってフランス・パリで発生した激烈なテロに際し、イスラエル・ネタニヤフ首相が見せた余りにも機敏、かつこれ見よがしの対応からそれは自明であるというのが卑見である。しかしこうした工作活動はやがてその綻びが露呈し、こうした「本当の敵」に向けて世界中から憎悪の念が礫と共に投げつけられることになる。

その意味で事態は次々と目まぐるしく変転し、かつその激烈さは一気に増して行く。「邪悪」に対する最大限の警戒を怠ってはならない。

2015年11月22日 東京・仙石山にて

原田 武夫記す

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