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「グローバル進出する日本企業が直面する課題」~第33回 人財・人材・人災

欧州はすっかり春色だったはずが、先月半ばから冬に逆戻り。氷点下に下がる日まであり、4月だというのに路駐していた車が凍っていました !!どうやら、ボルドー地方のブドウ畑がかなりの打撃を受けているようで、今年の収穫は5割減になるとも…。本日も久しぶりに天気は良いのですが寒いです !5月に入っても中央暖房が切れていないなんて初めてです。これぞ寒冷化なのでしょう。。。

さて今回は、もうすぐ退職する同僚に敬意を表し、彼の辞職理由に見受けられるグローバル進出している日本企業の問題点、野放しになっている「人財」ならぬ「人災(ジンザイ)」について語ろうと思います。

ここで質問です。

海外進出先の管理職レベルは、皆、本社と目標を共有できていますか ?

管理職レベルとは、海外に出向してきている駐在員ばかりでなく勿論ローカルも含んでの話です。業種にもよりますが、海外拠点は、所詮「窓口」でしかありません。本社の経営方針があってそれに則って動いていく存在です。勿論、経営方針に海外拠点ならではの視線で提案を打ち出し、本社とともに経営方針をブラッシュアップしていける存在であれば尚よし。少なくとも、本社から全く道を外した方向に進んで行っていい存在ではありません。だからこそ、本社と海外拠点とのネットワークは密でなければならないし、ネットワークを密にできるだけの人財が必要なはずなのです。本社側の英語レベルが完璧であれば、海外拠点の管理職レベルはもちろん英語だけできれば問題ありませんが、本社側の英語レベルが至らないのであれば、海外拠点でも日本語がある程度できるレベルの管理職が必要であるし、駐在員がそれを補う形で教育を行い海外拠点管理職レベルと方向性を同じくしていかなければならないはずです。つまり、本社なしで海外拠点だけで業務が完結すると信じているようなレベルの人間や、本社から派遣されてきている駐在員の役割の重要性が理解できていないような人間が管理職にいてはおかしいはずなのです。

しかし実際には、「駐在員」等いなくても自分たちだけですべて仕事が回せると信じ切っているローカルは意外にも多いものです。(企業によっては「駐在員」が必要ないレベルのところも勿論あると思います)特に「駐在員」は3-5年という短いスパンで入れ替わってしまうわけですから、海外拠点の成長過程で進出年数が10年或いは20年も経過すると、拠点のことは「本社の人間」よりも理解している「重鎮」的なローカルが何人も存在するようになるわけです。彼らが、「人財」として、絶えず本社の意向を確認しつつ、同じ方向性を以て動きの取れるような海外拠点の「重鎮」であるならば問題ないのですが、単に「自分たちの方が拠点の状況をよく理解している」ということだけに天狗になり、「本社」の飼い犬など俺たちのコマでしかないぐらいに思っているような「重鎮」になってしまっていると話が厄介です。表面上は、特に自分より肩書の高い駐在員に対してだけでは当たりよく振る舞い、だからこそ一応日本側からも「信頼」を得ているものの、実は本当に『見掛け倒し』なだけのローカル管理職がいると、残念ながら有能な若手が逃げていきます。こうした「重鎮」が何もわかっていないことに呆れ、何度「進言」しても全く改善されない状況に失望し、もはや、他に行く場所がないからそこに残っているだけの「寄生虫」に構っているのが時間の無駄であると悟り、他社に転職してしまうのです。いや、本当に勿体無い。

こうした若手の言い分が果たして届いているのでしょうか?

肩書のついた人間の言うことが全て正しいわけではありません。寧ろ、肩書などなくても「真実」を見抜いている者はいくらでもいます。だからこそ、「真実」を見抜ける目のある優秀な人間から、「変革の起きない」場所から去っていくのです。「去り行く者」が声を残してくれているのならば、きちんと耳を傾けないと、そこにある「問題点」が何時まで経っても見えないままです。見えずに対処しないから、同じ過ちが繰り返される。残っている「人災」だけでは何も状況が変わらず、数年間来るだけの駐在員では手の施しようがない。

どうか、こんな海外拠点には育てないでほしいです。ビジネスをグローバル展開するための拠点が寄生虫の巣窟になる前に、ビジネスの進展が見られないのなら、その理由がどこにあるのか様々なレベルからの声に耳を傾け、問題点を真剣に見極め、必要ならば大規模な改革を断行するぐらいの「グローバル人財」が海外拠点では求められています。

プロフィール

川村 朋子

元外交官。大臣官房儀典官室、在フランス大使館、在ガボン大使館にて勤務。
現在は在仏日系企業に勤務。留学、外務省時代、現在と在仏歴通算15年以上。

リヨン第二大学歴史学修士、リヨン政治学院DEA(博士予備課程に相当)取得
主な論文に「アンシャンレジーム期のリヨンの倒産・破産状況」「日本の軍事問題の現状」がある。

 

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