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「グローバル進出する日本企業が直面する課題」~第30回 人間関係

 

昨日は、いきなり大音響で大粒の雹が降ってきたかと思うと、暫くしてボタン雪の大嵐となり、もうすぐ春だというのに驚くほどの異常気象。この大嵐のせいで60万世帯以上が停電、一晩明けた本日も引き続き22万世帯以上で停電が続いているようです。オール電化が進んでいるフランスでの停電はかなり厳しいです…。幸い、パリ地域に大きな被害は出ておりませんが。

さて、今回は前回の事件を引きずっていることもあり(笑)、グローバル企業に限らず、企業でも、学校でも、地域でも、コミュニティが出来れば否が応でも生まれてきてしまう人間関係という一番厄介なテーマについて取り上げてみようと思います。

私の後に同僚が本社に出張に行って帰って来たのですが、戻ってきて非常に印象的な事を言いました。

「どこに行っても、みんながちょっとずつ、誰かのことを嫌っているんですよね。。。この事務所だけの話じゃないんですよね。」

名言です(笑)。我々イエス・キリストではありませんので隣人を全て愛することなど当然できません。私も無償の愛など注げるのは息子だけです(笑)。それもきっとあと数年。そもそも自分以外の他人を無条件で受け入れることなんて普通の人間にはできるわけがなく、どんなに小さなコミュニティでも、どこか鼻につくとか何となくそりが合わないといった小さな小さな「イヤ」から生理的に受け付けないレベルの「イヤ」迄、様々な誰かから誰かへの「嫌」という負の感情が裏では渦巻いているのに、表面上はそれが少しでも現れないように取り繕ってコミュニティ生活を送っているのが実情でしょう。仕事の場でも然り。仕事が、プロジェクトが、上手く進んでいくように、そうした感情は脇に置いて、「仕事だから」、「大人だから」と自分に言い聞かせて、皆チームで動いているのでしょうが、多分この負の感情は少しずつ澱となってチームの中に沈殿していっているような気がします。それがある到達点にまで達すると、目に見えるか否かは別として、チームの輪が一気にぎすぎすとしたものへと変化していき、その後チームで仕事をしていくのに果てしもない労力を使わなければいけないほどの何というか亀裂が生じてしまうのかもしれません。これが大きな企業の一部署であれば、チームは少しずつ変化していきますから、亀裂が入ったまま手の施しようのない状況がひたすら続く、といった壊滅的な状況にはならないのかもしれませんが、海外拠点の場合は母体がそもそも大きくないために、チームの刷新もままならず、仕事に支障をきたすレベルにまで溝が深まってしまうようなケースがあり得るのです。残念ながら。

よくステレオタイプの見方では、外国人は嫌なことはぶつけ合って思いっきりけんかをして翌日はケロッとしているのに、日本人は裏でこそこそ陰口を言うだけで表面は仲よさそうにしてタチが悪いみたいな言い方をされることがありますが、そんなことはありません。フランス人も滅茶苦茶裏で陰口を叩いています(笑)。世界中どこでも同じです。こういうのって女性の専売特許みたいに思われていますが、いやいや男性陣も相当ですよね。陰口に男女の差も国境の差もありません(笑)。私の場合、日本語の悪口もフランス語の悪口も両方の側の悪口が嫌でも耳に入ってしまうので、ストレスが倍!勘弁して~って思う時もよくあります。しかし、陰口で済んでいるうちは、未だ繕う余地も、チームを立て直す余地もあるのかもしれません。輪が崩れ出し、もう「負」の感情を隠すことさえしなくなる人が出てきたら取り返しがつかないです。こうなると、周りは腫物を触るような扱いをするしかなくなる上、「負」の感情を持つ者同士は陰で悪口を言うどころか、「意思の疎通」を一切行わなくなるため、仕事に様々な影響を及ぼします。それどころか、時に衝突し、大きな言い争いにまで発展することもしばしば。お互いがお互いに言いたいだけ言い合って、「分かりあえたね俺たち」その後抱擁!みたいな未来のある喧嘩ではなく、いい大人が人前でこんな口喧嘩するんだ…と、違う意味でびっくりするレベルの、外野の方が後味が悪く様な、仕事をする気をなくすような喧嘩。。。もうチームを立て直すことなど不可能だと誰もが悟る瞬間です。

 

こんな事態を引き起こさないためにも、職場においても人間関係が第一。楽しく仕事ができるように、小さな「イヤ」を他所で発散して、少しでも快適に過ごせるよう各人が努力しないといけないのだと思います。これが出来ないと海外拠点は地獄になりかねません。。。まぁ、一生懸命この努力をしている人がいる一方で、それをぶち壊しにする輩がいて、事務所内険悪という事態も残念ながらままありなのですが…。

 

 

プロフィール

川村 朋子

元外交官。大臣官房儀典官室、在フランス大使館、在ガボン大使館にて勤務。
現在は在仏日系企業に勤務。留学、外務省時代、現在と在仏歴通算15年以上。

リヨン第二大学歴史学修士、リヨン政治学院DEA(博士予備課程に相当)取得
主な論文に「アンシャンレジーム期のリヨンの倒産・破産状況」「日本の軍事問題の現状」がある。

 

 

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