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「グローバル進出する日本企業が直面する課題」 ~第9回 海外生活~

今回は、序章の「海外は日本ではない」という話とも重なりますが、企業というよりも個人が直面する課題として、海外生活における様々な注意点について書かせていただこうと思います。

赴任して最初に行う各種諸手続きの重要性については既に述べておりますので省略しますが、最近赴任されてくる方々を拝見させていただいて声を大にして言いたくなるのが「運転に気を付けて下さい」の一言に尽きます。。。

日本よりもはるかに車社会の欧米では少し中心地を離れれば車なしの生活が困難となってきますが、オートマ車が主流の日本やアメリカとは異なり、欧州社会はまだまだマニュアル車が常識です。勿論自家用車としてオートマ車を購入することは可能ですが、社用車がオートマである可能性は低く、また自家用車を仮に修理に出す際その代替車がオートマであるとは限りません。レンタカーをオートマで予約していても、実際に行ったらオートマではなかったということが頻繁に起こりうるような地域ですので、日本を出発される前にマニュアル車に慣れておく必要があります。ただでさえ、英国以外では慣れない左ハンドルで交通法規も異なるのですから、海外に到着してから実地練習では事故が起こりかねません。赴任先の交通法規も学ぶ必要があります。例えばフランスの場合等は細い道でも基本右優先なので、大通りを走っているからと油断していると非常に危険です。また交通違反の取り締まりも非常に厳しいです。スピード違反や赤信号無視のレーダー設置数が鰻登りに増加しているばかりでなく、違法駐車の取り締まりも厳しく、パリでは結構簡単にレッカーされます。万一事故が起きた際の対処法も一通り知っておく必要があるでしょう。運悪く夜中や週末に事故を起こしてしまった場合、人事のみならず誰にも連絡が取れないことはありえますし、仮に連絡が取れても遠く離れた場所で事故が起きた際には電話で手助けしてもらうことはできても、基本的には自分で対処しなければいけなくなる場合が往々にして起こりうるからです。

次に大きなストレスになるのが住居の問題だと思います。入居時には企業の規模により、家探しを赴任者自身で行わねばならない場合や人事で対応してくれる場合など様々かと思いますが、住み始めてから何か起きた場合には、多少のことは自分で対処しなければならなくなると思います。この住み始めてから何か起こる頻度が少なくとも欧州では桁違いに多いのです。古い街であればもともと築100年以上の石造建築を利用しているからとも納得できるのですが、比較的新しい建物であっても驚くほど問題が起こります。水質が石灰分の多く含まれた硬水であるせいなのかもしれませんが、特に水回りの問題が非常に多いです。大家に対応を依頼しても対応は遅く、業者を呼んでも約束の日に来ないということもしばしば。また、保険でカバーされるにはまず保険屋が状況を判断して、さらに複数の業者の見積もりを取ってからでないと業者も呼べないようなシステムなので、直すまでに数か月かかることはざらです。自分の家ならまだしも、階上の家の水漏れ等隣家が原因なのに対応してくれなければ問題が解決されずじまいなどという状況も起こります。流石に家の前の水道管が破裂した際は、金曜日の夕方で、週末水なし、風呂なし、トイレなし生活かと半ば諦めていたにも拘らず、夜中復旧作業が続き次の日の昼過ぎには水道が復活し、ライフラインの際にはフランスでも緊急対応をするのだと違う意味で感動した覚えがありますが、多少のことではこんな緊急対応を夢見るわけにはいきません。

そして、もう一つ毎度イラッとさせられるのが支払い関係といえるでしょう。税金関係の書類や家賃などは会社側で処理してもらえることが多いと思いますが、電気、ガス、電話や給食費といった学校の諸費用など諸々の細かい支払や銀行口座管理は個人で行うことになると思いますが、驚くほど間違いが多いです。毎月何かしら間違いがあり文句を言う気も失せるほどで、引っ越しても支払いの引き落としが続くことなど当然のようにありうるので、どのサービスにおいても引き落とし支払いだけは避けるほうが無難です。しかも支払い請求は早いのに、払いすぎたものを返還する対応は非常に遅く、取り戻すまでに10倍の労力と時間がかかるので、その辺は適度に諦める潔さも必要かもしれません。仕事上ですら、顧客からのPOに切ったインボイスが普通に支払われることのほうが稀というくらい支払い関係がスムーズに動くことは少なく、余計な労力がかかる点、心に留めておいたほうが良いかもしれません。

生活をしていると様々な面で問題が起きてきますが、共通して言えるのがすべてのサービスについて間違いが多く、対応が遅いということです。そしてそれに対する謝罪は基本ありません。日本のサービスが至れり尽くせりということもあるのですが、事故を起こしてアシスタンスを呼んでも2時間ぐらい待つのは当たり前であったり、家の鍵をなくして毎日24時間対応と書いてあるのに結局2-3日待たされ閉め出しを食らったり、通販で買ったものの中味が3回に1回ぐらい間違っていたりと、枚挙に暇がないのですが、欧州のサービスはこの程度であると割り切るだけの寛容さと何が起きても動じないぐらいの精神的強さが海外生活には求められます。または、毎回イラッとブチ切れてストレスをうまく発散させるか(笑)

何れにしても、ただでさえ仕事上でも日本以上にストレスの溜まる要因が多いのに、生活面でも様々なストレスに晒されることになりますから、海外で活躍するグローバル人財たるには肉体的にも精神的にも強靭であることが一番重要であるといえるでしょう。

【執筆者プロフィール】
川村 朋子

元外交官。大臣官房儀典官室、在フランス大使館、在ガボン大使館にて勤務。
現在は在仏日系企業に勤務。留学、外務省時代、現在と在仏歴通算15年以上。
リヨン第二大学歴史学修士、リヨン政治学院DEA(博士予備課程に相当)取得
主な論文に「アンシャンレジーム期のリヨンの倒産・破産状況」「日本の軍事問題の現状」がある。

 

 

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